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紀ノ川さん
橋を渡る。もやがかかって、見通しは悪い。
買い物帰りで、荷物が重い。こんなに、何を買ったのだったっけ?
「紀ノ川さん」
また迷子になっていたようだ。後ろから呼び止められ、体が蛇に睨まれたカエルみたいになる。実際、後ろの声は少年のようだけれど、川面にうつるのは大きな蛇体である。
「紀ノ川さんひどいなあ。姉さんはどこにもいないじゃないですか」
姉を探す蛇は、姉が彼の執着を恐れて逃げ回ることを知らないでいる。無邪気なまま、追いかける。
阻むものは皆食われて。
「あっちじゃないのか?」
指させば、蛇は素直に橋の下に降りていく。
走らないように、ゆっくりと橋を渡って逃げおおせた。
第六十六回のお題「橋」#Twitter300字ss @Tw300ss
https://privatter.net/p/310549
今回まとまった小説がうまく書けなくて、にっちもさっちも行かなくなり、「ぐるぐるメビウス」の紀ノ川さん(名前ではない)が蛇を回避し続けるルートを書きました。意味が分からないのも無理はない…




