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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第三章 はるか下を目指して!
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第四十九話 骨に帰ろう

「スオオオオッ!!」

「んー、寝た後の身体に魔力が沁みる……」


 きゅるきゅるすぽんッ!

 ゴーストの中身を飲み干すと、プハーっと息をつく。

 釣りを始めて以降、ゴーストばっかり食べてるけど、どれだけ食べても飽きないわね!

 味が美味しいだけじゃなくて、たぶん本能的に体が欲してるとかそんな感じなんだろう。

 大百科先生で詳しく調べてみたら、死蝕鬼の主食って魔力らしいし。

 純粋な魔力のかたまりっぽいゴーストを美味しく感じるのも、まあ当然っちゃ当然か。


「朝の栄養補給も済んだし、今日もやりますか!」

『そうですよ、今日も目いっぱい頑張るのですー!』

「あんたねえ、偉そうなこといろいろ言ってたわりにいつもそれだけよね……」


 めちゃくちゃ張り切って「僕が教えるのですー!」とか「頑張るのですよー!」とか言ってたくせに、呪文ぐらいしか教えてくれなかったのよね。

 しゃべり方と声は可愛いくせに、声掛けばかりで部下に何でもやらせる無能なオッサンみたいなやつだ。

 光の球の中に、ちっさいおっさんとか入ってるんじゃないかと最近疑わしく思っている。

 千年生きてるって言うし、ま、中身はおっさん通り越してじいさんみたいなもんか。


『む、いま何か師匠に対して失礼なことを考えていませんか?』

「別に、そんなことないわよ。それよりも早く修業しなきゃ!」


 釣竿を持って森を出て、そのまま湿地帯へと向かう。

 やがて木々が途切れ、沼が目の前に現れたところで私は足を止めて構えを取った。

 精神を落ち着けて、魔力を手のひらに集中。

 そして――


「地に縛られし翼、紅をもってこれを穿つ。ファイアーランスッ!!」


 魔力が炎へと変換され、人の背丈ほどの槍が出来上がる。

 高く振りかぶると、それを思いっきり投げつけた。

 轟ッと唸りながら宙を抜けたそれは、沼の中の岩に直撃して火柱を上げる。

 たちまち周囲の水が蒸発し、もわっとした湯気が押し寄せて来た。

 それがすっかり収まると、でっかい穴が開いて土管のような姿となった岩が残されていた。


「やった、完璧な仕上がり!」

『凄いのですよ! 中級魔法を三日でマスターしたのです!?』

「まだ一種類だけだけどね。ま、私は何をやらせても天才だから」


 ふふんっと鼻を鳴らして胸を張る。

 昔から、私ってば何でもできるのよね。

 剣術でも学問でも、習えば何でもすぐに出来た。

 むしろ、たかだか中級魔法の一つに三日もかけているようじゃまだまだかな?


『何だか、凄く調子に乗ってる気がするのです……!』

「そんなことないわ。私の自己評価は客観的よ。客観的に見て、私は天才なの」

『自分で自分のことを天才って言う人が、客観的なわけないと思うのですよ?』

「それはどうかしらね? 出来る人間ってのはさ、自信があるものよ」

『はあ……。でも、シースに才能があることは確かなのですよ。森が燃えた時から感づいてましたけど、予想以上なのです。ここまで炎を使いこなせるなんて、フェイルみたいなのですよ』

「フェイルって、勇者のことだっけ? へえ、勇者って炎の使い手だったんだ……」


 勇者と言えば、伝承だと光の使い手として語られることが多い。

 勇者を主役にした舞台とかも、ほとんどは光の使い手として描かれていたはずだ。

 遠い昔のことだから事実を元にしてるなんて思ってはいなかったけど、実際には炎だったんだ。

 意外な真実を知られて、ちょっと得した気分がする。


『フェイルの炎は凄かったのですよー。破壊だけじゃなくて、再生と浄化の炎も使えたのです!』

「そりゃ凄いわね。ま、そのうち私の方が凄くなるから見てなさい!」

『流石のシースでも、フェイルには勝てないと思うのですよー。フェイルは今のシースの百倍以上は強かったのですー』

「ふん、いつかは強くなってやるわよ! いつかはッ!!」


 そう言うと、私は一旦修行を切り上げて、周囲を見渡した。

 ゴーストは凄くおいしいんだけど、強くなるための餌としてはちょっと物足りないのよね。

 もう少し強くて、なおかつ食べられるぐらいの味の獲物は居ないかな……?

 中級魔法も一つとはいえ習得したし、そろそろ新しい獲物を探しても良さそうだ。

これまでは、ゴーストの大襲来とかを怖がってそこまで森の深部にも行けてなかったし。


「……そうだ! 骨よ!」

『いきなりどうしたのです?』

「大変な見落としをしてたなって思って。骨を煮込めば、魔力たっぷりのスープが取れるじゃない!」


 私がポンと手を叩くと、すぐさま精霊さんが呆れた感じの念を送ってきた。


『シース、もしかしてゴーストに飽き足らずスケルトンまで食べるつもりなのですか……?』

「もちろん。こうなったからには、食べられるものはなんでも食べるわよ! ……あ、流石に人間のスケルトンは食べないけどね」

『ゴーストは良くて、人型のスケルトンはダメなのです?』

「当たり前でしょ! ゴーストはぼやっとしててそこまで形が分からないけど、人型のスケルトンははっきり人間って分かるじゃない!」

『……相変わらず、シースの言うことはよくわからないのです』


 剣から、精霊さんのため息が聞こえてきたような気がした。

 失礼しちゃうわね、私の考えはいつも真っ当よ!

 変人扱いしないでほしいわね、まったく!

 

「……まあいいわ。それより、適当なスケルトン種のモンスターを捜さないとね。えーっと、こういう時はっと……」


 近くに置いてあった布袋から、毎度おなじみの大百科先生を取り出す。

 スケルトン系のモンスターはっと……あった!

 へえ、スケルトン系に分類されるモンスターだけでも結構種類があるのね。

 ノーマルなスケルトンは弱すぎるし、上位種のキングは強くても数が少ないか。

 となると、やはり亜種ね。

 何か適当なの居ないかな……。

 適当にページを繰っていくと、とあるページに目が止まった。


「これいいかも!」

『どれどれ?』

「こいつよ!」


「クリスタル・スケルトン

 脅威度:Cランク

 水晶のような物質で構成されていることからその名がついた、不死族のモンスター。

 本物の水晶で出来ているわけではないが、身体の硬度と強度は折り紙付き。

 骨そのものを破壊することは非常に困難だが、関節を狙えば比較的対処は簡単。

 Cランクの中では弱い部類に入る。

 かなり貴重性は高いが、特定の場所に偏って出現するという特性があるため、出現場所さえ知っていれば出会うことは容易」


「どう? 捜してみる価値はあるんじゃない? 一度見つけたら、近くにたくさんいるみたいだし」

『そうですね。もしこの周辺に居るとするなら、かなり割が良い獲物なのですよ』

「よし、ではクリスタルスケルトンを捜して出発ッ!!」


 こうして私と精霊さんは、クリスタル・スケルトンを捜しに出かけるのだった――。


これで、プロローグも含めて五十話!

次は百話目指します!

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