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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第二章 紅くて速くて強いヤツ!
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第二十五話 拠点を作ろう!

 私は昔から、無理なものは無理だとはっきり言えるタイプだ。

 というより、自分で自分を誤魔化すとかそういう器用なことが出来ない。

 だから今回も精霊さんを「それはさすがに出来ないわよ!」と、軽くひっぱたいてその場を離れた。

 果樹園の果物食べちゃったこととか、結構後ろめたかったけどそれはそれ。

 いくら私でも、素の能力が十倍近くもある奴に挑めるかっつーの!

 エコーは魅力的な能力だけど、そもそもそういう無謀な戦いをしないための能力だと言うに。

 まるっきし、本末転倒じゃあないか!


「カカカッ!」


 河原をズンズンと下流に向かって歩く。

 まったく、えらいのに時間を取られてしまった。

 私としては、とっとと進化をしてこんな場所からおさらばしたいって言うのに。

 やっぱり、上手い話には気をつけなきゃね!


 そうしてしばらく歩いていくと、不意に視界が開けた。

 湖だ!

 青々とした水面が、遥か彼方まで続いている。

 相当の大きさで、歩いて周囲を回るなら半日ぐらいはかかりそうだ。

 こんなものまであるとは、ダンジョン凄いとしか言いようがない。

 ホントに、いったいどこの誰がこんなものを作ったんだか!


 ……しかし、私にとっては好都合かもしれないわね。

 湖の周囲なら見晴らしも良いし、船か何かを作っておけばいざって時に簡単に逃げ出せる。

 これだけの大きさなら、魚も結構いるだろう。

 拠点を設けるなら、さっきの河原よりもいいかもしれない。

 あの果樹園の果物は、惜しいんだけどね。

 まあ精霊さんの持ち物のようだし、森に出れば見つけられないこともないか。


「カカカカッ!」


 そうと決まれば、とりあえず家を作ろう!

 土地はあるから、まずは材料の確保ね。

 第一階層のことを考えると、最低でも一か月ぐらいはこの階層に滞在することになるかな。

 雨は降らないだろうけど、ある程度は丈夫なのを作らないといけないわね。

 モンスターに襲われたときに、少しは役に立ってくれないと困るし。

 となると、材料は木しかないか。

 釘とかは用意できないから、丸太を組んで作るのがよさそうね!


 森に入ると、適当な太さの木に思いっきり飛び蹴りを食らわせる。

 バサバサッと凄い音がして、枝や葉が揺れた。

 ……うーん、やっぱりダメか。

 筋力はそれなりについてきたと自負するけれど、いかんせん、重さが足りない。

 勢いよくぶつかっても、たかだか骨じゃね。


 さて、どうしたものか。

 剣は持っているから、これで切り倒そうと思えば出来るかもしれない。

 でも、剣は剣であって斧ではない。

 木を切るには根本的に不向きだし、もしかしたら途中で折れちゃうかもしれない。

 苦労してウォリアーから奪い取った品だから、大事にしたかった。

 となれば、ひたすらに根性で木を蹴り飛ばし続けるしかないか?

 何だか、伐採作業というよりもはや修行ね……。


 しょうがない、ちょっと危険かもしれないけど倒木を捜しに行こう。

 これだけ広くてモンスターの住んでいる森だ、倒れている木の一本や二本はあるはずだ。

 いつまでも、この森にビビっているわけにも行かないしね。

 この森――いえ、この階層に住むモンスターたちを薙ぎ倒して、私は強くなるんだッ!


 決意を胸に、森へと歩きだしてすぐのことだった。

 ブヒブヒと豚が鼻を鳴らすような音が、背後から聞こえる。

 振り向けば、そこにはずいぶんと立派に育ったクレイジーボアの姿があった。

 どこまでも突進してくることで有名な、猪型のモンスターである。

 確か、ランクはC!

 いきなり突進してくる上に、毛皮が分厚くってなかなか致命傷を与えられない厄介な奴だ。


「……カッ!」


 軽く歯ぎしりをするのと同時に、ボアの身体がすっ飛んできた。

 デカい割には速いッ!

 驚きながらも、私の身体はしっかりとボアのスピードに適応していた。

 突進を避けた瞬間、剣で切り付けたのだ。

 しかし――


「カカッ!」


 硬いッ!

 太い毛が針金みたいになってるじゃないッ!

 まずいわね、私の軽い攻撃じゃこいつを倒すのにどれだけかかることか。

 スケルトンの体力は無尽蔵だけど、ボアもたいがいタフな奴だ。

 一発当たれば終わりって状況を、そんなに続けられるとも思えない。

 こうなったら、ちょっと隙が出来ちゃうけど魔法だッ!


 近くの木の上に一時避難すると、そこからボアに向かって狙いを定める。

 するとボアは、私が魔法で狙っていることなどお構いなしに突っ込んできた。

 その動きはほぼ一直線で、実に読みやすい。

 ふ、そんないかにも脳筋って感じの動きをしてたら一発よ!


 ――ファイアーボールッ!!


 手のひらから、人間の頭ほどのサイズの炎が飛び出す。

 まさに毎日の鍛錬の成果!

 最初は火花ぐらいしか出せなかったのが、ここまででっかくなったのだ!

 威力も大きさに比例し、ゴブリンくらいならまとめて焼き殺せる。

 いけ、ファイアーボールッ!!

 このデカイノシシを焼き尽くすのよッ!


「ブルゥ!!」

「……カッ!?」


 放たれた炎は、ボアの額へと見事に命中した。

 しかし、すぐに消えてしまった上に軽い焦げ跡くらいしかつかない。

 うっそ、毛皮に耐火性能まであるわけ!?

 いくら勢い出てるから一瞬でかき消されるって言ってもさ、私の最大火力よ!?

 全く通用しないってどういうことよ、ねえ!


 あまりのことに動揺していると、ボアが木に衝突した。

 ドドーンッと落雷みたいな音がする。

 その直後、バリバリバリッと嫌な音を響かせながら幹が裂けた。

 どんだけパワーあんのよッ!!

 私は傾いていく木から、すぐさま隣の木へと飛び移る。

 身軽な骨の身体は、猿みたいな動きが出来るようだった。


「ブヒヒンッ!!」


 私が地面に落ちなかったことが気に入らなかったのか、ボアは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 そして前足で地面をたたくと、再度、突進の姿勢を取る。

 げ、また来るわけ!?

 あんなデッカイ木をへし折って、自分だって結構痛かっただろうに……あッ!

 こうやって木から木へと飛び移っていれば、あいついつまでも突進し続けてくるんじゃないの?

 そうなれば材木も確保できるし、あいつだって弱ってくるはず。

 なーんだ、一石二鳥じゃない!


 こうして数十分後。

 私は大量の材木とボアの死骸をえっちらおっちら引きずりながら、湖畔へと戻ったのだった――。


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