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第六十七話 駆け抜けろ!

 聖騎士と言えば、騎士の中でも最も優れた者たちにのみ与えられる称号である。

 国に一人か二人しかいない、騎士の最高峰だ。

 剣技はもちろんのこと、高潔な精神や魔導の腕前なども問われるエリート中のエリート。

 首を置き忘れてくるようなおマヌケさんが、間違ってもなれるような職じゃない。

 ないはずなんだけど……嘘をついてるって感じでもなさそう。

 さっきから、眼がものすごく真剣だ。


「ど、どういうことよ! 説明して!」

「説明は後だ! それより早く逃げろ!」

「後っていつよ! 私と会う予定あるの!?」

「そ、そう言われてもな!」


 食い下がった私がよっぽど予想外だったのか、戸惑った表情を見せるデュラハン改めディアナ。

 キリッとした表情が崩れて、いつもの緩い雰囲気が感じられた。

 さっきまで別人のように見えていたけど、やっぱりこいつはあのデュラハンだ!


「良いから早くいけ! 私は後から追いかける!」

「分かったわ! 後で絶対、事情は聞かせてもらうからね!」

「ああ、後でならいくらでも話してやる! これを持っていけ!」


 そう言うと、ディアナは懐から何かを取り出して投げた。

 受け取ってみれば、それは小さなカギだった。

 相当年月を経ているようで、全体に青錆が浮いてしまっている。

 綺麗に磨いたら、一回りぐらい小さくなってしまいそうだ。


「なにこれ!」

「城の地下室へと続くカギだ! そこに第四階層への入口がある!」

「第四階層ッ!?」


 ディアナの言葉に、たまらず声のトーンが上がる。

 これは何としても、この場を切り抜けて第四階層へと行かなきゃね!

 こんな亡者だらけの階層、あと一日だっていてたまるもんですか!


「おっと! 行かれちゃ困るよ。一応、侵入者を足止めするのが僕の役目なんだよね」

「止まれって言われて、素直に止まるか!」

「それなら……!」


 パチンッと指を鳴らすタナトス。

 その音に応じて、彼女が現れた通路から次々と女が姿を現した。

 こいつらは……メイドさんだろうか?

 全員、丈が短くて露出の激しいエプロンドレスを身に着けている。


「どうだい? 僕自慢の武装メイドだ。美人揃いだろう?」

「……そこはまあ同意しておくわ。でも、武装ってのはおかしいんじゃない? 武器はどこにあるのよ?」


 ザッと見渡したところ、メイドたちは特に何も手にしては居なかった。

 過激な格好をしているけれど、普通のハウスメイドって感じだ。

 するとタナトスが、ここでもう一回指を弾く。


「ほら、持ってるだろう?」

「……こりゃまた、すっごいわね」


 ばっるんと胸を弾ませながら、次々に武器を取り出すメイドさんたち。

 横一線に並んだ美女たちが、揃って特大メロンみたいな乳を揺らして何かを取り出すのは壮観だ。

 これでもかと言わんほどに存在を主張する膨らみに、私までほうっと声が漏れてしまう。

 美少女のくせして、なかなかいい趣味をしているじゃない!


「最高の景色だろう? これだけ揃えるのは、流石の僕も苦労したんだよね」

「……そんなくだらないことするぐらいだったら、何か他にやれることあったんじゃないの? この結界を何とかするとか」

「失敬な! 僕にとっては、そんな宝よりもこの子たちの方がよっぽど価値があるよ。それにこの結界を守ってたのは、あくまでそこにある武器が危険だからさ。宝自体に興味なんてないよ。ま、予想外の代物が混じってたみたいだけどね」


 そう言うと、タナトスはディアナの握っている剣へと目をやった。

 ディアナの表情が自然と強張る。


「君の愛剣がグラン・エルビスのところへ修理に出されていたのは知っていたけど、まさかこの山に混じってたとはね。僕も知らなかったよ」

「私も知らなかったさ。恐らく、すぐに渡せなかったから避難処置として置いておいたのだろうな。だがおかげで、私は記憶と名前を取り戻すことが出来た!」

「ふうん、まあいいさ。今度こそ、身も心も僕のものにしてあげる。お前たちも、かかれッ!!」


 タナトスの号令に応じて、メイドたちが一斉に武器を構える。

 ナイフに剣に刀に槍……。

 改めてみれば、明らかに胸の体積を超えているようなものが多いけれど、収納に魔法でも使って居たのだろうか?

 人間だった頃の私もたいがい大きかったけど、剣なんていくら何でも無理だったわよ!

 って、呆れている暇もないか。

 こいつら、武器の構え方からしてただのメイドじゃないわね……!

 圧倒的なほど隙が無い。

 かなりの使い手って感じがひしひしと伝わってくる。


『シース、こいつらかなり魔力があるのですー! 見た目は人間ですけど、普通じゃないのですよ!』

「分かってる! どうやら、タナトスにかなり手を入れられてるみたいね……」

『どうするのです? これだけの数は厳しいのですよー!』

「そう言われたってね……のわッ!!」


 いきなり、後方から衝撃波が飛んできた。

 横目で見やれば、タナトスとディアナが激しく切り結んでいた。

 ディアナの持つ剣とタナトスの短剣が、激しく火花を散らしている。

 刃と刃がぶつかるたびに、大気が爆発して衝撃が走った。

 ギインっと金属が震える音が後を引く。

 眼で追えるギリギリの速さでぶつかり合うその様子は、完全に人間のレベルを超越していた。

 タナトスどころか、ディアナの方もトンデモナイ化け物だ!

 戦いの激しさに耐え兼ねた地下室の天井から、少しずつではあるが埃が落ちて来る。

 まずい、このままだと崩れちゃいそう!


「しょうがない、時間がないわ!!」

『だ、大丈夫なのです……?』

「何とかなる! っと、その前に……!」


 衝撃でヒビが入った石像から、コアらしき魔石を手早く回収する。

 恐らくだけど、これを食べればギリギリ進化できるだろう。

 今はそんな時間がないのが、実に惜しいところだけどね。

 さっさとこのメイドたちを突破しなくちゃ……!


「さあ、突撃あるのみッ!!」

『了解なのですッ!!』


 精霊さんが宿った剣と、さっき手に入れた剣。

 その二本を構えた私は、メイドさんたちの列へと突っ込んだのだった――。


話がなかなか進まなくて申し訳ない……!

次回ぐらいからしっかり進むので、ご了承ください。

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