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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第二章 紅くて速くて強いヤツ!
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第三十話 夜が来た

 あー、もう上手くいかない!

 あともうちょっと、ホントにもうちょっとぐらいだってのにッ!

 どうしてこう、ジグゾーパズルがワンピース足りないみたいな感じなのかな!

 イライラする、無性にやけ食いがしたくなるッ!

 誰か、酒とステーキを持ってこーいッ!!


 ……はあ、何やってんだろ。

 精神的に落ち着いた私は、その場でごろーんっと横になった。

 洞窟の冷たい床が、骨の身体に心地よい。

 魔法剣は『一応』完成した。

 ただ、あくまでも一応だ。

 ノートにも『魔法剣(一応は習得?)』としてある。

 何で一応かというと、威力は問題なさそうなんだけど、魔力の消費が激しすぎて一日二回ぐらいしか打てないのよね……。


 途中まではそんなことなかったのに、どうしてこうなっちゃったのか。

 むしろ、そのまんま魔法を使うよりも燃費が良いとすら感じていたのだ。

 魔法に詳しければこうなった理屈の一つもひねり出せるんだろうけど……うーん。

 門外漢の私には原因がさっぱりね。

 あれやこれや検証しようとしてみては、さっきみたいに騒ぐ羽目になる。


 こういう時、図書館が近くにあったらなあ。

 何のために馬鹿高い使用料を支払っているんだか。

 あと三か月ぐらいで利用券の期限が切れるけど、それまでに街へ行くのは難しそうだなぁ……。

 ああ、金貨一枚がもったいない!

 こんなことなら、ギルド食堂でステーキ定食を食べていれば……!


 そういえば、ギルドカードの期限もあった!

 特に申請してないから、えーっと……あと半年ぐらいで失効しちゃう!

 急がないと、まーたFランクからやり直しだわ!

 Dランクぐらい強くなればすぐっちゃすぐだけど、登録料をまた払うのがもったいない。

 細かい無駄が、無駄がドンドンと重なっていく……!

 おのれ、ルミーネめ!

 絶対に、絶対に許さないわよ……ッ!!


 久々にルミーネへの恨みを思い起こすと同時に、ちょっぴり情けなくなる。

 魔力を使える今なら分かるのだけど、あの女、私に依頼を出す時に魔法を使ってたっぽいのよね。

 あの時に感じた、冷気のような凍てつく感触。

 当時はちょっと部屋が冷えてるぐらいにしか思わなかったけれど、あれは間違いなく魔力だ。

 恐らくだけど、軽い幻惑魔法とかを使ってたんだと思う。

 魔力を使えない私は、そのことにまーったく気づかずにまんまと騙されたってわけだ。

 ああ、もう腹が立つッ!!

 あいつらめ、いつかぶちのめしてやるわッ!!!!


 ……もしかして、私に魔力がないってことまで知った上であの女は依頼を出して来たのか?

 確実に幻惑魔法を仕掛け、不自然な依頼から逃さないために。

 そう考えると、あの女はなかなか抜け目ないのかもしれない。

 高飛車でずいぶん高慢に振る舞っていたけれど、あれはもしかしたら自身の計算高さに気づかせないためのものだったのかも。

 何だか、油断ならない相手に思えてきたわね。


 そもそも、あの女が追いかけられる原因は何だったのだろう?

 パルドール家と言えば、王国有数の大貴族様だ。

 そこの御令嬢が、そう簡単に手配されるわけがない。

 それがわざわざ一芝居打ってまで逃げようとしていたんだから、よっぽどのことがあったはず。

 仕事を受けるときは「訳アリ」ってことで特に何も聞かされなかったけど、こんなことになったからには気になるわね。

 素行不良ぐらいじゃ、貴族が捕まるなんてことないし……。

 そもそも、そんなことを言い出したら国中の貴族が牢屋行きね。


 ま、こんなことは街に戻ってから考えればいいか。

 今はそれよりも、とっとと進化して人間らしい体を取り戻さないと。

 出来ることなら、ギルドカードが失効してしまう前に!

 もっと頑張れるなら、利用券の期限が切れる前に!

 そうと決まれば、今日の修業はここまでにしてご飯を食べよう。

 獲物は魔力多めの熊とかが良いかな!


 熊を狩りに行くことにした私は、剣を片手に洞窟を出ようとした。

 だがここで、ふとおかしなことに気づく。

 いつもは見えるはずの入口の光が、ちっとも見えてこないのだ。

 まさか、道に迷ったか?

 でもこの洞窟は一本道で、脇道なんてない。

 どれだけ方向音痴だろうが迷うはずもないし、私はむしろそういうのには強い方だ。

 ちゃーんと地図を読める女なのである。


 異変を感じて、心なしか歩調が速くなる。

 進むにつれて、わずかだけど風を感じ始めた。

 間違いなく出口は近くにある。

 でも何で、まったく明るくなって来ないんだろう?

 焦ってさらに歩を早めると、答えはすぐに分かった。


「…………カカカッ!?」


 周囲がすっかり、昏くなってしまっていた。

 夜だ。

 昼しかないと思っていた第二階層に、夜がやってきたのだ。

 あのデッカイ魔鉱石の塊はどうなった?

 もしかして、光り物が大好きなドラゴンにでも持っていかれちゃったか?

 慌てて空を見渡せば、紅に輝く月が見えた。

 光の色と強さは明らかに違うけれど、あの魔鉱石である。

 

 ……なるほど、消耗しちゃったのか!

 魔鉱石に何が起きたのか、私にはすぐ分かった。

 家のランプとかでも起こる現象なのだけど、あの手の魔鉱石を長ーいこと使い続けると消耗して一時的に働きが弱くなっちゃうのである。

 内部に蓄えられている魔力の圧――これを魔圧って言うらしい――が下がってしまうのが原因で、しばらくすると落ち着いて元に戻る。

 家で使う魔道具ぐらいなら、一時間も使わず放置すれば戻るかな?

 けど、あのサイズの魔鉱石となると……いくら周囲が魔力豊富とはいえ、一日や二日では復活しなさそうだ。


 けどまあ、私にとっては都合がいいかな。

 修業のためにあの洞窟まで行くのって、結構時間がかかるし。

 これなら家の近くの平地が使えるから、何かと便利だろう。

 人間だった頃はそんなに夜が好きだったわけでもないのに、スケルトンになるとこうも嬉しいとは。

 変なところで違いを実感するわねえ……。


 こうして、私の気分が少し良くなった時だった。


「ウオオオオオォンッ!!!!!!」


 遥か森の果てから、魂を凍てつかせるような遠吠えが聞こえて来た――。


最近ちょっと展開が止まっていましたが、また次回からガンガン行きます!

ご期待ください!

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