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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
序章 大ダンジョンのスケルトン
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第七話 成長!

 大空洞の巨大な岩壁。

 芋虫はその上層に張り付き、地下水の流れに沿って生えた苔をもっしゃもっしゃと食べていた。

 その動きは亀の歩みよりも鈍く、遠くからだとほとんど動きが分からないほど。

 スリングで狙い撃ちにするのに、これほど都合のいい獲物もなかなかいないだろう。

 石を乗っけたスリングを、ビュンビュンと音がするほどに回す。


「……ッ!」


 速度が頂点に達したところで、スリングから石を発射。

 拳大かそれより少し大きいほどの石は、ほぼ一直線に芋虫へと飛ぶ。

 バムンッと布団でも叩いたような音がした。

 黒い皮膚に突き刺さった石は、たちまちその一部を裂いて体液を滴らせる。

 その痛みに芋虫の身体がのけ反り、そのまま地面へと落ちた。

 芋虫はその場でじたばたと暴れながら、次々と酸を発射する。


 これじゃあ近づけない、もう一発。

 石をスリングに載せると、今度は出来るだけ頭を狙って放つ。

 よっし、命中!

 勢いよく放たれた石は、見事に芋虫の触角のあたりへと直撃した。

 我ながらなかなかのナイスコントロール。

 頭に石を喰らった芋虫は、流石に大人しくなる。


 あとは、お肉を切り分けるだけッと。

 ナイフを手にした私は、他のモンスターが来ないうちにと素早く芋虫に近づく。

 だがここで――


「カカカカッ!!!!」


 あっつ!

 焼ける、身体が燃えるッ!!

 この虫め、最後っ屁みたいにチョロっとだけど酸を出しやがった!

 酸の掛ってしまった部分の骨が、溶けているのかぬめぬめとし始める。

 この私の、真っ白いお肌に傷をつけるなんて!

 野郎、ぶっ殺してやるッ!!

 ナイフを思いっきり振り下ろすと、芋虫の身体を豪快にぶった切った。

 さすがに、これで死んだだろう……。

 芋虫がくたばると同時に私も身体の力が抜けてしまって、その場に座り込んでしまう。


 やれやれ、次からは確実に死んだかどうかを最後に確認しなきゃね。

 酸を被ってしまった部分は大丈夫だろうか?

 わ、結構やられちゃったな。

 すぐにどうこうなるほどでもないけど、あんまり喰らいすぎるとホントに溶けてなくなってしまいそうだ。

 とりあえず、岩壁からしみ出している地下水を掛けて酸を流しておく。


 さて、気を取り直してお肉お肉。

 さっきぶった切った場所を起点として、巨大な芋虫の身体を三つほどに切り分ける。

 ブリュンッとした肉はゼラチン質で、黒い表皮とは対照的に白かった。

 白身魚とか爬虫類とか、そんな感じの肉質だ。

 予想に反してまともそうな見た目をしているので、ちょっとテンションが上がる。

 ゴミばっかり食べていたようなネズミよりは、まともな味だと信じたい。


 こうして肉をどっさりと抱えた私は、無事に隠し部屋へと帰還した。

 いよいよ、芋虫を食べる時である。

 昨日のネズミのことが頭をよぎるが、それを振り払ってどうにか覚悟を決める。

 では――!


「…………ッ!?」


 意外なほど、芋虫の肉は旨かった。

 こんなにおいしいなら、普通に食材として通用するんじゃないかな!?

 淡白ながら、甘みのあるクリーミーな味わいで実に食べやすい。

 昔食べた、エビのお刺身によく似ている。

 これなら毎日どころか、いくらでも食べられそうだね。

 お肉を切り分けては、ポンポンと口へ放り込んでいく。

 やめられないとまらない、って感じだ。

 スケルトンの身体はこうして口に入るお肉を次々と魔力に変換し、吸収していく。


 ふー、食べた食べた!

 小一時間もすると、あれだけあったお肉がすべて消えていた。

 まさか、一食で一匹食べられるとは。

 両手で抱えるほどの大きさだったから、軽く二十人前ぐらいはあっただろうに。

 ほっそい癖に、凄く食いしん坊な身体だ。

 ま、芋虫はいくらでもいるからいいんだけどさ。


 リラックスした姿勢でお腹のあたりを撫でていると、不意に全身が熱くなった。

 骨が淡い光を放ち始める。

 もしかして、進化するのか!?

 わくわくしながら身構えると、光はすぐに収まってしまった。

 どうやらまだ、進化の時ではなかったらしい。


「スースー」


 変化したところはないかと、立ち上がって様子を確かめてみる。

 すると、骨の光沢が明らかに増していた。

 心なしか、腕回りなども少し太くなっている。

 試しに近くにあった布袋を持ち上げてみると、以前よりもちょっぴり軽く感じた。

 はっきり自覚できるぐらいに、力も増したようだ。


 まだ芋虫を一匹食べたぐらいだと言うのに、予想していたよりもだいぶ成長幅が大きい。

 どこまで進化せずに成長するのかは分からないけど、スケルトンって意外と強くなれるのかも。

 早めに進化できずに残念と考えるか、それとも意外と成長出来て良かったと考えるか。

 意見が分かれそうなところだけど、いずれにしても強くなったことには違いがない。

 この調子なら、最弱の汚名を返上するのも近そうだ。


 ――この分なら、一年ぐらいで復讐できるかも?

 ――今に見ておれ、ルミーネッ!

 

 そう心の中でつぶやくと、私は不意に襲ってきた睡魔に身を任せるのだった――。


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