表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/232

きっと誰にもかえれない

 なまぬるい海に浮かんでいる。

 それでいて、簡単に沈んだりする。浮力を無視して、ぐいぐいと水をかいて潜る。水底で波が押し引きして、いつでも、さらってゆけるからねと、低い声で唸られている心地がする。

 遠浅で穏やかな地域の海だけれど、波は底の方で、強引に呼んでいるのだ。

 陸の声は聞こえない。堤防に置いた荷物を、きっと猫があさっている。

 喉が渇いた。

 こんなにたくさん水があるのに、飲むとからくてしんどい。

 諦めて足を水底に着ける。波に逆らって、足裏の砂が持っていかれるのを感じながら、陸へと引き返す。

 猫は荷物の横で寝転んでいた。濡れた手で撫でようとすると、耳を震わせて逃げていく。

 ボトルからあおった水分が、口の端に残った海水のせいで塩辛い。

 猫が辛抱強く待っている。立ち上がると、猫は振り返りつつ歩き始めた。

 お前は海が懐かしくないの? もう何の道具も手立てもなしにはかえれない、生物の故郷のこと。

 猫は宿に飛び込んで餌をねだり、こちらはシャワーを借りて海を払いのけた。

#444書 「海」向けに書いたもの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ