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たまねぎのスープ
食卓に、ぽつん。
薄い、たまねぎのスープ。
半透明で、皿の底は透けている。
どうして、こんな真っ白な、平らなお皿に盛りつけたのか。せめて、マグカップくらいの深さがあればいいのに。
いつもそう。
とっておきのフォークもスプーンもなくしてしまった。
たまねぎも半透明に透けて、向こう側が見える。
まばたきする私が見える。
琥珀色の目と、似た色のまつ毛。
きっと私は、さっきまで、そこの畑でねむっていた。
この家の人たちは、春になる頃に収穫できるよう、さまざまな種や苗を庭に植えている。
私は、気がついたら畑にいて、植えた覚えもないと言われながら、ゆらゆらと眠っていた。
隣の畝のひとたちが引き抜かれ、痛い、と顔をしかめるのも、丁寧に泥を落とされて呆然とするところも見た。
私はこのままだと思っていたのに。
召し上がれ、と置かれたスープ。
もはや私ではないもの。
感情移入しすぎたスープは、何だか涙の味がした。
444書「スープ」https://necotoco.com/amabun/21/444sho/
向けに。
 




