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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第二章 紅くて速くて強いヤツ!
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第十九話 下層を目指して

 ――そろそろ、別の食べ物を食べたい。

 進化を遂げてから数日後、順風満帆だった私のもとにとうとう恐れていた事態がやってきた。

 あれだけ美味しく感じていた芋虫の味に、とうとう飽きちゃったのだ。

 まあ、基本は朝昼晩と芋虫の焼き肉だからね。

 たまに趣向を変えてゴブリンを食べたりしたけど、いくらなんでも飽きて当然か。


 ちょうど、強くなって一階層が物足りなくなってきていた頃でもある。

 スケルトン・ヴァーミリオンに進化した私は、ここらじゃ完全に無敵。

 あれだけビビっていた巨大トカゲにも、やり方次第では余裕で勝てると思う。

 洞窟の家主として、居候の私を他のモンスターから守ってくれているありがたい存在なので、トカゲさんは食べないけどね。


 こうなったら仕方がない。

 このままここでのんびりしていたんじゃ、いつ人間らしい体を取り戻せるかわからないし。

 新たな敵を求めて、第二階層へ出発だッ!!

 ……って、肝心の階段の場所を私は知らないんだけどね。

 毎日の生活に必死で、今まであんまり探索を進めてこなかったからなあ。

 最初に丸一日かけて隠し部屋の周辺を探ったけど、それっきりだ。

 今なら余裕もあるし、ここはひとつ冒険者らしくダンジョン探索と行きますか!


 まずは、大空洞の探索から始めよう。

 このだだっ広ーい空間をどうにかしないことには、一階層の探索はままならない。

 恐らくだけど、通路部分は後から出入りのために付け足したような感じがするし。

 メインじゃなさそうなのよね。

 私は荷物を手に洞窟を出ると、ひとまず今まで自分が居た方角とは逆の方向へと歩いてみる。

 ずんずんと、とにかく奥へ。

 しかし大空洞の端へは、丸一日歩き続けても辿り付けなかった。


 ……思った以上に広い。

 スケルトンの体力は、なんてったって無尽蔵だ。

 人間なら休憩が必要なところをずーっと歩き続けたというのに、果てがない。

 このダンジョン、私が思っていたよりも遥かに大物かもしれないわね。

 何だか、呆れを通り越してちょっと怖くなってきた。


 当たり前のことだけど、ダンジョンには製作者が居る。

 たまーに自然の洞窟にモンスターが住み着いてダンジョンのようになっていたりもするけど、ここの場合は明らかに人工だ。

 となれば、これだけの物を作った何者かが存在するわけで。

 一体どんな凄い奴なら、こんなとんでもないダンジョンを作れるのだろう?

 少なくとも、人間には無理だ。

 魔法を使ってダンジョンを作る方法もあるけど、こんな規模の物を作ったら国がいくつ傾くことやら。

 

 ……まさか、魔王とか?

 魔王戦争が始まる直前、魔王が一番大切な秘宝をダンジョンの奥底に封印したと言う噂がある。

 その秘宝の在処を求めて、冒険者はもちろん国までもが躍起になったが、秘宝どころかそれを封じたダンジョンすら見つからなかったという話だ。

 このダンジョン、今まで未発見だったみたいだし……まさかね。

 伝説の魔王が造ったと言うなら、この規模もうなずけるけどさ。

 そんなとんでもないダンジョンにそう簡単にたどり着けるとも思えないし、そもそも魔王の存在自体が胡散臭い。

 おとぎ話だと「その一撃は山をも砕く」とか「大陸の上半分がえぐれているのは魔王の仕業」とか言われてるけど、そんなの居たら人間なんて滅んでるわよ!


 ……ま、そんなこと気にしても意味ないか。

 誰が造ったって、ダンジョンはダンジョンだし。

 それよりも重要なのは、二階へと続く階段である。

 上りか下りかは分かんないけど、これを見つけないことには始まらない。

 私はとっとと進化したいのよ!

 新しいお肉をたくさん食べて!!


 野宿もそこそこに、元気よく再出発。

 さらにそこから半日ほど歩いたところで、それは見えて来た。

 …………うん、確かに私は階段を求めては居たけどさ。

 この形態は、流石に予想外というか……。

 やっぱり、このダンジョンを造ったのは魔王だ。

 魔王でも無きゃ、たかだか階層間の移動にこんなとんでもないものを作らないと思う。

 だって、ねえ……。


 周囲がどれだけあるのか分からないぐらい巨大な穴。

 小さな村ぐらいなら丸ごと入っちゃいそうなその縁に、白い階段が備え付けられていた。

 その幅は、華奢で肩幅の狭い私でなんとか身を縮めずに歩けるほど。

 そんな階段が、遥か地の底を目指して延々と螺旋を描いている。

 どんだけ段数あるんだろ。

 下手すりゃ、一万段ぐらいあるかもしれないわね……。

 ざっと見る限り手すりなんて親切なものはもちろんないし、休憩できそうなところもない。

 

 こわごわと覗き込んでみれば、下から風が吹き上げてくる。

 もちろんというべきか、穴の底は見えなかった。

 さらに下の方では、鳥の群れがギャーギャーと鳴き声を上げて飛んでいる。

 周囲のものと比較するに、それらの鳥はどう見ても人間よりもデカかった。

 明らかにモンスターだ。

 階段を下りていくと、いずれこいつらが襲い掛かってくるという趣向だろう。


 ……何が何でも、下にはいかせないってか?

 製作者の悪意がビシバシと感じられる。

 でもこんなの、馬鹿正直に攻略する必要もないわよね。

 えーっと、一番近いところに居る鳥は……あいつかッ!

 私はある鳥に狙いを定めると、ツタで造った投げ縄をぶつけたのだった――。

ドンドンと奥へ突き進みます。

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