第五十五話 骨巨人を……退治する……ッ!
クリスタル・スケルトンをいっぱい倒したい!
でも剣を痛める危険があるから、いちいち近接で戦うのは厳しい。
かと言って、連中を倒せるだけの魔法を連発するには魔力が足りなかった。
じゃあ、どうすればいいのか?
私が出した結論は簡単で、でっかい落とし穴を掘って誘い込むことだった。
Cランクのモンスターと言っても、骨格がクリスタル風なだけで基本はスケルトンだ。
以前の同輩たちの行動からしても、頭の悪さは折り紙付き。
ちょっと誘導してやれば、簡単に穴にはまってくれるだろうという寸法だ。
こうしてえっちらおっちらと落とし穴を拵えた私は、肉をエサにスケルトンを誘導した。
そしたら釣れること釣れること!
特売品に群がる主婦よろしく、町中のスケルトンがわらわらーっと集まってきた。
で、そいつらをまとめて穴に落としてファイアーランスッ!
炎と爆発に巻き込まれたスケルトンの群れは、哀れ一網打尽になった……かと思いきや。
「ちィッ!! 何でこうなったッ!!」
骨の巨人に追い立てられながら、舌打ちをする。
みんなまとめて爆死するはずだったスケルトンは、何故か一体の巨人として再生してしまった。
魔力の澱んだ場所に骨の山を放置すると、まれに巨大スケルトンが産まれるとか聞いたことあるけど……。
まさか、実際にこんなことになるなんてね!
クリスタル・スケルトンの魔力をちょっとばかり舐めていた。
今思えば、魔法で退治しようとしたのもいけなかったかもしれない。
ファイアーランスの魔力が、上手い具合にスケルトンたちの魔力を混ぜ合わせてしまったようだ。
まったくついてないッ!!
「ウオオオッ!!」
「うわッ!!」
巨大な拳が、私のすぐ後ろの石畳を粉砕する。
その振動の大きさに、軽い身体はボンッと跳ね上がった。
骨とはいえ、見上げるような大きさである。
今の私でも、さすがにさっきの一撃が直撃したらただじゃ済みそうにない。
ひび割れた石畳を見て、顔が青くなる。
『シース、こうなったら魔法剣なのです!』
「ダメ! 魔法剣なんて撃ったら動けなくなっちゃうでしょ! そしたら他の奴にやられちゃう!」
たくさん誘導したとはいえ、クリスタル・スケルトンはまだまだ他にも居る。
ここで魔力をすべて使い切る魔法剣は流石にまずい。
それに、傷んできた剣がいよいよ折れてしまうかもしれない。
そうなったら中にいる精霊さんはどうなってしまうのか?
一体化した剣が折れでもしたら、とても無事とは思えなかった。
「魔法剣なんてなくても、何とかして見せるわッ!!」
『でも、相手はあんなにでっかいのですよ! いくらシースでも、魔法剣なしじゃ勝てないのですよ!』
「ええい、やってみなきゃわかんないでしょ! まずは……地に縛られし翼、紅をもってこれを穿つ。ファイアーランスッ!!!!」
小手調べに、ファイアーランスをぶっ放す。
紅の槍は狙い通りに肩の付け根の部分を射抜いた。
しかし、巨人と化したスケルトンの身体はビクともしない。
煤けることすらなく輝く骨格は、魔法に対して相当の耐性を持っているようだ。
「グオオオオッ!!」
「刺激しただけみたいね! この程度の火力じゃ、あいつはブッ飛ばせないッ!!」
攻撃されて興奮したのか、先ほどよりもさらに早い一撃が飛んでくる。
――完全な回避は無理ね!
拳の軌道を読んだ私は、とっさにそう判断するとあえて全身の力を抜いた。
そのまま抵抗することなく拳に吹き飛ばされ、身体へのダメージを最小限に減らす。
「くッ! これでもかなりきたわね……!」
出来る限り衝撃は流したつもりだったけど、わき腹をえぐった拳の威力は全身に響いた。
スケルトンだった頃に受けて居たら、ポーンッと全身がバラバラになっていたかもしれない。
肉がついていてよかったと、しみじみ思う。
あんなのを骨の身体で受けてたら――もしかしたらッ!
「来なさい、デカブツ! あんたを駆逐してやるわッ!!」
『シ、シース!? やけになったのですか!』
「大丈夫だって」
制止する精霊さんを無視して、わざとスケルトンの前に立ちふさがる。
両手両足を広げて、出来る限り目立つように。
すると怪しむことを知らないやつは、ここぞとばかりに拳を振りかぶった。
渾身の一撃で、一気に勝負を決めるつもりらしい。
――今だッ!
大きな背中がこちらに向かって曲げられたところで、思いっ切りジャンプする。
少し肉がついたとはいえ身軽な体は、軽々と拳をすり抜けてスケルトンの上にたどり着いた。
私はそのまま敵の背中に飛び乗ると、素早く手を回して骨にしがみつく。
「グオッ!?」
「どう? これで攻撃できないでしょ?」
「ウオオッ!!」
ちょうど、手が届きにくい場所へと移動した私。
その私をどうにか攻撃しようと、スケルトンは無理やりに手を伸ばして拳を振るう。
するとたちまち、腕や肩の関節から「ピシッ!」と軽い音が響いた。
やっぱり!
こいつ、骨だけだから腕力の強さに関節の強度が追い付いてない!
「そらそら、どうしたのよ! 私はまだ居るわよッ!!」
「グオ! グオオッ!!」
挑発に乗せられたスケルトンは、さらに力いっぱい私を攻撃し始めた。
けれど、後ろは見えないために狙いがロクに定まっちゃいない。
大雑把過ぎる攻撃を次々と回避していくと、やがて肩の関節からバキャッと樽が割れたような音がした。
限界を超えた関節が、とうとう外れてしまったのだ。
スケルトンの右腕がなすすべもなく落ちていく。
さらに、それにつられて身体全体のバランスも崩れた。
小山のような巨体が、みるみる傾く。
「おっとッ!」
「ウオオオッ!!!!」
慌てて背中を蹴り、巻き添えを食わないうちに離脱する。
こうして私が宙を飛んでいるうちに、スケルトンの巨体は大地へと落ちた。
ズンッと地面が揺れて、盛大に砂埃が舞う。
衝撃の大きさに耐えられなかったのだろう。
関節があちこちで砕けて、スケルトンはもう起き上がることすらできない。
赤ん坊よろしく、バタバタと見苦しく暴れるだけだ。
「……ふう、何とかなった!」
『流石はシース、凄いのですよ!』
「やけになったとか言ってたくせに、調子いいんだから。ま、でも結果オーライね。……ほれッ!!」
スケルトンの胸元へと近づくと、淡く光る宝石のようなものを取り出す。
魔石だ。
それも、ラーゼンには及ばないまでもなかなかのサイズである。
クリスタル・スケルトンにこんなデッカイ魔石なんてないはずだから、集合して巨人になった時に生成されたものらしい。
苦労したけど、その分の収穫もちゃんとあったってところか。
んー!
ひっさびさの魔石はやっぱりおいしいッ!!
口溶けが最高だわッ!
「……そうだ。こうやって巨人にしてから倒していけば、魔石がどっさり手に入るわね! 人型スケルトンの骨なんて食べたくないし、これからはこうしましょッ!!」
『えッ!? またこの巨人を倒すのですか!?』
「へーきへーきッ! わかったでしょ、こんなの見掛け倒しだって。無理にでっかくなってるから、弱点だらけなのよ」
『でもー!』
仕事していないくせに、ああだこうだとぶーぶーと文句を垂れる精霊さん。
まあ、危険があるってことは分かるけどさ。
これぐらいしなきゃ、進化なんてできないっての!
危険を乗り越えた先に栄光はあるのだ!
というわけで、苦情の念を適当に流しながら私は再度、スケルトンたちをはめるための落とし穴を掘り始める。
するとここで――
「あれ? 穴が……つながった?」
堀り進めていた穴の底が、なんか怪しげな地下空間とつながった――!
あともうちょっとで、年間ランキングが見えて来たぞーッ……!
年間には過去一度も載ったことがないので、いろいろと感慨深いです。
これも読者様のおかげ、これからもよろしくお願いします!




