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第34話・業火

 翌日、拓海を送り出した後、軽く部屋を掃除した後、洗濯をして過ごした。


「ふぅ……もうお昼なのね……」


この後はスーパーへ行って、食材を買って……こっちの食材は量が多いから買い過ぎないようにしないと……


その時、私のスマホが鳴った。ベンからだ。


「Hello.」

──『アン!ベッキーのチームで捕まえた詐欺師が、法律の公開講座を受けていたよ!』

『そうなの?』

──『あぁ、教授の名前は、チャールズ・テイラーだ!不動産会社社長も同じ事を言っている!関連性が掴めたぞ!』


思った以上に早かったわね……


──『それでだ!今日、教授は自宅でパーティーをするとの情報を掴んだ!今から確保に向かうことになったから、報告をしておくよ!アンが公開講座に気付いてくれたおかげだ!』

『い、今からなの?!』

──『そうだが?』


ま、マズイ!非常にマズイじゃない!


『ベン!私もすぐに支度して市警に行くわ!それまで待ってくれる?』

──『分かった。待っているよ。』

『よろしくね!』


ベンとの通話を切って、すぐに拓海へ電話を掛ける。暫くの呼び出し音の後、拓海の声がした。


「拓海!今話しても大丈夫?!」

──「どうかしたか?そんなに慌てて……今は柳沢さん達と打ち合わせしているところだ。」

「丁度良かった!市警が今からテイラー教授の確保へ向かうって!」

──「何だって?」

「他の詐欺師も、テイラー教授の公開講座を受けていた事が分かったのよ!私も捜査に混じるから、私が行くまでは待ってくれって言ってあるわ!」

──「分かった。なら、30分くらいは稼げるな。用事があるから先に仕事の話をするように言ってみるよ。情報ありがとう。」

「気を付けてね。」

──「杏奈もな。」


ふう……これで何とかなったかしら……って、出掛ける支度をしないと!食材を買う前だったのが、不幸中の幸いね。


それから急いで市警へ向かった。




 市警のみんなでテイラー教授の家へ向かう車中、拓海からメールがあった。


《学生以外の男がテイラー教授の家へ入っていくのが確認出来た。コートのフードを被って顔は分からないけど、恐らく組織の人間だ。テイラー教授確保の時には、念のため誰一人逃がさないよう市警へお願いしてくれないか?》

《了解。うまう言っておくわ。》


短く返信をして、助手席に座っているベンに話しかける。


『ベン、テイラー教授が学生に紛れて逃げてもいけないから、身元確認が出来るまでは一人も帰さないよう、みんなに伝えてくれないかしら?』

『それもそうだな。』


無線で、ベンが全車両に指示を出していく。


これで大丈夫かしら……私達が行くまでに、拓海達が組織の人間を確保出来ていればいいけど……


『アン、何か気になる事でもあるの?』


車の後部座席へ一緒に座っているベッキーが、心配そうな顔をしている。


『大丈夫よ。それより、私、まだテイラー教授の家の見取り図を見ていないわ。』

『それならここにあるわよ。』


捜査資料を受け取ると、ベッキーが簡単な説明をしてくれた。


『まずはリビングに集まっているだろう学生達に、部屋から出ないよう指示して、一階から順に捜索よ。ベランダから逃げれないよう、外に捜査員を見張らせておくわ。』

『裏口は?』

『もちろん人員配置するわよ。そしてテイラー教授を見つけたらみんなにインカムで連絡よ。』

『了解。』


地下室は無し……一階はゲストルームに広いリビング、キッチンなどの水回りね。二階は4部屋に書斎……


ベランダに通じる窓は捜査員に任せればいいから、書斎への廊下を押さえておけば、逃走経路は塞げそうね……


それからテイラー教授の家へ行くまでの間、見取り図を頭に叩き込んだ。




 家の前に数台の車を乗り付け、サッ!と全員配置に着く。


──『行くぞ!』


インカムから聞こえるベンの声を合図に、家の中へなだれ込む。まずは一階の学生達だ。

バン!とリビングのドアを開け、声を張り上げる。


『みなさん!ニューヨーク市警です!』


一斉に振り向いた学生達が、私を驚きながら見ている。


『あれって、ケンのガールフレンドだよな!』

『本当だ!』


私に見覚えがある人達の声には反応せず、更に学生達へ呼び掛ける。


『次の指示があるまで、この部屋から出ないで下さい!レストルームに行きたい方は、入り口にいる警官へ声を掛けてからお願いします!』


入り口担当の警官へ引き継いで、そのまま二階へ駆け上がる。逃走経路になりそうな廊下を塞ぐ為だ。


『あっ!』


予想どおり、テイラー教授が廊下へ出てきて、私の顔を見るなり動きを止めた。


『お、お前はケンの!あいつが裏切ったか!』

『不動産会社社長から調べてあなたにたどり着いた時には、驚いたわ。市警を侮らないでくれる?』

『くそっ!』


テイラー教授はすぐに近くの書斎へ逃げ込んだ。


『テイラー教授発見!書斎へ逃げ込んだわ!』

──『了解!』


インカムで報告すると、すぐにみんなが集まってきた。

バン!と書斎のドアを銃を構えたトムが開ける。

すると、テイラー教授は片手にライター、片手にポリタンクを持ち、書類に火をつけているところだった。


『動くな!』


その場にいたみんなが一斉に銃を向けてもなお、テイラー教授は余裕の笑みを浮かべている。


『おや?凶器も持っていない私を撃ちますか?』

『動くなと言っている!両手を頭の後ろへ組んで、膝をつけ!』

『いいでしょう。ですが、あなた達は私を撃てない。何故ならこのポリタンクの中身はガソリンだからです。打った瞬間に爆発するかもしれませんね。』


恐らく証拠隠滅でしょうけど、危険過ぎだわ……


『それっ!』


テイラー教授がポリタンクの中身を本棚へ向けて撒き散らす!その瞬間、ボッ!とタンクに引火し、あっという間にテイラー教授が火だるまになった!


『うわぁ~!!』


みんなが上着を脱いで、のたうち回るテイラー教授の火を叩いて消す。その間にも、部屋の中はどんどんと火が燃え広がってきた。


『学生達や他の人間の避難が先だ!』


身体の火は消し止められたものの、ぐったりして動かないテイラー教授をベンとトムが担ぎ上げながら指示を出していく。


『了解!』


ベッキー達と書斎を飛び出した時、騒ぎを聞き付けたのか、拓海や柳沢さん達が駆けつけてきた!


「杏奈!何があった?!」

「テイラー教授が書斎に火をつけたの!学生達を避難させるわ!」

「分かった!俺達も協力するよ!」

「お願い!」


それからベッキーに向き直る。


『ベッキー、私は他の部屋に取り残されている人が居ないか確認してから降りるわ!』

『分かった!早めにね!』




 ベッキー達と反対方向へ走り、1つ1つのドアを開けていった。


『誰かいませんか!』


よし、ここも居ないわね!

一部屋ずつ確認していき、最後のドアを開けようとした時だ。


あれ?もう1つドアがある……見取り図では書斎の他には4部屋だったわよね……


不思議に思いながらもドアを開け、声を掛けてみた。


『誰かいませんか!』


カチッ……

部屋に入った瞬間、頭の後ろで金属音が聞こえた。


しまった!銃だ!


バッ!と離れ、銃を構えて音がした方向へ向ける。


「えっ……?河猪課長?!」

「松浦か?」


お互いが銃を向け合いながら、驚きを隠せない。


「松浦が何故ここへ?」

「テイラー教授の確保に来ましたが、教授が書斎に火をつけまして……」

「だから騒がしかったのか……」

「河猪課長は何故ここに?組織の人間だからですか?」

「松浦、お前、公安になったのか?」

「いいえ、今はニューヨーク市警へ出向中です。」

「だったら何故組織の事を?」

「小耳に挟みまして……」

「鶴崎か……組織の事は何処まで知っている?」

「恐らく犯罪組織だろうという憶測の段階です。」

「まぁ、公安が簡単に漏らす訳無いよな……」


河猪課長は苦笑いしながら、銃をジャケットの内側へしまった。私もそれにならい、銃をしまう。


「松浦、俺達の組織は必要悪だ。権力を握っている奴等を犯罪へと誘い、私腹を肥やす誘惑に負けた者達を組織で管理しながら導き、最後には消す……」

「その為に人の命は無くなっても良いと、お考えですか?」

「お前のご両親には、本当に悪い事をした。もう少し組織で深見大臣の管理を厳しくしておけば良かったのだが……」

「私の両親以外にも命を奪っていますよね。」

「正念が腐った権力者は葬った方が世の為だ。」

「それは法が裁く事です。命を奪っても良い理由にはなりません。」

「理想論だな。法で裁けない悪もある。」

「そんな事を言っていては、法治国家が成り立ちません。」

「俺も昔はそう思っていたよ……だが、刑事部に長くいると、見たくも無い事も見てしまうんだ。権力によって揉み消すように圧力をかけられたり、軽い罪にするよう言われたり、証拠隠滅を指示されたり……」


課長の言いたい事は分かる……

殺人などの分りやすい事件ではなく、政治家の汚職や選挙犯罪も扱う部署だけに、きっと下っ端の私には分からない圧力をたくさん掛けられていたのだろう……

でも、違う……


「課長……私は課長を尊敬していました。刑事というものを一から教えてくれただけでなく、仕事ぶりも本当に……」


ガラガラッ!ドーン!

言いかけた言葉は、外からの建物が崩れる音に遮られた!


「マズイ!延焼が早いな!松浦、逃げるぞ!こっちだ!」


河猪課長が私の手を引いて、階段を駆け降りる。


「嘘……」


階段を降りた一階は、すでに火の海だった……


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