甘い言い分・どこかであった昔のはなし
#Twitter300字ss 参加作品です。
(第三十回のお題「飾り」 http://privatter.net/p/310549)
「題名」
甘い言い分
どこかであった昔のはなし
「ジャンル」オリジナル
「作品リンク」
#Twitter300字ss
二本ありますが別の話です。
甘い言い分
室内に溢れる甘い匂い。お友達のお祝いにあげたいと、彼女はケーキを手作りする。簡単なレシピだけど、スポンジ台は三つ目も失敗した。
私は提案する。膨らまない重たいスポンジ台をサイコロ状に切って、器に盛り付ける。生クリームをとろんと絡め、アラザンやイチゴを飾る。一口サイズのケーキもいいんじゃないかな。彼女はのってくれた。ラッピングして、玄関から飛び出していく。
私はすぐに、現地のシステムと連絡を取る。お友達の方もプレゼントを用意しているみたい。飾らず言えば、私もあんなふうに愛されてみたかった。振り返ってもらえなくても、システム上の私たちは、貴方たちの幸せを願ってる。
どこかであった昔のはなし
美しい妻を取り返したいと男は言う。今まで、魔女は男に知恵を貸してきた。贈り物は必要だが、魔女は男に勝利を与えてきた。
魔女の家、室内に並べられた首が、虚ろに男を見下ろす。自らが飾りの一部にならないように、男は用心して、魔女の言葉を記憶する。
男が約束された手順で妻を取り返すと、妻は魔女の元に向かった。
「夫を返して」
妻が三度、魔女を鞭で打つと、魔女は小鳥になって壁の首上に止まった。妻は自分を娶った他の夫達を墓に入れ、魔女の止まった、最初の夫の首だけを持ち帰った。
男は魔女の飾りにはならず、奪った妻の反逆により己の体を失った。ときどき墓から歌声が聞こえる。魔女達に手を出すな、と。




