柑橘と柑橘でないもの・緋色と黒の
#Twitter300字ss 参加作品です。
(第三十回のお題「飾り」 http://privatter.net/p/310549)
「題名」
柑橘と柑橘でないもの(かみこい番外編)
緋色と黒の(支配者たちの楽園D・番外編)
「ジャンル」オリジナル(別の長編の番外編です)
「作品リンク」
#Twitter300字ss
二本ありますが別の話です。
ちなみに
「かみこい〜光の神と陰陽師〜」https://plag.me/p/textrevo05/1671 #テキレボ
柑橘と柑橘でないもの(かみこい番外編)
日和が欄干に柑橘を並べていると、家主が嫌な顔をした。
「あまり長く飾ると腐るぞ」
「大丈夫だよ」
「早く食べろ」
「食べたらなくなっちゃうんだよ!」
日和の声が、御簾や屋敷のあちこちに反響する。式神達が、ぱさ、と紙っぽい音を立てた。気を取り直して家主が咳払いした。
「新しい品種の柑橘を、今度もらってくる。それまでに片付けておけ」
「でもね、この中に、木彫りのがあってね」
先日、日和の父がくれた木彫りの柑橘は、日増しに本物らしくつやつやしてきている。
「なぜ混ぜた」
「剥いたら分かるんだけど」
「順番に食べろ」
自力で見分けたかったのだが。
ひとまず剥いて、家主にも分けた。
緋色と黒の(支配者たちの楽園D・番外編)
「派手すぎない?」
フェイの問いかけに、サトリは笑みを返すのみ。緋色の絨毯は踏み込みにくく、ヒールの高さと細さのせいもあって、いざというときは走りにくい。するんとした肌触りの黒いドレスも、動くたびに体のラインに沿って流れる。あいた首回りには大粒の宝石。今日は囮。この場をうまく撹乱できればよいだけなのだが。
「飾らないほうが綺麗なのは知ってるけれどね。華美なフェイを独り占めできるのは悪くないな」
「お世辞をどうも」
豪奢なハンドバッグにでもなったつもりで、サトリに手を預ける。重役を狙撃しそうな気配を探る。
「重役に付けば良かったかも」
「それは嫌だな」
じゃれながら、会場へと踏み込んだ。




