祝歌の地/あらためる
祝歌の地
「これは祝歌である」
声を張って、王は露台から下方を見はるかした。
「喜べ、お前たちは自由だ。選ぶことのできない生と死を今選びうる、それ故に今こそ自由だ。竜にくだるか、人にくだるか、選ぶがいい!」
毎年恒例、数百年前に起きた出来事を、今なお残る王族らが再現している。民衆はそれぞれ好き好きに応じる。人に、いや竜につく、と騒いで、花を投げ合う。町中に花が撒かれ、日暮れの頃には仲良く食事。
「人も竜もない。どちらもこの町の住民だから」
戦を望まぬ者達が、協定を結んだ記念の日。
「呪いの日にならなくてよかったね」
毎年綱渡りで交渉している人と竜は、ひとびとの様子に安堵しつつ酒を酌み交わした。
※
あらためる
深夜に目が覚めた。用を足そうと立ち上がると、暗がりに人影がある。
家人ではない。真っ白と真っ黒な、和装の子ども達が、袖を振って回っていた。ぱちりと目が合う。
「祝って」「祝って祝ってー!」
明るく声を出し、甘えて寄ってくる。
近所の子どもと似た仕草なので、つい答えた。
「誕生日? おめでとう」
金色に輝く目で、彼らはこちらを見上げた。
「違うよ」「年神様が来るんだよ」「交代なの」
彼らの袖に、ネズミとイノシシの紋様がある。
「新年か。おめでとう」
正解らしい。彼らは満足げに笑った。
今度こそ目が覚めた。家にあった破魔矢を見やる。初詣で新年のものを迎えよう。それまでは二度寝だ。
第六十回のお題「祝う」#Twitter300字ss @Tw300ss




