49話
「では少しクーさんと話をしてまいります。先に宿へ帰っていてくださいますか?」
長話を終えて、ギルドを出た。
外で待っていたアレクが、入れ違うように、ギルド内部に入っていく。
かなり長い話をしたはずだが、ずっと待っていたのだろうか。
夜は、深夜に移り変わっている。
もうそろそろ、夜明けも近いだろう。
ホーは言われた通りに『銀の狐亭』を目指す。
あたりに人はいない。
等間隔に明かりがあるので道が見えないことはなかった。
でも、今のホーならば真っ暗闇でもだいたいのものの気配を感じることができる。
――たとえば。
暗闇。
路地裏に潜み、こちらをうかがう、複数人の息づかいとか。
ホーは足を止める。
無気味だ。ずっとつきまとってきている集団がいる。
こういう追いかけっこみたいなのは性に合わない。
だから、呼びかけることにした。
「おい、こそこそあたしの後をつけてきてる連中、今なら怒らねーから出てこい」
すると。
暗闇から、ぞろぞろと、男たちが出てくる。
ホーは男たちをにらみつけた。
……その中に、見覚えのある人間の男を見つける。
金貸しだ。
なるほど、痛めつけた金貸しが、仲間を連れて来たのかとホーは納得する。
また痛めつけてやるしかないのか、とホーはため息をついた。
十人以上の集団に囲まれているのに、まったく負ける気がしない。
たぶん修行の成果だろうと考えられた。
男たちは、無言で包囲の輪を狭めてくる。
ホーは髪の毛をざわつかせる。
しかし――
急に。
男たちの動きが止まった。
ホーは不審な目で周囲を見回す。
すると。
――真横。
ホーのすぐ隣に。
いつのまにか――
「宿まで放置していただければ、妻が対応したんですけれどね」
アレクが、いた。




