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お前はこの世のすべての鍵
お前が鍵だよ。お前がいるから、私達はここにいる。
それは両親の口癖。子には少し重荷の言葉だ。
息抜きに、屋敷を抜け出す。深い森の奥でも、少し歩けば猟師の道がある。花を摘んで遊んでいると、顔見知りになった。
(なぜ猟師達は体があるの? 私と同じ。親とは違う)
成人する日、半透明の両親に、ついに理由を聞きだした。
昔、本当の両親は、喧嘩をして屋敷を出た。屋敷を守るシステムが、子を哀れみ、両親を模した映像を見せたのだ。生活を裏で全て支えて。
扉の前に立つと、扉が無邪気に聞いてきた。
「開けるの?」
頷く。
両親を、屋敷を、愛していたけれど。鍵は外へ出かけていく。
人の世界の見聞へ。
第六十五回のお題「鍵」#Twitter300字ss @Tw300ss
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