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第28話・犯人逮捕?

 ニックについてフロアを移動する。


『ここが俺達のチームがあるフロアだ。言っておくが、お前の意見は、参考程度にしか聞かないからな。』

『あら、参考にしてくれるの?光栄だわ♪』


ガチャ……

ドアを開けると、一人のスパニッシュ系らしい捜査員が見えた。


『ニック、彼女が依頼していた日本人かい?』


私に気付いた捜査員が、にこやかに手を出してきた。


『初めまして。ジェームズだ。ジミーと呼んでくれ。』

『アンナ・マツウラよ。アンでいいわ。』


ジミーの手に自分の手を重ねて、握手を交わす。


『早速だが、アンには囮を頼みたいんだ。』

『囮は最終手段よ。捜査チームに入れて貰ったから、まずは概要を説明してくれないかしら。』

『えっ?チームにかい?』


ジミーは驚いて、ニックを見ている。ニックは渋々頭を立てに振った。


『分かった。だったら、まずは概要を説明するよ。』


そう言いながら、ジミーは手元の資料を見せてくれる。


『一人目は二週間前、留学生のチャイニーズだ。アパルトメント手前で撃たれ、裏路地で暴行されている。そして、最後の一発が致命傷……二人目はワーキングホリデーで来ていたコリアだ。アパルトメントの部屋へ入る時に襲われたと見ている。こっちは部屋の中で撃たれて即死、死後に暴行された痕があったよ。』

『三人目は?』

『まだ調べている段階だけど、彼氏がニューヨークで働く事になって、一緒に来たらしい。帰宅した彼氏が部屋で遺体を発見したよ。それから、やはり暴行されたらしい。三人の共通点は今のところ、長い黒髪なんだ。』

『成る程……』


生まれも育ちも違うのなら、共通点を探すのは難しそうね……


『ジミー、捜査は何処まで進んでいるの?』

『今のところ、三人の交友関係を調べているけど、接点は見つかっていない。』

『体液は残っていないの?』

『それが無いんだ。』

『そう……普通のレイプ犯では無さそうね……』

『何故そう思うんだい?』

『普通のレイプ犯なら、人種は問わないわ。それに、長い黒髪の女性ばかり狙うのは、該当する女性にコンプレックスを持っている証拠……そして死後でも暴行するのは、強い征服欲の表れ……つまり、長い黒髪の女性にこっ酷くフラれたか、勝負事で負けたのを恨みに持っているかね。』

『では、交友関係の線は無いと……』

『行きつけのダイナーやパブに共通点があるかもしれないけど……まぁ、コンプレックスを持っている時点で、負けを認めたようなものだけどね。』


『そんな推理ごっこなんて必要無い。お前が囮になれば、一気に解決だ。』


ジミーと話していると、ニックが口を挟んできた。


『大体、東洋人にフラれた相手だけで何人いると思っているんだ。時間の無駄だろ。』

『そんな事無いわ。可能性を潰していくのは大事よ。』

『平和ボケしている日本人らしい考え方だ。そんなのんびりした捜査なんて出来るか!』

『さっきも言ったけど、囮は最終手段よ。犯人は、何らかの理由で長い黒髪の東洋人女性に恨みを持つ者、恐らくプライドの高い白人ね。』

『白人?それは俺に対する嫌味か?』

『いいえ、単なる勘よ。』


それから、ジミーに向き直って、再度尋ねる。


『ジミー、最近出所した人物は調べたの?』

『レイプ犯のリストならあるよ。被害現場付近の防犯カメラと照合中だ。』

『レイプ犯以外のリストも貰えるかしら?最近立て続けに起こっているのなら、罪状に関係なく、最近出所したばかりの可能性が高いわ。』

『言っておくよ。』

『よろしくね♪』




 「もうっ!何なのよっ!ニックは!」


アパルトメントに帰って、ビールを飲みながら拓海に愚痴を聞いて貰った。


「人を道具としか見ていないのよ!日本の警察を無能呼ばわりするしっ!絶対に囮なんてしないで、犯人を捕まえてやるっ!」


拓海は苦笑いしながら私の話を聞いている。


「杏奈も大変だな……」

「何処にでも横柄な態度の人間や差別をする人間はいるけど、使い捨ての道具扱いなんて、初めてよ!」


チュッ……

またしても、拓海が額にキスをしてくる。


「ちょっ……拓海……」

「少し落ち着いたか?」

「う、うん……」


拓海はふんわり微笑みながら、私を軽く抱き締め、頭を撫で始めた。


「杏奈は冷静に、色々な角度から物事を分析出来るのが、武器なんだ。」

「うん……」

「絶対に大丈夫。杏奈が正しいって、分かって貰えるよ。」


拓海の腕の中だ……頭を撫でられるのも久しぶり……落ち着くな……


「ねぇ……拓海?」

「ん?何?」

「最初は私に興味無いって言っていたわよね。」

「……そんな前の話、よく覚えてるな。」

「私を好きになったのは、いつからなの?」

「見た目は一目惚れかな?」

「そうなの?」

「だけど、絶対に裏表がある、性格の悪いヤツだと思ってたんだ。」

「ふふ、その辺りは私も一緒だわ。」

「男を手玉に取る、自分では何もしないヤツだとばかり思っていたお嬢様が、自ら危険な潜入捜査をするなんて、驚いたよ。その頃から見る目が変わって、気がついたら惚れてた。」

「そっか……」


私も似たようなものかも……婚約者さんがいるからって、ずっと思っていたけど、それって、自らの気持ちにブレーキをかけている事と同じよね……


「杏奈はいつからだ?」

「……何の事?」

「俺にだけ言わせるつもりか?ズルいな。」

「知っているでしょ?私はズルいのよ。」

「……知ってたけどな。」


暫くの間、目を閉じて腕の温もりを堪能した。




 数日後、東洋人女性連続殺人事件の犯人が逮捕された。


『アン、君のプロファイリングは、半分正解、半分不正解だったよ。』


ジミーが苦笑いしながら、知らせてくれた。そして隣りには、ドヤ顔をしたニック……


『ジミー、詳しく教えてくれる?』

『三人は同じストリートにある店を利用していたんだ。一人はブティック、一人はカフェ、一人はダイナーだ。そして、二件目の事件の日に、レイプ犯で釈放された黒人が、近くの防犯カメラに映っていてね。昨夜も未遂を起こしたから、さっき捕まえてきたところだよ。』

『他の日も映っていたの?』

『残念ながら無かったけど、たまたま映っていないだけかもしれないしね。今、証拠を固める為に、アパルトメント周辺での目撃情報を集めているところさ。』

『昨夜は未遂よね?相手は東洋人女性なの?』

『いいや、昨夜は違うけど、黒髪だったよ。』


う~ん……絶対に違うと思うのだけれど……


『だから、アンもこれで気にしないで道を歩けるよ。』

『……別人として捜査は続けないの?』


これにはドヤ顔で話を聞いていたニックが答える。


『大体、このニューヨークだけで一日に何件の犯罪が起きてると思っているんだ?犯人はアイツで決まりだ。無能なお前はさっさと俺の視界から消えろ。』


ったく……まだ確定では無いわよね……


『分かったわ。犯人が捕まったのなら、私も映画のレイトショーでも楽しむとするわ。』

『ふん、観光気分で来られても迷惑だ。』


腑に落ちないものの、これ以上の説得は無理だと察して、フロアを出た。




 『もうっ!ニックには頭にきたわ!』


元の詐欺捜査に戻り、ベンに愚痴を言う。ベンは苦笑いしながら聞いてくれた。


『アン、ニックはみんなに対してあんな感じなんだ。』

『それにしても扱いが酷いわ!』

『はは!憂さ晴らしに飲んで帰るか?付き合うぞ。』


今日、拓海は遅くなるって言っていたわね……


『では、お願いしようかしら。』


返事をすると、傍にいたトムとベッキーも一緒に行く事となった。




 『チアーズ!』


ビールが運ばれて、みんなで乾杯をする。


『そういえば、詐欺捜査の方はどう?』


隣に座っているベッキーが話し掛けてくる。


『今のところは順調よ。まだ英語が苦手な日本人のままよ。来週にでも同僚の住所へ契約書を送って貰うわ。』

『流石はアンね。ニックの言う事なんて気にしないで!ニックは私の扱いも酷いのよ。』

『そうなの?』

『きっと、私に黒人の血が混じっているからよ。これだから白人は……』


それには、トムが口を挟む。


『俺も白人何だが……』

『あら、トムは別よ♪さっ!せっかくだし、今夜は楽しむわよ~♪』


多国籍の人間が集まっている時は、人種と政治と宗教の話はご法度だ。

その後は、日本のアニメの話題になった。


『あの、超人との戦い、本当に面白いよね!俺の回りにもコスプレをする友達が多いよ!』

『ふふ!私もあの漫画は好きよ♪日本では毎週読んでいたわ!』

『いいな~!毎週漫画を送って貰おうかな!』

『あら、トムはいつから日本語が読めるようになったの?』

『そこだよな……本気で日本語を勉強して、友達に自慢したいよ。俺はアメリカ発売前のストーリーを知ってるってね!』


日本アニメ通のトムを中心に盛り上がって、その日は解散した。


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