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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
序章 大ダンジョンのスケルトン
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第十一話 魔石

 魔石というのは、モンスター体内の魔力が集まってできた結晶である。

 大地に埋まっている魔鉱石とは違い、それなりに強いモンスターしか持っていないため、Dランクだった私はまだ見たことが無かった。

 これを見つけることは冒険者にとって一人前の証であり、最下級のものでも金貨数枚の値打ちがある。

 魔力の塊であるため、有効な利用法がいくらでもあるのだ。

 それだけでなく、その美しい姿はちょっとした宝石としての価値もある。


「スッスー!」


 小指の先ほどの紅の石。

 その光は蠱惑的で、内側で炎が燃えているかのようだった。

 結構強い奴だとは思ったけど、まさか魔石が手に入るなんてね!

 武器も手に入ったし、まさに絶好調ッ!

 向かうところに敵は無しッ!

 芋虫を始めて食べた時にも匹敵する喜びだわッ!!

 ……例えに芋虫が出て来るのが、ちょっと切ないかも。


 しかし、この魔石をどうしよっかなー。

 持っていてもいいけど、それだけじゃもったいない気もする。

 冒険者だったのなら即座に換金して装備の買い替えでもやるところだけど、私は骨だし。

 アクセサリとかにしても良いのだけど、こんな場所でオシャレしたってね。

 やっぱああいうのは、お金持ちのイケメンが居る所に限るでしょ!


 けどそうなってくると、せっかくの魔石が宝の持ち腐れになってしまうわけで。

 やっぱり、それなりに進化して町に行くまで取っておくべきかな。

 うーん、活用しないともったいない気も……。

 あ、そうだ!

 魔力の塊なんだから、こいつも食べられるんじゃないかな!

 おうちに戻ったら、早速試してみよう。


 マイホーム――もとい隠し部屋に戻ると、すぐに入口を塞いで魔石を口に含んだ。

 あまッ!

 飴みたいな味だ!

 予想に反した魔石の味に、思わず笑みが漏れる。

 この美味しさは、この身体がスケルトンだからだろうか?

 それとも、人間が食べても美味しいんだろうか?

 ちょっと疑問だけど、まあいっか。

 とにかく美味しい、半端なく旨い!


 そのままごっくんと魔石を飲み干す。

 喉に引っかかることなく通過した魔石は、即座に魔力へと分解されて全身に行き渡った。

 にわかに体全体が熱くなる。

 魔力を帯びた骨が、力強く光った。

 これまでにも似たようなことはあったが、今回は別格だ。

 あまりの熱に、骨の身体が渇いていくような錯覚すら覚える。


「カカッ……!」


 全身をばたつかせて、その場で悶える。

 もしかして、甘くて美味しい味は罠で食べちゃいけないものだったか!?

 全身を走る異様な感覚に、そう思わずにはいられない。

 熱い大蛇が、体の中でのたうち回っているかのようだ。


 ――ええい、変なもの食べるんじゃなかったッ!!


 盛大に後悔しながら壁際に近づくと、しみ出している地下水を口に含んで気休めにする。

 あとはひたすらに我慢、我慢だ!

 頑張れシース・アルバラン、明けない夜はないのだ。

 この痛みだって、そのうち消えてなくなるはず……ッ!


「……スースー」


 全身に力を込めて、耐えること小一時間。

 とうとう、身体の底から沸き上がる熱が収まった。

 ……ふーふー!

 ほんとに、全身の骨が燃えて焼け死ぬかと思った!

 こちとら何にも悪いことしてないのに、地獄でも落されたのかと思ったわよッ!!

 美人薄命とは言うけれど、どうして私はこうツイてないのだろう。

 思えば、魔法の才能がないことから始まって……あの時師匠から……。


 ――閑話休題、愚痴はこれぐらいにしよう。

 ああだこうだと騒いだところで何も始まりやしない。

 重要なのはこれからのこと、身体に不調がないかを確認しなくては。

 よろよろと起き上がると、肩を軽く回す。


「スッスッ!」


 いっちッにーッさんしーッ!!

 背筋を大きく反らしてーッ!!

 ……よし、快調だ!

 今のところ、運動機能とかには問題がない。

 意識もクリア、正常だ。

 ちょっと様子はおかしかったけれど、いつものようにパワーアップできたってことなんだろうか?

 あれだけ激しかったんだし、もしかしたら超凄い強化がなされたんじゃ――!

 試しに、床を思いっきり殴ってみる。


「…………ッ!」


 いったァッ!!

 手が、手がァッ!

 ふーふー…………。

 ああ、痛かった。

 何よこれ、ほとんど変わってないじゃない!

 期待して損した、寝るッ!!


 私は近くにあった毛布をひっかぶると、今日のところは休むことにした。

 瞼を閉じる代わりに、眼のあたりを布で塞いで横になる。

 すると、奇妙なことに視界を塞いだというのになぜか青いものが見えた。

 青い霧のようなものが、黒い世界をゆらゆらと漂っている。

 ……なんか気持ち悪いわね。

 たまらず布を外すと、周囲を見渡してみる。

 すると奇妙な青い霧の発生源は、何と私の自身の身体であった。

 

「カハッ!?」


 き、気持ち悪ぅ!

 なんなのこれ、汗でも蒸発してるの?

 身体からこんなものが湧きだしてくるなんて、いよいよおかしくなっちゃったのかな。

 スケルトンになっている時点で、おかしいなんてレベルじゃない気もするけどさ。


 えいッ!

 そりゃッ!

 体を動かして振り払おうとするけれど、全くダメ。

 むしろ、身体を動かせば動かすほどに湧き上がる量が増えていく。

 いったい何なんだろ、まさかホントに汗か?

 スケルトンの汗は揮発性で、色でもついてるっていうの?

 まっさかねえ、魔力でもあるまいし。

 ……魔力?


「カッ!?」


 そうだ、これきっと魔力なのよ!

こんなに濃密な奴は初めてだけど、そうに違いない!

 そうと分かれば、試してみなきゃね。

 えーっと、一番基本的な魔法は確か……ファイアか。

 イメージは、指先に魔力を集中させて「ポンッ」だったっけ。

 とにかく集中、集中っと……


 指先に向かって、次第に意識を高めていく。

 全身を覆う青い靄が、徐々に指に向かって収束していった。

 良い調子だ!

 やがて青い光の球となった魔力は、その場で弾けて――


 ――パスッ!


 小さく弱弱しいが、確かに火の玉が飛び出したのであった。


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