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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第三章 はるか下を目指して!
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第四十七話 みんな大好き! 女騎士さんッ!

 その騎士は、思わず目を見張ってしまうほどの美女だった。

 冴え渡る蒼い瞳に、豊かにたなびく金髪。

 目鼻立ちははっきりとしていて、舞台に立ったら主役間違いなしって感じのオーラがある。

 長身で手足が長く、顔だけじゃなく身体の方もかなりいい感じ。

 大きくカーブを描く胸部装甲も、中身がしっかり詰まっていそう。

 夜の町のお姉さんたちとは違って、脱いだらばるーんッと景気よく本物が出て来ることだろう。

 まさに麗しの戦乙女、女騎士の理想系って感じだ。

 女の私でも、たまらず「クッ殺せ!」とか言わせたくなってきちゃう。

 …………綺麗な顔を、小脇に抱えてさえいなければ。


 ――ま、まずいわね……!


 デュラハンは不死族の中でも屈指の強者。

 ギルドの脅威度指定は、確かAランク相当だったはずだ。

 Bランクの私が、正面からぶつかり合って勝つのは難しい。

 それに、装備の差だってある。

 生前から愛用しているのであろう鎧や盾は、見るからに名品といった趣だ。

 そこらの板金鎧とは、光り方からして違うのが分かる。

 精霊さんの宿った状態でも、私の剣じゃこれにダメージを通すのは厳しそうね。


「ううむ、怪しい奴だな……」


 私の方を覗き込むと、唸るデュラハン。

 幸いなことに、彼女はいきなりこちらを攻撃してくることはなかった。

 代わりに、疑わしげな眼でジローッとこちらを睨みつける。

 どうやら、私を味方のモンスターかどうか吟味しているらしい。

 ここはひとつ、とぼけるしかなさそうね。

 すぐさま精霊さんに「とりあえず話を合わせて!」と念を送る


「貴様ら、どのあたりから来た? 見たところ死蝕鬼と悪霊のようだが、まさかあの火事の原因ではないだろうな!?」


 燃え上がり始めた森を、バシッと指差すデュラハン。

 かなりご立腹のようで、形の良い眉が吊り上がっている。

 ははは……変な汗が出て来た……。


「と、とんでもない! あの火事から逃げて来ただけよ!」

『そ、そうなのですーッ! いきなり火事になったから、大慌てだったのですよー!』

「ほう、そうか。しかし、二人とも見覚えのない奴だな。出身を名乗れ」

「しゅ、出身は……あの森よ。最近、死蝕鬼になったばかりでさ。見覚えがないのは当然ね」

『僕は……』


 とっさにいい嘘が思いつかなかったのか、精霊さんが言葉に詰まる。

 これだから、ぽやぽやーっとしてるやつはダメなのよ!

 剣身をコツンッとデコピンで弾くと、代わりに私が言う。


「こいつは、最近意識を持ち始めたばっかりなのよ! だから、どこ出身とかよくわからなくて。森に落ちてたのを拾ったもんだしさ」

「この森で物霊の類か? ずいぶん珍しいな」

「え、ええ……。たまにアドバイスとかしてくれるし、かなりの掘り出し物だと思うわ」


 私の返答に、デュラハンはとりあえず納得したようだった。

 疑わしげに歪んでいた眉が、まっすぐに戻る。

 ふう……心臓が止まるかと思ったわよ!


「関係ないのならいいのだがな。もしそなたらが犯人だったら、この場で叩き切らねばならなかった。森を燃やすのは、タナトス様の定めた法を犯すからな」

「タナトス様?」

「む、知らぬのか? まあ、自意識を持ち始めたばかりでは無理もないか……。タナトス様は、この第三階層を治められているお方だ。遠くに城が見えるだろう、あそこに住んでおられる」


 そう言って、デュラハンは遥か彼方に聳える異形の城を示す。

 ほえー、デカい城だと思っては居たけどやっぱりちゃんと城主とか居るんだ。

 タナトスなんて御大層な名前だけど、どんな奴なのかしらね?

 ドラゴンみたいに、次の階層へ続く鍵とかになってなきゃいいんだけど……。


「他にも、法はあるの?」

「無論だ。もっとも、普通に暮らす分にはさほど関係ないであろうがな。タナトス様は放任主義者で、小うるさいことはあまり言われないのだ」

「なるほどね、その方がこっちとしても助かるわ。じゃ、特に用もなくなったってことで私たちは――」


 デュラハンに背を向けて、さっさと逃げだそうとする私たち。

 だがここで、後ろからがっしりと肩を掴まれてしまう。


「ちょ、ちょっと! 私たちが何したって言うのよ、放火は違うって分かったでしょ」

「いや、その件ではないのだがな。そなたらから、良い生肉の匂いがするものだから」

「肉の匂い? そんなのする?」


 すぐさま自分の身体を匂ってみるけれど、特にそんな匂いはしなかった。

 しかし、デュラハンはやけに必死な顔で言う。


「いいや、するぞ! これは間違いなく肉の匂いだ! そなたたち、ちょっと前に肉を食べたであろう!?」

「ま、まあ食べたのは事実だけど……」

「やはりそうか! 家畜が逃げたという話は聞いていたが、本当だったのだな! 久々の肉が、新鮮な肉が……! そなたたち、肉はもうすべて食べてしまったのか? もし残っているというならば、分けてくれ!!」


 必死、あまりにも必死!

 目を血走らせるデュラハンに、私も精霊さんも揃って引いてしまう。

 さっきの亡者どもといい、一体どんだけ肉に飢えてるのよ、ここの連中は!

 肉食系にもほどがあるわよッ!


「あれはね……私たちにとっても重要な食糧だからさ。ちょっと、渡せないかな……」

「…………そうか、それは残念だ。だが、もし気が変わったらいつでも言ってくれ! その時は、私に出来ることならば何でもするからなッ!!」


 力強く、何とも残念な宣言をするデュラハン。

 彼女はそのまま踵を返すと、城の方に向かって歩いて行った。

 やれやれ、やっとこさ立ち去ってくれたか。

 思わぬ危機だったわね、ホント。


『ふう、疲れちゃったのですよー!』

「私も。でも、いくつか重要なことが分かったわね」

『なんです、それ?』

「えっと、一つ目はタナトスの存在。二つ目は肉の貴重性ってところかしら。特に二つ目は、これを上手く使えばこれからの狩りが劇的に楽になるわね」

『何をする気なんです?』

「釣り。ゴーストを一体ずつ、おびき寄せるのよ」


 私はそう言って笑うと、木陰に隠しておいた食料袋をすぐさま回収してくるのだった――。


女騎士さんの登場です!

再登場の予定もありますので、ご期待ください!

感想・評価など頂けると作者はとてもうれしいです!

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