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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第三章 はるか下を目指して!
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第四十話 私を連れて行って!

 なんってついてないんだろう!!

 放った矢がたまたま通りすがりの怪鳥に当たるなんて、何千――いや、何万分の一のはず。

 あまりにもついていない。

 ありえないぐらいよッ!!

 もしかして神様は、私たちを見放したのか……!?

 頭の中が悲劇一色に染め上げられる中、ドラゴンが起き出す。

 安眠を妨げられたことが、よほど気に入らなかったのだろう。

 不機嫌そうに鼻を鳴らすと、犯人を血祭りにすべく周囲を見渡す。


 ――もっとも恐れていた事態になっちゃったわね!


 当初の計画だと、ドラゴンは矢が飛んできた方向へすぐに飛んでいくはずだった。

 でもこれじゃ、どこから攻撃されたのかわからなくて周囲を捜索してしまう!

 大岩の陰に隠れてはいるけれど、ドラゴンのことだからすぐにそれぐらい発見するだろう。


 ――こうなったら、やられる前にやるか?

 

 起き出したばかりのドラゴンはよろよろとしていて、隙だらけに見えた。

 これなら、全力で魔法剣を撃てば何とかなるかもしれない。

 進化する前の段階で、あのラーゼンの身体を軽々貫けたのだ。

 死蝕鬼へとランクをアップを遂げた私なら、ドラゴンの鱗だって――行けるかもしれない。

 剣に手を掛けた私は、すぐさまエコーを放って相手の実力を探る。

 すると、視界の端に浮かび上がった数字は――


『22700』


 …………に、二万二千七百ぅッ!!!!

 ば、化け物もいいとこじゃない!

 ラーゼンのだいたい二十倍って、こんなの絶対に勝てるわけないじゃないのよ!

 ダンジョン造った責任者、出てきなさいッ!!

 この階層にこんな化け物を置くなッ!!

 頭おかしいわよッ!!!!


 あまりの数値にビビってしまって、私は息すら止まりそうになった。

 身体が勝手に、ドラゴンから距離を取ろうとする。

 ゴブリンキングやラーゼンの時よりも、さらに激しく格の違いを感じた。

 強いとは思っていたけれど、まさかここまでとは。

 こんなのに勝てる奴なんて、それこそ勇者ぐらいしか……いや、待って!


 そこまで考えたところで、頭の中をある考えがよぎった。

 こいつの存在はそう、あまりにも理不尽なのだ。

 自然発生したとは思えないし、このダンジョンを造った存在が外から連れて来たのはまず間違いない。

 でも、どうしてわざわざこんな化け物をダンジョンの中に入れたんだろう?

 門番とも考えられるけど、こいつを用意してまで宝を取られたくないなら、最初から入り口を隠してしまえばいいのだ。

 ドラゴンは人間を凌駕するほどの知能を持つと言う。

 もしかしたらこいつは――戦うこととは別の、何か特別な役割を与えられているんじゃないの?

 ええい、こうなったら一か八かだ!

 このままじゃどっちにしろ見つかるし、なるようになれッ!!


「ド、ドラゴン……!」


 岩陰から出ると、すぐさまドラゴンの顔を見据えて呼ぶ。

 まだまだ発音することに慣れていない喉は、酷くかすれた声しか出せなかった。

 しかしドラゴンにはそれで十分で、すぐさま金色の眼がこちらを覗き込んでくる。

 そして大きく顎を開くと、確かに人間の言葉で話しかけて来た。


「ほう、自ら出てくるとは潔いな。我が眠りを妨げたのは、そなたか?」

「そ、そうよ……! 私が、あんたを起こした!」

「ふん、そうか。ならばさっそく喰らってやろうか!」

「私なんて、食べても、美味しくないわよ! それにあんた、挑戦者に対して、何かしら……すべき仕事があるんじゃないの?」


 精一杯の虚勢を張って、強い口調で言う。

 するとドラゴンは、少し驚いたように目を丸くした。


「ほう、そなた気づいたのか。我自身が、三階層へ行くための鍵だと言うことに!」

「……ああ、なるほど。あんた自身が、鍵だったってわけか!」

「何じゃ、気づいてはいなかったのか……」

「存在があまりにも不自然だから、何かしらの役割を与えられているのだとは思ったわ。ダンジョンの構造からして、敵から宝を守る以外の何かをね」

「ふん、やはり気づいているではないか。我が役割は、その威を持って挑戦者の勇気を試すこと。勇気をもって我が前に立たぬ限り、永遠に第三階層への道は開けぬようになっている」


 ……勇気を試す、ねえ。

 勇者さんなら呆気なくクリアできそうな課題だ。

 でも、普通はそんなの達成できないわよ!

 確実に負けるって分かってて立ち向かうのって、それ勇気じゃなくて蛮勇なんじゃないの?

 するとドラゴンは、私の考えを読んだのか笑いながら言う。


「そなたの方から来なくとも、いずれ我の方から襲うつもりであった。そなたが上層より来た時から、存在は把握していたのでな。それで、逃げ続けずに立ち向かえば試練は合格だったのだ」

「ふーん、そういうこと。しかし、試練ってのがよくわからないわね。うすうす思ってたんだけど、このダンジョンって挑戦者を強くするための施設か何かなの?」

「……それは言えぬ。教えてやりたいのはやまやまなのだが、あいにく、そうは出来ないように術式を掛けられていてな。情けないことよ」


 深々とため息をつくドラゴン。

 その姿からはもはや覇気など感じられず、哀愁すら漂っていた。

 考えてみれば、ずいぶんと可哀そうなものだ。

 なにせ、ドラゴンからすれば箱庭みたいな場所に、千年も閉じ込められているのだ。

 やることないだろうし、私なら退屈で死にかけない。


「あんたも、ずいぶん苦労してるのね……」

「言うな。それより、務めを果たさねばな。第三階層へは、このまますぐに向かうか?」

「そうね、荷物を持ってきていい?」

「構わぬ、待とう。だが、出来るだけ早く戻ってきた方が良いぞ。夜が明けてしまえば、流石に我が翼でも向かうことは難しくなる」

「え? 夜が明けると何かまずいの?」


 私がそう言うと、ドラゴンは呆れたような顔をした。

 長い鼻息が、ピューッと吹き抜けていく。


「そなた、通路の場所を知って我が元へ来たわけではないのか?」

「いいえ、知らないわ。でも、この精霊さんが千年間も見つけられなかったって言うからさ。精霊さんがあんまり調べてない場所って言うと、あんたの巣ぐらいかなって」


 腰の剣をポンポンと叩くと、ドラゴンは納得したような顔をした。

 彼はよっこらせと身を起こすと、巣の端へと移動して、指を空高く掲げる。

 その爪の先にあったのは――


「月……? まさか!」

「そうだ。あの巨大魔鉱石のわずかに欠けた部分に、第三階層へと続く通路の入口があるッ!!」


 ドラゴンの予想外の言葉が、重々しく響いたのだった――。


記念すべき四十話、いよいよ第三階層へと向かいます!

通路がどこにあるか、予想が当たっていた方は居ますでしょうか?

感想・評価など頂けると嬉しいです。

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