第二十七話 思わぬところで
ダンジョン第二階層には、夜がない。
お日様の代わりに光るでっかい魔鉱石の塊は、一日中ずーっと変わらぬ輝きを提供している。
最初のうちはその光を気持ちよく感じていたのだけど、一週間――私の腹時計だけど――もすると、どうにもうっとおしく感じて来た。
第一階層の暗がりは平気だったから、たぶんこの身体の本能なんだろう。
命にかかわるような状態ではないんだけど、頭が冴えないことこの上ない。
睡眠を四時間ぐらいしか取らなかった日の朝って感じだ。
「…………カカッ!!」
ああ、もうダメッ!!
ぼんやりして、魔力も練れやしない!
手にしていた木の棒を投げると、その場で寝っ転がる。
湖の中に落ちた棒が、シュバッと聞いたこともないような音を出した。
あの忌々しい太陽め……!
でーっかいトンカチでも用意して、カチ割りたくなってきた。
あともうちょっとで、魔法剣を習得できそうだというのに。
周りが明るすぎて落ち着かないことこの上ない。
暗がりが良いなら、おうちの中で練習すればいいじゃない。
そう思ったこともあったのだけど、危うく火事になりかけた。
まだまだ制御が不安定だから、魔法が暴走していきなり火花を吹いちゃったりするのよね。
私が火じゃ死なないことは身をもって実践したけれど、だからと言って焼けたいわけじゃない。
死なないからって、身体を焼かれるのはもう二度とごめんだ。
私にそういう変な趣味はない。
ないったらないッ!
……閑話休題。
森の中は薄暗くてだいぶマシだけれど、同じ理由から練習場所としては却下。
消去法的に、練習できる場所は湖畔にある日当たり抜群の平地しかない。
ここなら万が一の時にもすぐ消せて安全なんだけど、うーん……。
こうも日差しが厳しいと、他の場所を捜した方が良いかもしれない。
あちこち捜しまわれば、この階層にも一階層みたいな通路部分があったりして。
そうと決まれば、行ってみますか。
せっかくおうちを造ったんだし、徒歩圏内にそういう場所があると良いんだけど……。
剣を腰に下げて、今まで行ったことのない方角へと向かってみる。
今までおうちの建設と魔法剣の練習を優先していたので、結構行動範囲は狭かった。
小一時間も歩けば、すぐに行ったことのない場所へとたどり着く。
「スースーッ!」
しばらく歩いていると、そこだけ緑がこんもりと盛り上がった場所が見えて来た。
空を見上げれば、遥か彼方にある天井がちょっぴりえぐれている。
長年の間に、天井の一部が崩落したようだ。
その残骸の上にまでいつしか森が広がって、ちょっとした山のようになっているらしい。
ま、経緯はともかく山があると言うことは……その陰がある!
私は走り出すと、急いで山の裏側へと回り込む。
するとそこには――
「カカカッ!!」
予想した通り、陰だ!
しかも、斜面に沿って洞窟が開いている!
ラッキー、洞窟の中なら火事の心配はないし暗さもバッチリッ!!
練習するには最高の場所じゃない!
神様ありがとう、感謝するわ!
ナイスッと指を鳴らすと、慎重に洞窟の中へと足を踏み入れる。
こういう洞窟は、獣たちの住処になってることが多いからね。
一階層の洞窟に、巨大トカゲが住み着いていた例だってある。
安全が確保されるまでは、あくまでも冷静かつ慎重に。
ゆっくりゆっくりと、歩を進めていく。
しかし、洞窟には不思議なほどモンスターの気配はなかった。
ヒンヤリとした空気は清浄で、ダンジョンらしからぬ聖なるものすら感じる。
こりゃ、ただの洞窟ではなさそうね。
奥には何があるんだろう?
もしや、伝説の聖剣が眠っているとか?
急にお宝の気配がしてきたわねえ……ウヒャヒャッ!!
たまんないわ!
自然と足が軽くなる。
ほどなくして、私は洞窟の突き当りへとたどり着いた。
そこはちょっとした広場となっていて、地面に魔避けの魔法陣が刻まれている。
なるほど、清浄な気配はこいつのせいか。
でも、不思議と嫌な感じはしないわね。
それどころか、何か心惹かれるようなものすら感じてしまう。
モンスターと言っても、魂は悪の欠片もない清い乙女だからかしらね?
さすがは私、身体は骨になっても聖女ッ!
そのまま魔法陣の中心へ行くと、小さな石の柱が立っていた。
なんだろ、これ?
文字が書かれているようだけど、風化してしまってよくわからない。
というかこれ、物の本に載ってた古王国文字じゃない!
正体が気になるけど、これじゃあ素人には手も足も出ないわね。
覚えておいて、町に戻ったら学者にでも聞くしかないか。
「……カッ?」
夢中になって石柱を調べていると、足に何か当たった。
おお、果物だ!
石柱の裏側に当たる部分に、果物がどっさりと置かれていたのだ。
不思議に思って触ってみれば、しっかりとした適度な感触が返ってくる。
実はほとんど崩れていない。
まだかなり新しいようだ。
匂ってみれば、爽やかな甘い香りが鼻孔を抜ける。
この香り、精霊さんのとこの果物と同じっぽい。
でも、何でこれがここにあるんだろう?
あそこにある果物って、森で捜してみたけどなかなか見つからないレアものだったのよねー。
魔よけの魔法陣もあるし、モンスターがここへ来たとも考えられない。
うーん……まあいっか!
せっかくだし、食べてしまおう。
私は甘味に飢えているのだッ!!
「スースー!」
「こ、こらーッ!! 食べちゃいけないのですーッ!!」
「カカッ!?」
いきなり、光の球が体当たりを食らわせて来た。
もしかしなくても精霊さんだ。
なーんで、こんな場所に!
そりゃ、魔法陣の内側に果物なんて持ってくるのは、精霊さんぐらいしかいないだろうけどさ!
「カカカカッ!!」
「む、もしかして……この間のシースさんです? なんか赤いですし」
「カカッ!」
うんうんと、首を縦に振る私。
すると精霊さんは、カーッと身に纏う光を強めた。
いつぞやと同じく、念話の魔法をかけてくれたらしい。
やがて私の頭に、直接声が響いてくる。
「これで、お話しできるようになったのですよー!」
「サンキュッ! カカッとスースーだけじゃ、意思疎通できないわよ!」
「ははは。それで、何でシースさんはこんなところに?」
「ちょっと、落ち着く場所を探してね。ほら私、スケルトンでしょ? こういう洞窟が好きなのよ」
「なるほどー」
「それより、精霊さんの方こそ何でここに? まさか、しつこく私を追いかけて来たんじゃ……!」
精霊さんから距離を取ると、露骨に嫌な顔をする。
まさか、まーた「僕と契約して果樹園を守ってよ!」とかってお願いしに来たんだろうか?
狼王なんて物騒過ぎる奴とは、ぜーったいに関わり合いになりたくないのにッ!
頼まれたら、どうやって断ってやろうか?
上手いことやらないと、この子なかなかどうしてしつこそうだからなあ……。
……私が頭の中であれやこれやと考えていると、精霊さんは予想外のことを言う。
「ああ、ぼくがこの場所に居るのはですね。ここが、相棒さんのお墓だからなのですー」
「相棒?」
「そうなのですよー! 名前は……フェイル・テスラ! ものすっごく強い女の子だったのですよー!」
……なんてことよ、勇者じゃない!
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