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余り様
法事は古い家で行われた。週末に雨戸を開け放って風を通してあるから、急な客にも対応できる。
会食が済み皆が墓参りに出かけたので、留守番係は暇になった。縁側に寝転ぶと、子ども達が入ってきた。寝たふりで足音を数える。法事客の子どもより、一人多い。
菓子箱を開けているようだ。異常な感じもしないので、昼寝を続ける。やがて大人の法事客が戻ってきた。
「余り様へ」
年配の者が菓子を縁側に置く。留守番のお礼らしい。子どもが菓子を不思議そうに見た。
「余り様って?」
「うちの座敷わらし。ひいじいちゃんの頃は縁側で寝てたらしいよ」
家族より一人多い、余り様は、留守番担当。今でも、家はちゃんと守られる。
第六十二回のお題「余り」#Twitter300字ss @Tw300ss
 




