神器
『 "この男は、なにを言っているのだろうか。"』
全知全能とまで言われ、概念上の存在として崇め奉られた神に対して"祈る側に堕ちよ"と、この男は言ったのだ。
なおも続ける。
「今のお前はな、もう神なんかじゃねぇわ。こんな奴に祈りたくねぇし、ぶっちゃけ頼りねぇし、俺を呼んだのもアレだろ?「わたしぃ〜魔王でぇーでん倒せなぁいのどぅえ〜、他の世界のめっちゃんこ強い奴にやらせればいいじゃ〜ぁん。」とか軽い気持ちで俺のこと呼んだろ?」
顔を歪める、どうやら図星をつかれたらしい。尚も秀疾の態度は変わらない。
「お前、あっちの世界での俺を見てないだろ?」
とっても憎たらしい顔で膝をついる神を、見下した。
「俺、そんなにお人好しに見える?」
聞かなくてもわかった 、きっと神はこう思ったのだろう。
『"ええ、全く、その通りでございます。"』と。
そして 、覇気のない睨みを効かせる神を潰しにかかった。
「この俺に、ボランティアで世界を救ってくださいだぁ?そんな虫のいい話があってたまるかよw助けて欲しいならぁ、俺の要求に全て『はい』または『承知いたしました、ご主人様』だ。よく覚えとけ!」
餓鬼のようなその姿は憎たらしいだけではない、彼にはまだ考えがある。ミリィはそう思った。
「さて、どーすんよ?」
苦悶の表情を浮かべる神にはもはや威厳の欠片らも感じられなかった。途切れそなプライドの糸を切れさせまいとして遂に乗せられてしまう。
「"わかった。だが、我と勝負し勝ったらの話としようではないか。もし勝てたなら貴様の命令をなんでも聞いてやろう。"」
それはもう充ち溢れる自信をまとって放った一言だったが、神は気づいていないようだ。それは悪手でもない、ただの、
『詰みの一手』である。
秀疾はまた、不敵に笑って見せた。
「ほう、いいだろう。お前のその会心の一手は吉と出るか凶と出るか、ぶっちゃけどちらでもいいが、一つ決まったことがある。」
それはもう決定事項であって、過ぎ去った事実であるかのように当然かの如く告げる。
「悪いな、この勝負、俺の勝ちだ。神としてその罪、贖ってもらうぜ。」
仕組まれた戦いの火蓋はこの時にはもう燃え尽きていたのかもしれない。
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「"勝負はそちらの世界での抜刀術である、『居合術』をベースとしたゲーム形式とする。"」
「ほう、居合か。しかしなんでまた居合なんかを?」
するとおもむろに前に手をかざした。
「"汝、我を神と認めし器よ。我の敵を討ち滅ぼし我を守る剣となり、我の神器へと改変させたまへ。"」
強烈な閃光と強風が神を包み、光の中にある何かを掴み取った。
「"Remodelink"」
光の中から一振りの日本刀が青い閃光をまとって抜き取られた。
「"これが我の神器『蒼剣 カミウチ』、神をも屠る剣であり、我を神と認めし従者でもある。"」
蒼い焔に包まれたその刀身はとても凛々しく、気高いものだった。