表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/232

たまねぎのスープ

 食卓に、ぽつん。

 薄い、たまねぎのスープ。

 半透明で、皿の底は透けている。

 どうして、こんな真っ白な、平らなお皿に盛りつけたのか。せめて、マグカップくらいの深さがあればいいのに。

 いつもそう。

 とっておきのフォークもスプーンもなくしてしまった。

 たまねぎも半透明に透けて、向こう側が見える。

 まばたきする私が見える。

 琥珀色の目と、似た色のまつ毛。

 きっと私は、さっきまで、そこの畑でねむっていた。

 この家の人たちは、春になる頃に収穫できるよう、さまざまな種や苗を庭に植えている。

 私は、気がついたら畑にいて、植えた覚えもないと言われながら、ゆらゆらと眠っていた。

 隣の畝のひとたちが引き抜かれ、痛い、と顔をしかめるのも、丁寧に泥を落とされて呆然とするところも見た。

 私はこのままだと思っていたのに。

 召し上がれ、と置かれたスープ。

 もはや私ではないもの。

 感情移入しすぎたスープは、何だか涙の味がした。


444書「スープ」https://necotoco.com/amabun/21/444sho/

向けに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ