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祝歌の地/あらためる

祝歌の地


「これは祝歌である」

 声を張って、王は露台から下方を見はるかした。

「喜べ、お前たちは自由だ。選ぶことのできない生と死を今選びうる、それ故に今こそ自由だ。竜にくだるか、人にくだるか、選ぶがいい!」

 毎年恒例、数百年前に起きた出来事を、今なお残る王族らが再現している。民衆はそれぞれ好き好きに応じる。人に、いや竜につく、と騒いで、花を投げ合う。町中に花が撒かれ、日暮れの頃には仲良く食事。

「人も竜もない。どちらもこの町の住民だから」

 戦を望まぬ者達が、協定を結んだ記念の日。

「呪いの日にならなくてよかったね」

 毎年綱渡りで交渉している人と竜は、ひとびとの様子に安堵しつつ酒を酌み交わした。



あらためる


 深夜に目が覚めた。用を足そうと立ち上がると、暗がりに人影がある。

 家人ではない。真っ白と真っ黒な、和装の子ども達が、袖を振って回っていた。ぱちりと目が合う。

「祝って」「祝って祝ってー!」

 明るく声を出し、甘えて寄ってくる。

 近所の子どもと似た仕草なので、つい答えた。

「誕生日? おめでとう」

 金色に輝く目で、彼らはこちらを見上げた。

「違うよ」「年神様が来るんだよ」「交代なの」

 彼らの袖に、ネズミとイノシシの紋様がある。

「新年か。おめでとう」

 正解らしい。彼らは満足げに笑った。

 今度こそ目が覚めた。家にあった破魔矢を見やる。初詣で新年のものを迎えよう。それまでは二度寝だ。

第六十回のお題「祝う」#Twitter300字ss @Tw300ss‬

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