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仙境に記す
名を書き連ねる。今年生まれた幻も多い。
「また変なものを生み出したんですか?」
筆を置き、ケルベロス型猫の頭を撫で、弟子に振り返る。
「山海経から先、新しいモノも増やさないとね」
名付け帳は何度も書き直している。弟子はため息をついた。
「万物を作る仙人というから、弟子入りしたのに。これでは珍妙生物の世話係です」
先生も含むらしい。弟子は顔をしかめ、耐圧窓の外を指さす。
「月に兎、女神、月基地を作ったのは尊敬しますが、イカやタコを泳がすのは微妙です」
また書き損じた。
ごろ寝すると、掃除の邪魔と部屋を追い出された。弟子の名を「反抗期」にするか。猫が、ぬあーんの三重奏で見送ってくれた。
第六十四回のお題「書く」#Twitter300字ss @Tw300ss
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