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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
序章 大ダンジョンのスケルトン
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第六話 探索してみよう!

 どっこいしょー!

 ふああ、実によく寝た。

 きちんと横になったおかげか、なかなか快適な目覚めだ。

 スケルトンに睡眠なんているのかと思ったけど、魔力を落ち着かせるために休むことは重要らしい。

 休み始める前と違って、明らかに体が軽くなっている。

 ま、もともとすんごい軽い体なんだけどさ。

 そこは言葉の綾って奴だ。


 さて、目が覚めたからには活動しなければならない。

 当面やることと言えば、とにかく食って食って食いまくることだ。

 魔力の質をドンドン高めて、早々にこの骨の身体からおさらばせねば。

 それを成し遂げるためには、とにかく食料が必要だ。

 しかも、出来るだけ魔力が高い食料が良い。

 昨日のようなネズミでも魔力に出来ることは出来るが、やっぱり効率が悪い。

 魔力をたっぷりと貯めこんでいる魔物の肉がベストだ。


 けれど、この身体は残念ながら半端なく弱い。

 ゴブリンに殴り飛ばされるんだから、それはもう折り紙付きだ。

 魔物大百科では脅威度Fとされているが、実際のところはそれよりももうワンランク落ちるだろう。

 そんなランクが存在しないから、便宜上Fとされているだけで。

 ……我ながら、言ってて哀しくなってくるわね。


 ふ、だが諦めてはいけない!

 私は他のスケルトンなんぞとは違って、冒険者としての知恵と技量があるのだ。

 それを持ってすれば、弱い魔物の一匹や二匹は倒せるはずだ。

 そのためには、まずはこのダンジョンにどんな魔物が住み着いているのかを最低限調べないと。

 特に、昨日のトカゲみたいな強い連中の動向はしっかり把握しておくべきだ。


 ナイフを二本拝借すると、それらを手に通路へと繰り出す。

 昨日みたいに、焦って道順を忘れたなんてヘマをしないためにも慎重に。

 魔物と出会わないように、音を殺して通路を行く。

 万が一、危険な魔物と出会ったら即座に死んだふりだ。

 私の身体は食べる部分がないから、おそらくそれで逃げ切れる。

 けどそれだけでは不安なので、私はたまーに落ちているスケルトンたちの死骸を次々と回収した。

 いざという時は、これらをばら撒いて目くらましにでもしよう。


 こうして探索をすること、半日ほど。

 だんだんとダンジョン一階の勢力図が見えて来た。

 まず、一番幅を利かせているのがゴブリンたち。

 通路部分に広く生息しているうえに、大空洞にちょっとした集落まで作っている。

 派生種も居るようなので、間違いなくこいつらが最大勢力だ。

 続いて、大空洞に大量発生しているのがビッグバットの群れ。

 こちらは通路にはあまり居ないものの、大空洞の天井に広く生息している。

 場所によっては天井が見えないほどなので、数はゴブリンより多そうだ。


 三番目が、あちこちで苔をもしゃもしゃしているジャイアントクローラー。

 こいつは基本的に、どでかい芋虫だと認識すれば間違いはない。

 ただ普通の芋虫と違ってモンスターと分類されているのは、強力な攻撃手段を持っているからである。

 お尻の先から、浴びれば大怪我必至の強酸をまき散らしてくるのだ。

 そして四番目が――我らがスケルトン。

 付近一帯で産まれたスケルトンがすべてこのダンジョンに集結しているらしく、その勢力はなかなかのもの。

 人数だけなら、ゴブリンたちを軽く圧倒している。

 けれどそのスペックは悲しいぐらいに低く、骨を材料としてゴブリンたちに有効活用されてしまっている始末。

 もしゴブリンから骨を奪うようなことがあったら、供養ぐらいはしてやろう。

 素材不足は私も同じなので、一部活用はするけどね。


 ダンジョンには他にもいろいろと住んでいるが、主だったところはこの四種だ。

 あくまで私が半日で歩ける範囲の話だけどね。

 強い連中ももちろんいるけど、そういう連中はやはり数が少ないらしい。

 昨日のトカゲみたいなのにウジャウジャされていても困るけど、ちょっと拍子抜けだ。

 ま、デカいダンジョンと言えども一階層ならこんなもんかも。


 さて、狩りのターゲットとして定めるなら効率から考えてこの中のどれがいいだろう?

 弱さで考えるなら、やっぱり圧倒的にスケルトンかな?

 でも、骨だけだから食べられないし……。

 第三勢力の芋虫あたりが、攻めやすいだろうか。

 虫を食うと考えると気が引けるが、他も似たようなもんだし。

 ネズミを食べた時点で、そういうのはもういろいろとどうでも良くなってしまった。

 シース・アルバラン、進化するまでは女の子は一時休業だ。


 芋虫を倒すなら酸を何とかしなきゃ。

 人間だった頃に一度喰らったことがあるけど、なめし皮の防具がじゅわーっと煙を立てたほどである。

 この身体でまともにあれを喰らったら、間違いなく致命傷だ。

 骨が痛んだら二度と直らなさそうな以上、それだけは絶対に避けなきゃ。

 防御力とかは全然ないから、この身体でも何発か殴れば何とかなるはずなんだけど。


 そう思ったところで、壁をはい回るツタが目についた。

 ……これだ!

 私は丈夫そうなツタを何本か見繕うと、適当な長さで切り取る。

 これを使って、スリングを作ろう。

 スケルトンの肩で投石したところで大したダメージは見込めないが、スリングがあれば話は別だ。

 壁に張り付いた芋虫どもを、これで酸の射程圏外から叩き落としてやる!


 早速隠し部屋に戻り、絡まっているツタをほどいて広げる。

 こんなダンジョンに生えてるだけあって、流石にたくましい。

 親指ほどの太さしかないが、全力で引っ張ってもなかなか千切れなかった。

 私はそれを石で叩いて柔らかくしながら、少しずつ編み込んでいく。

 そして――


「カカカッ!!」


 出来た!

 スケルトンの手が予想以上に不器用だったので苦労したが、なかなかの仕上がりである。

 複数のツタを絡めて造った幅広の部分と、持ち手の細い部分のバランスが良い。

 これならきっと、ドビュンッと隕石よろしく石がすっ飛ぶんじゃないだろうか?

 一休みしたら、試運転も兼ねて早速狩りへ出かけよう。


 こうして私は、お手製の武器を持参して芋虫の元へと向かうのであった。


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