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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
序章 大ダンジョンのスケルトン
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第十六話 急転直下!

 ふう……。

 我ながら、お手製ピッケル一本で高く上ったものだわ。

 すっかり小さく見える地上の岩を見ながら、思わずため息を漏らす。

 まさか、スケルトンの身体で壁登りをすることになるなんてね。

 人生何が起こるかわからないもんだ。

 ま、スケルトンだからこそ登っているともいえるけどね。

 壁に突き刺した骨製のピッケル一本で体重を支えるなんて、身軽な骨じゃなきゃできない芸当だ。


 お、集落が見えて来た。

 一番手前の壁際に、ロードが居るであろう屋敷も見える。

 たかだかゴブリンの癖に、悪くない家にすんじゃって。

 こちとら、住処を奪われて洞窟暮らしだってのに。

 その家、すぐに奪って別荘にしてやるわ!


 よいしょ、どっこいしょ!

 打ち込んだピッケルで体重を支えながら、わずかなくぼみに手足を掛けて進む。

 ゆっくりゆっくりと。

 岩壁はかなり丈夫だけど、それでも崩れる個所はある。

 そういうところに体重をかけてしまわないよう、細心の注意を払いながら少しずつ。


 次第に、ゴブリンの集落が大きくなってきた。

 間近で見ると、なかなかの規模だ。

 恐らく、数百はくだらない数のゴブリンが住んでいることだろう。

 もっとも、その大半は私を捜しに出払ってしまっているようで、姿はまばらだ。


 集落の端に、小さな見張り台があった。

 一匹のゴブリンが、そこから熱心に周囲を見渡している。

 これは予想外だ、見つかってしまうかも……!

 慌てて身を縮めるが、ゴブリンは特に何の反応も示さなかった。

 どうやら大空洞の中心ばかり見ていて、壁には一切の注意を払っていないようだ。


 実にツイている。

 や、ここは私の作戦勝ちかな。

 まさか、スケルトンが壁を登って急襲を仕掛けるなんて、ゴブリンどもには思いもよらないだろう。

 人間だってそうは考えないに違いない。

 我ながらいい案を思いついたものだ、やっぱり私ってば天才ッ!

 町に戻ったら、軍師にでも転職しようかな?


 集落の直上を目指して、壁を横移動すること数分。

 あともうちょっとというところで、私の行く手を灰色の群れが遮った。

 コウモリである。

 天井に張り付いたコウモリが、あろうことか壁の上方まではみ出してしまっている。

 チッ、めんどくさいわね。

 あんまり下の方を通ると、ゴブリンにばれそうだから嫌なんだけど……。

 コウモリの群れの、ほんの少しだけ下を通り抜けようとする。


 だがここで、あろうことかコウモリが私にまとわりつき始めた。

 こら、あっちいけッ!

 何でくっ付いてくんのよ、私なんて骨しかないわよ!

 片手で必死に追い払おうとするものの、まとわりつくその数は次第に多くなっていく。

 キキキキッと、コウモリの鳴き声が大きく響く。

 岩で出来た壁と天井は、音を良く反響してしまうのだ。


「カカカッ!!」


 集落のゴブリンたちは、まだこちらの変化には気づいていないようだ。

 でも、このままじゃ気づかれるのも時間の問題か。

 ええい、こうなったら覚悟を決めるしかないッ!!

 女は度胸だッ!!


 遥か眼下に聳える、ロードの屋敷。

 その茅葺き屋根に狙いを定めて、思いっ切り壁を蹴とばす。

 とっべェッ!!!!

 直後、風を切って唸る骨の身体。

 見る見るうちに大きくなっていく地面。

 とっさに体中の魔力を激しく循環させ、魔闘法を発動する。

 青いオーラが沸き上がり、瞬時に全身を覆った。


「グググッ!!!!」


 屋根に体が直撃する。

 柔らかいはずの藁が、さながら針金のように体を刺した。

 ちょっとでも気を抜けば、全身バラバラになりそうだ。

 けど、魔力で強化された体は衝撃に何とか耐え抜く。

 そのまま屋根を突き抜けた私は、ストンッと床へ落ちた。


「……カカッ!」


 いたたたたッ!

 身が重い人間だったら、確実に死んでたわね。

 こういう時だけは、骨の身体になって良かったと思う。

 さあて、とっととロードを捜して討伐しなきゃ。

 今の騒動で混乱しているうちがチャンスだ。


 そう思って家の中を歩くと、すぐにそいつは見つかった。

 ああ、生臭い……。

 どうやら、今の今まで繁殖行為に『文字通り』精を出していたらしい。

 傍らにやたらひょろっとしたゴブリンたち――たぶん雌だろう――を侍らせたそいつは、ゴブリンの象徴ともいえる腰蓑をつけていなかった。

 ゾウの鼻みたいな無駄にデカいものが、デロンッとはみ出している。

 まったく、汚いったらありゃしない!


「カカカッ!」


 大百科先生の言っていた通り、ロードはお楽しみ中だったらしい。

 完全にこちらの作戦通りだ。

 今のこいつは何も武器を持っていないし、最大の弱点が露わとなってしまっている。

 ま、苦労して手に入れた剣であれを切るのは御免こうむりたいけどさ。


 ただ一つ気になる点があるとすれば……予想していたよりも体がデカかった。

 ざっと見た感じだと、普通のゴブリンの五倍くらいはありそうだ。

 ゴブリンロードって、ここまで体が大きかったっけ?

 見た目だけなら、オーガともいい勝負ができそうなほどだ。

 あとついでに、頭に冠みたいなものを被っている。

 金色に光るそれは、もしかしなくても王冠のようだ。


 こいつはまさか…………ね。

 王冠を被るゴブリンに、一種だけ心当たりがあった。

 ゴブリンキング。

 ゴブリン種の最上位で、ロードよりも一回りは強い奴。

 ここまで進化することはまれで、目撃例なんてほとんどないけれど……うん。

 こいつはキングだ。

 この圧倒的なまでの貫禄は、間違いなく王のものだろう。

 ゴブリンどもの活動が最近やたらと活発になっていたのも、恐らくはこいつのせいに違いない。


 でも、ここまで来ちゃったら後には引けない。

 剣を正眼に構えると、足を開いて切り込める体勢を作る。

 そして――


「カカカカカカッ!!!!」


 私の全身全霊を込めた一撃が、放たれた――!


次回はシースVSキングです!

ご期待ください!

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