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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第三章 はるか下を目指して!
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第四十二話 ……ねえ、ゾンビって食べられると思う?

「いやあああァッ!!」


 ところかまわず絶叫する私。

 人間だった頃なら可愛い悲鳴で済んだんだろうけど、今の私はおどろおどろしーい死蝕鬼である。

 自分でもびっくりするほど、恐ろしい声が出た。

 悪魔に憑かれたおばあちゃんが、白目を剥きながら叫んでいるような感じだ。

 その響きの恐ろしさに、さしものドラゴンもその身を揺らす。


『こら、やめんか! 耳に悪いッ!!』

『だって、しょうがないでしょ! 亡者よ亡者ッ! 気持ち悪いったらありゃしないわッ!!』

『そなただって、亡者であろう!』

『そうですよ、ブーメランみたいなこと言わないのです!』

『自分はいいのよ! 自分だから!』


 鏡を見ない限り、姿だって見えないしね!

 私がそうきっぱりと断言すると、ドラゴンや精霊さんは「もう相手にするまい」と言った感じで念を送ってきた。

 人間なら誰しもこんな感覚、あると思うんだけどなあ。

 人とドラゴンと精霊は、やはり真には分かり合えないらしい。

 異種族交流は難しいのだ……。


『このあたりで良かろう。降りるぞ』

『分かったわ。あの広場なんかいいかも』


 ここから少し飛んだ先にある湿地。

 そこと森との境目に、空白地帯とでもいうべき荒野があった。

 倒木が何本かあるけれど、着陸するにはうってつけの場所だ。

 私がそこを指さすと、ドラゴンさんはすぐさまうなずき下降していく。

 やがて地面が近づくにしたがって、なまぬるーい風が吹きつけて来た。

 にわかに霧が立ち込めて、変なにおいも漂ってくる。


『……こりゃひどい』

『我慢しろ。道はここしかないのだ』

『ああ、もうわかったわよ! とっととこんな階層脱出して、次に行くわッ!!』

『僕も、こんなところさっさと出たいのですー! 頑張るのですよ、シース!』

『あんたもちょっとは頑張れッ!』


 盛大にツッコミを入れたところで、私はドラゴンの背中からえいやっと飛び降りた。

 そして括り付けてあった革袋を回収すると、ぺこっと頭を下げる。


『これでよし! 送って来てくれてありがとう、ドラゴンさん!!』

『僕からもお礼を言うのですー!』

『うむ、そなたらとはここでお別れだ。達者でな』

『ええ、言われなくても! 元気元気ッ!』

『その意気だ。では最後に少しだけ。迷宮を抜ける最後の一歩に至るまで、決して油断するでないぞ。最大の罠は、最後に仕掛けられておる』

『罠?』


 揃って疑問を呈する私と精霊さん。

 しかし、ドラゴンはその問いに答えることなく翼を広げた。


『ちょ、ちょっと待って! 罠って何よ!』

『自分で考えるのだ』

『分かるわけないでしょ! 教えなさいよーッ!!』


 私の叫びを無視するかのように、ドラゴンは翼をはばたかせた。

 たちまち暴風が巻き起こり、まともに立っていられないほどになる。

 わ、砂ぼこりが目に……ッ!!

 とっさに目を腕でガードすると、その隙にドラゴンは遥か彼方まで行ってしまった。

 まったく、肝心なことを言わないんだから……!

 まあいいわ、こんなダンジョンぐらい自分で攻略してやるッ!

 私はその場でフンっと鼻を鳴らすと、飛び去るドラゴンの姿に背を向けた。


『……さてと、気を取り直して。何とか第三階層についたわけなんだけどさ。今の私たちには最大の問題があるわ!』

『何です?』

『食べ物のことよ!』


 私がそういうと、精霊さんから「またですか?」と呆れた念が返ってきた。

 またとは何よ、またとは!

 食事は生きていくうえで、いっちばん基本的なことなんだからね!


『あのねえ、そこが一番重要なのよ? 私は魔物を食べないと進化もできないし、そのうち魔力が尽きちゃうわけなんだけどさ。この階層に住み着いているのは、ドラゴンの話だと亡者ばっかりってことなのよね。……その意味、わかる?』

『むむ、どういうことなのですかー?』

『つまりさ、生きるためにゾンビを食べなきゃいけないってこと。今はまだまだ備蓄があるけど、そう長くは持たないわ。何だかんだ言って、この身体は燃費あんまり良くないし』


 精霊さんの時が止まった。

 やっとこさ、事の重大さが分かったらしい。

 私が最初に叫んだのって、亡者なんてキモイって思ったのもあるんだけどさ。

 それ以上に、亡者を食べなきゃいけないって思ったからなのよ……ッ!!


『そ、それは大変なのです! シース、強く生きるのですよ……ッ!!』

『他人事みたいに言うなッ!! そりゃあんたは良いわよね、たまーに魔石を食べればそれで良いんだから! 私なんて、毎日のようにゾンビをもしゃもしゃしなきゃいけないのよ! その気持ちわかる!? 十六歳のうら若き乙女が、ゾンビをもしゃもしゃするのよッ!!!!』

『ご、ご愁傷様なのですよ……。でも、でも大丈夫なのですッ!! シースは死蝕鬼だから、ゾンビを食べたとしても体に害は無いのですよ! たぶんッ!』

『そりゃ、この身体ならそういうのでも平気だろうけどさあ……!』


 心がね、痛むのだ。

 乙女は既に休業してるけど、ゾンビを食べるってのはちょっと。

 人型のモンスターならゴブリンを食べたことはあるけど、それとは比較にならないぐらいヤバい。

 仮に味が意外とおいしかったにしても、いろいろ振り切れちゃってる気がするし……。

 こうなったら、せめて動物のゾンビを捜すしかないわね。

 人型はいくら何でもアウトだ。

 出来ることなら、牛とか豚とかのゾンビが居れば……って、そんなの居るわけないか。


『……とりあえず、森へ行きましょ。そこで出来るだけ、生きてるモンスターか美味しそうなゾンビを捜すってことで』

『分かったのです! 僕もできる限り、協力するのです!!』


 こうして私と精霊さんは、食べられそうなゾンビを求めて霧の森に足を踏み入れたのだった――。


ゾンビをどう調理したものかなと考え中の作者です。

こうしたらゾンビでもなんとか食べられるんじゃないかというアイデアのある人は、ぜひご意見を。

参考にしてみます。

他にも、感想・評価など頂けると非常にうれしいです。

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