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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第三章 はるか下を目指して!
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第五十話 おいでよ、亡者の村

「前に森を調べた時は、食料の問題があったからねえ。今度は、もっともーっと奥に行ってみましょ!」

『了解なのですーッ!』

「クリスタル・スケルトンを求めて、いざ森の奥地へッ!!」


 どこぞの考古学者にでもなったような気分で、ズンズンと進んでいく。

 人間なら歩きにくいであろう昏い森の径も、死蝕鬼の身体ならへっちゃらだ。

 どんなでこぼこ道だろうが踏破出来るし、どんな暗がりだってよーく見通せる。

 たまーにゾンビどもが襲ってくる以外は、よく整備された石畳の道を行くようなものだ。


「快調快調! ドンドン行こうッ!」

『はいですよー!』


 威勢よく声を出しながら、さらに奥へと突き進んでいく。

 食料はゴーストからいくらでもとれるから、気楽な長旅だ。

 こうして何時間も歩きっぱなしで歩いていくと、周囲に霧が立ち込めて来た。

 進めば進むほど霧は濃さを増していき、私たちの侵入を阻むかのようだ。

 一寸先は闇ならぬ、一寸先は霧。

 周囲のモノがすっかり白に埋没したところで、私はハタと足を止める。


「これはなかなか、進みづらいわね」

『こんなところで敵に襲われたら厄介なのですよ。戻るのです?』

「いいや、戻らないわ。この霧、どこか臭う」

『そうです? 特に変な臭いはしないのですよ?』

「そうじゃなくて。様子がおかしいってこと」


 ったく、長生きしてるのに言葉を知らないんだから。

 それにしても、この霧はちょっとおかしい。

 普通に考えれば、森の中心部よりも水気の多い湿地帯の周辺の方が霧は濃くなるはずだ。

 この周辺には特に水場もないようだし、およそ自然のものとは思えない。


 この際、思い切って前に進んでいく。

 景色は完全に白一色となり、霧が体にまとわりついてきた。

 物理的な抵抗感すらある。

 ――間違いない、この霧は何かを守っている!

 頭の中で、予感が確信へと変わっていった。


「……何だか、空気が澄んできたわね」

『ですよー。さっきまでとは全然違うのです』


 生ぬるかった空気が冷えて、急速に静まり返っていく。

 冬の朝のように張り詰めたそれは、この階層にあっては異様なほど爽やかだ。

 これは……あの時と同じだ!

 勇者の墓を守っていた守護結界。

 あれと同じで、魔を払う何かが仕掛けてあるのね!!


「……ん? 何か見えてきたわね」

『家です?』

「あれは……村よ! 村があるわ!!」

『えッ!? こんなところに村なのです!?』

「でもあの建物の集まりは、どう見たって村よ!」


 木々の途切れた方角に向かって走っていくと、すぐさま木造の建物が目に飛び込んできた。

 村だ、それも結構大きい!

 森を切り開いて作られた、広々とした平地。

 そこに木造の民家がいくつも建ち並び、奥には大きめの石造建築の姿も見える。

 あの形は、教会か何かだろうか?

 白さの際立つ外壁は、およそダンジョンの中とは思えなかった。


「ここは……何かしら? 場所からして、ただの村のわけないけど……」

『シース、気を付けるのですよ!』

「むッ!!」


 こちらに向かって、いきなり矢が飛んできた。

 とっさにそれを回避すると、放ってきた方向を見やる。

 するとそこには、ずいぶん青白い顔をした男が居た。

 年の頃は二十代後半と言ったところだろうか?

 本来なら若くて溌剌としているはずの年齢だろうに、妙に生気がない。


「あれは……ゾンビ?」

『そうみたいなのですよ。あの気配、人じゃないのです!』

「ち、ならさっさと始末を……」


 剣を抜くと、素早くゾンビとの距離を詰める。

 すると、刃を向けられたゾンビがフルフルと震えはじめた。

 その顔に浮かんでいるのは、明らかな恐怖だ。

 食欲以外の全てを失っていると言っていいゾンビが……ビビっている?

 それも、この怖がり方は――


「た、助けてください! 御使い様だなんて、知らなかったのです!」

「……あんた、しゃべれるの!?」


 ゾンビが口を利いたことに、思わず目を丸くする私。

 するとゾンビの方もまた、私の態度に驚いたような顔をした。


「は、はい……。もしかして、あなたは御使い様ではないのですか……?」

「知らないわよそんなもん! つか、どうしてゾンビが喋れるの!?」

「それは、このわしが説明しよう」

「わッ!」


 いきなり後ろから話しかけられて、思わず変な声が出てしまった。

 すぐさま振り返れば、白髭をたっぷりと蓄えた老人が立っている。

 顔に刻まれた皺は深く、いつ死んでもおかしくないような見た目をしているが、その眼光は鋭く威厳があった。

 どうやら、村長とかそんな感じの人のようだ。

 さすがにこんなところに村を構えているだけあって、死蝕鬼なんてヤバい奴を前にしても平然としている。

 大した度胸だ。


「あ、あなたは……?」

「わしはこの村の村長、オルジですじゃ。して、あなたはどこのどなたですかな?」

「私はシース・アルバランよ。通りすがりの冒険者……じゃなかった、死蝕鬼かしら。この場所には、クリスタル・スケルトンを捜しているうちに辿り着いたわ」

「ほう、クリスタル・スケルトンを。それでしたら、この村からもう少し行った先におりますな」

「おお、良かった!! やっぱり森の奥地に生息地があったのね! って、それよりあなたたちは何者なの? ゾンビっぽいけど、その割には知性的よね?」


 私がそう言うと、村長はそっと眉をひそめた。

 しばしの沈黙。

 時の流れが、嫌にゆっくりと感じられた。

 やがて彼は強い諦観を感じさせるため息をつくと、おもむろに唇を開く。


「わしらはそうですな……。一応、国民と言ったところでしょうかの。タナトス様の国の」

「タナトス様の……国?」

 

 私が問い返すと、村長は深々と頷いた。

 こんなところに国が……あるの?

 予想外の言葉に、私は思わず呆然自失としてしまったのだった――。


ダンジョン探索してるのに、村なんて出して大丈夫かな……?

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