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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第二章 紅くて速くて強いヤツ!
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第二十三話 ダンジョン内の出会い

 ――まさか、こんなダンジョンの奥底に人間が居るの?


 そんなことあり得ないとすぐさま否定的な考えが頭をよぎるが、私に生活道具一式を残してくれた推定冒険者さんのこともある。

 AランクとかSランクとかになると、たいがい人間やめてるからね。

 食料もありそうだし、意外とここで生活してる人とかも居るのかも?

 私はとっさに岩陰へと身を隠すと、どんな奴が現れるのかこっそり様子を伺った。

 すると木々の間から、ほわほわと光の球のようなものが現れる。


 ――あれはもしかして、精霊!?


 精霊って言うのは、ある種のエネルギー生命体である。

 どうやって誕生するのかは未だによくわかっていないけれど、自然界に漂う清浄な魔力に意志が芽生えることで生まれると言われている。

 木とか岩とか、そういった自然物に蓄えられた魔力がある日突然、自我を持つらしい。

 ただし、相当環境のいい場所でないと産まれないから目撃例はかなーりまれだ。

 ある日、近所の木から精霊が産まれるとかそういうことは起こらない。

 出会うことが難しいうえに、契約すれば強力な加護や祝福を貰えるので、冒険者の間では「幸運の象徴」とも呼ばれている。


 まさにラッキー!

 こんなところで精霊と出会えるなんて、私ってばツイてる!

 精霊の加護があれば、戦闘力アップは間違いなしだ。

 さてさて、どんな加護を貰おうかな?

 加護次第では、いきなり人間に戻れたりしちゃったりして。

 うーん、まあでもさすがにそれは難しいかな。

 とりあえず、魔力大幅アップは基本として――


「いったい誰がこんなことを……! せっかく、苦労して育てたのにーッ!」


 ……むむ。

 もしかしてこの精霊、私が果物を持ってきちゃったことにめちゃくちゃ悲しんでる?

 さっきは調子に乗って、結構取っちゃったからなあ。

 精霊は自然を愛するって言うし、ここは素直に詫びを入れた方が良いか?

 でも、犯人だってことを認めたら加護はもらえなさそう。

 こうなったら、証拠を隠滅しちゃうしかないかしらね!

 ちょっと惜しいけれど、加護のため……ええいッ!


 目の前に積まれた果実の山を、そうっと川に流してしまう。

 これで完璧だ。

 あとは通りすがりのスケルトンさんを装って、精霊さんの前に現れればいい。

 コミュニケーションが取れるかちょっぴり不安だけど、精霊は念話が出来たはずだ。

 こうしてしっかりと思考できてる以上、スケルトンの私とだって――


「あれ、こんなところにスケルトンが居るのですー!」

「カカッ!?」


 びっくりした!

 いつの間にか、精霊さんが私の後ろに居た。

 これは、ちょっとばかりまずいことになったかもしれない。

 とっさに、目の前を流れて行こうとしていた果実を回収する。

 これはさ、冷やそうとして失敗したのよ、うん。

 冷やした方が美味しいかなーっと思って……。

 果実を取ったこと自体は事実なんだけど、それはお腹が減ってたからだし……ね?


 ――言い訳よ、何とか伝わって!


 全身全霊でもって、ジェスチャーを送る。

 すると精霊さんの光がにわかに強まった。

 まぶしッ!

 放たれた閃光に、思わず目のあたりを手で覆うのもつかの間。

 頭の中に、音が響いてくる。

 どうやら、精霊さんが念話を使い始めたらしい。


「聞こえますー?」

「ええ、聞こえるわよ」

「あ、返事が返ってきた! やっぱり、ただのスケルトンじゃなかったんですねー」

「あったり前よ! 私を誰だと思っているのよ!」

「誰だと思っているって、そんなこと言われても困るのですよー!」


 何ともはや、情けない感じの返答だ。

 語尾も間延びしてるし……というか、さっき聞いたのと違って声が女の子っぽい。


「あ、それは精霊に性別ってものがないからですよー。女の子にも男の子にもなれるのですー」

「なるほど、便利ね。レディースランチも食べられるし、男限定のガッツリ定食も食べられるってわけ!」

「……何だか、発想が凄く小さいのですー!! もっと神秘を敬ってくださいー!」

「そこは結構重要なとこよ。ギルド食堂のレディースとガッツリを両方制覇するのは、私の長年の夢なんだから!」

「……はあ、そうなのですかー。しかしスケルトンさん、あなた全然スケルトンっぽくありませんね? こんなところに居るのも変ですし、話を聞いている限りだと人間っぽすぎる気がするのですー」


 何を言っているんだか。

 私はふうっとため息をつくと、肩をすくめて見せた。

 元人間なんだから、人間っぽいのなんて当たり前じゃない。

 はっきり記憶が残っているのは、相当まれだとは思うけどさ。


「むむ、記憶が残っているのですかー? スケルトンの発生原理的に、それはちょっとありえないはずなのですが……」

「え、どういうこと?」

「スケルトンの発生原理は、僕たち精霊とよく似ているのですー。そこには亡くなった人の魂とかまったく関係ないので、記憶を持っているなんてありえないのですよー」

「そうなの? でも私、現に記憶を持ってるしね。あんたの勘違いなんじゃない? それか、私が天才過ぎるスーパースケルトンだとか」

「うーん、そんなことはないと思うのですが……」

「ま、いずれにしても私は私よ。どんな経緯で記憶を持ってるのかとかは、全然関係ないわ。それよりも、これから先のことよ! 進化を繰り返して何とか肉のある体に戻りたいんだけど、協力してもらえない? スケルトンじゃ街にも行けないし、不便でしょうがないのよ! だからさ!」


 ――契約とか、契約とか、契約とかして!

 直接念は送らないけれど、頭の中でイメージしまくる。

 すると精霊さんは私の言わんとする――実際には念を送るんだけど――ことを察したのか、少しくたびれたような思念を送ってきた。


「めちゃくちゃ急ですが、分かったのですよー! 契約してもいいのです。何だかひねくれてますけど、根は悪そうな人ではないですし」

「おっしゃァッ!! 苦労した甲斐があったわ! 果物のことがばれそうになった時は、ホントにどうしたものかと思ったけど……」

「果物のこと? なんですかー、それは」

「ああ、こっちの話よ! それよりも、するときめたらとっとと契約の話を進めましょ! えーっと、私が何を出してどんな加護を貰えるのかしら? ええ!」


 必死こいて詰め寄ると、精霊さんはなんだか困ったような思念を送ってきた。

 そして、こう話を切り出す。


「……なんだかすごく期待されているようなのですが、正直言って僕の加護はあんまり強くはないのですよー」

「そこまで強力なのは、私も求めてないわ。ちょっとでいいのよ、ちょっとで!」

「…………実は僕、ちゃんと属性を持つ前にこの迷宮に飛ばされちゃったのです。なので、加護を与えても特定の魔法が強くなるとかそういう効果はないのですよー。あと、力も弱いので能力アップとかも見込めないのですー」


 ……ここにきて、一気にハードルを下げて来た。

 こいつ……もしかして、ほとんど力のない精霊なのか?

 性別の感じがコロコロとして安定しないのも、単に生まれたてだからって気もする。

 精霊の加護って一柱からしかもらえないって言うし、こいつから貰うのちょっと不安になってきたわね。

 生涯に一度のチャンスなら、もっとすんごい精霊から貰いたい。


「じゃあいいわ。別の精霊を捜してみるから。時間を掛けさせて悪かったわね、じゃ!」

「あ、待ってほしいのです! 僕と契約をする利点がないわけではないのですよー!!」

「何よ! 契約してほしいのかしてほしくないのか、はっきりしなさい! 私ねえ、まどろっこしいのは苦手なのよッ!」

「は、はい! 契約はぜひしてほしいのですよ! 仲間の精霊の中で、僕だけ契約してもらえなかったので……」

「それなら、契約した時の利点を言いなさい! 三十秒以内で!」

「え、ええ!? えーっとそうですね、僕は力は弱いのですけど魔力探知に長けているのですよ。相手のモンスターの魔力量を割り出したり出来るのです。契約して加護を与えれば、スケルトンさんにもそれが出来るようになるはずです!」


 お、結構いい利点があるじゃない!

 魔力探知が出来るってのはいいわね。

 でも、それぐらい修行すればできるかも。

 即決するにはちょっと弱いかなー。

 そんなことを思っていると、精霊さんが「実演するからこっちを見て!」と念を送ってくる。

 どれどれと振り向いてみると、何とも大人しそうな草食獣が水を飲んでいた。


「しっかりと見ていてください!」

「ええ!」

「そりゃ、出ました! 『28』です!」


 どうだと言わんばかりに、誇らしげな思念を送ってくる精霊さん。

 草食獣の脇には、確かに『28』という数字が浮いていた。

 まさかこいつ――


「あんた、相手の魔力量を数値化できるわけ!?」


 なんという便利能力ッ!

 驚愕した私の声にならない叫びが、そこらに響いたのだった――!


まさかの便利能力です。

個人的に、鑑定は最強クラスのチート能力だと思っています。

精霊さんとシースは今後どうなるのか、ご期待ください!

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