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第六十八話 第四階層への道

「すっごいこの剣!」


 メイドたちの武器をはじき返しながら、思わず声を上げる。

 適当に拾ってきた剣だけど、明らかにただの剣じゃない。

 まだ使いだしてから一時間も経っていないのに、長年に渡って愛用してきたかのように手に馴染む。

 しかもその切れ味と来たら、相手の武器を容易く削ってしまうほど。

 さすが、隠されていた武器なだけのことはある!

 外の武器屋で買ったなら、屋敷が買えるぐらいの値段がするに違いないわね!


『シース、後ろッ!』

「オッケーッ!!」


 精霊さんの指示に従って、剣を振るう。

 メイドの放ったトンファーを、横薙ぎに振るわれた刃がはじき返した。

 続けざまに突っ込んでくるメイドを、今度はもう片方の剣で受ける。

 身体はひとつだけど、剣は二本。

 そして、考える頭も精霊さんと私の二つ。

 ちょっとやそっとのことじゃ、押し負けやしないわよッ!!


「とりゃあッ!!」

「ぐッ!!」


 全身の筋肉を躍動させ、最大限の力で持って放った一撃。

 それを受け止めたメイドは、衝撃を殺しきれずに吹っ飛んだ。

 私を取り囲んでいたメイドたちのフォーメーションが崩れる。

 その隙に駆け出した私は、タナトスたちがやってきた通路へと飛び込んだ。


「よし、ここを行けば城に入れるわ!」

『その後はどうするのです?』

「敵がたくさんいるところへ進む!」

『な、何でたくさんいるところなのです!?』

「行って欲しくない場所ほど、守りを厚くするでしょ!」

『なるほど!』


 精霊さんが感心している間にも、通路を突き進んでいく。

 道幅は思った以上に広く、天井も高かった。

 恐らく、いざという時に備えて大勢通れるようになっているのだろう。

 あの部屋までたどり着かれることも、想定済みだったってわけか!


『シース、前! 杖を構えてる連中が居ます!』

「放てッ!」


 一列に並んだメイドたちが、号令に合わせてファイアーボールを放つ。

 轟音と共に群れを成す火球。

 その様子は、さながら流星群でも降ってきたかのようだ。

 この密度じゃ避け切れないわね……!

 斬るしかないッ!


「精霊さん、ちょっと痛いかもしんないけど我慢してね!」

『……え?』

「せやァッ!!」


 火球に向かって斜めに切りつける。

 精霊さんから「のわッ!!」と声が上がった。

 ごめんね?

 剣もそろそろ限界っぽいし、あんまり無茶はさせたくないんだけど……。

 ここを乗り切らないことには始まらないッ!!


「次ッ!」

「させるかァッ!!」


 拾ってきた方の剣を、槍投げよろしく思いっきりぶん投げる!

 こんなやけくそっぽいことするとは思っていなかったのだろう。

 対応が遅れたメイドの胸元を、ズバッと剣が貫いた。

 しかし、血が噴き出すことはなく、メイドも死んではいない。

 見た目は人間でも、中身は立派に不死族ってわけか!


「おのれ、良くも私の身体に!」

「どうせすぐ再生するでしょうが! 返してもらうわよッ!!」


 怒るメイドの手から、剣をひったくる。

 刹那、背筋がぞわぞわっとした。

 とっさに振り向けば、メイドがおぞましいまでの形相でこちらを睨んでいる

 ああ嫌だ、女の怒りって恐ろしい!

 さっきまでとはいささか種類の違う恐怖を感じた私は、さらに足を速める。


「出口だわ! ……げッ!!」


 通路を抜けると、そこは広いエントランスとなっていた。

 天井が高く、城の三階ぐらいまで吹き抜けだ。

 奥には幅の広い階段が控えていて、天井にはシャンデリアまである。

 辺鄙な場所にあるとは思えない、贅を凝らした造りだ。


 その広いスペースに、それぞれ武器を手にしたメイドたちがずらりと並んでいた。

 さらにその奥、厳めしい扉の前には全身甲冑を着た近衛騎士と思しき者たちまで居る。

 出し惜しみはせず、ここで全戦力投入ってか……?

 厄介なことこの上ないわね!!

 でも逆に考えればあの扉、間違いなく何かある!


「あなたが侵入者ですの?」


 私が思案していると、階段の上から一人の騎士が語り掛けて来た。

 どうやらこいつが、この場の指揮官らしい。

 銀ピカの鎧に、クルンっとした豊かな巻き毛。

 上品ながらもどこか見下したような感じの言葉遣い。

 貴族的な雰囲気が、全身からにじみ出ている。

 おそらくディアナと同じデュラハンなんだろうけど、こっちはきちんと頭をつけていた。

 ケバケバしい感じだけど、顔もなかなかの美形である。


「そうよ! だったらどうする?」

「決まっていますわ。捕まえて、タナトス様に捧げますの!」

「そ。でもおあいにく様、私だって素直に捕まるわけにはいかないわッ!!」


 地面を蹴っ飛ばすと、そのまま一気にシャンデリアへと飛びつく。

 そのまま勢いよく鎖を揺らして、騎士たちの頭上を一気に飛び越えた。

 ちょうど、ブランコの要領である。

 私はそのまま着地を決めると、唖然とした騎士たちに向かって軽く手を上げる。


「じゃ!」

「なッ!! きィ―ッ!! 追いかけますわよッ!! ……あわッ!!」

「うおッ!」

 

 騎士たちが走り出そうとした矢先。

 城の壁が破れて、外から爆風が吹き込んだ。

 ディアナだ!

 ディアナがこちらに向かって吹き飛ばされ、突っ込んできたのだ。

 さらに彼女に向かって、次々と黒い球が飛んでくる。


「味方が居てもお構いなしってか!?」


 連続する爆発、巻き添えを喰らって吹っ飛ぶ騎士やメイドたち。

 その一方、敗れた壁の向こうには高笑いをするタナトスが居た。

 あれだけメイドのこととか可愛がってたわりに、いざって時は気にしないのかい!


「でも、これは好都合だわ。今のうちに……」


 戦いに巻き込まれ、私どころではなくなってしまっている騎士たち。

 その隙をついて、私は奥の扉へと手を掛けた

 そうしてそれを勢いよく開け放つと、たちまち埃臭い風が吹き上げてくる。


「当たりみたいね……!」


 地下へと続く螺旋階段。

 それを見つけた私は、追手が来ないうちにさっさと駈け下りていく。

 結界のある部屋へと続く階段も長かったが、ここも相当な長さだ。

 ああ、早く早く!

 急ぐあまり、いつの間にか一段飛ばしになっていた。

 やがてそれが、二段飛ばしへと発展しそうになった時――


「これは……!」

『で、でっかいのですーッ!!』


 現実感がないほどに巨大な扉が、私たちの前に姿を現した。

 装飾の類は一切なく、武骨な金属製である。

 相当な年月を経ているらしく、鍵と同様に錆が全面を覆っていた。

 間違いない、これがディアナの言っていた第四階層への扉だ!

 鍵穴に鍵を差し込むと、急いで扉を押す。

 すると――


「熱ッ!!!!」


 熱風の吹き上げる穴が、ぽっかりと口を開いていた――。


ここ数日で急に伸びが停滞し始めたため、何がいけなかったか原因を検討中です……。

ご意見、ご感想があれば感想欄までぜひぜひ。

返信は基本的にしておりませんが、何か言っていただけると力になります。

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