悪役勇者の復讐 前編
悪役というのは、おとぎ話でもよくあるように最後はギャフンと言わされるものだ。それが正しかろうと、正しくなかろうとそうなっている。そう決まっている。だから、私は選んだ。
一歩ずつ、前に出る。そうしながら、回想する。
人の嘲るような 視線
漏れ聞こえる 嘲笑
殺せ殺せと 喚く人々
優越感劣等感嫌悪憎悪憎しみ絶望恐怖怒り興奮殺意嫉妬軽蔑怨み苦しみ残悪感諦念……………
その全てが私に向けられている。
ああ。
なんて愚かな人達。
さしずめ、私が殺されてハッピーエンドというものなのかな?
くすり、と口角を上げる。
「何がおかしい、この悪女め。」
そばにいた兵士が尋ねる。おやおや、震えてしまって。可哀想に。
「何でもないよ。ただ‥‥面白い、と。」
私が殺されて、全て終わりと思っているところが。
アア、ドウシテコンナコトニナッテシマッタノダロウカ
アア、アイツラノセイダ
アア、ワタシガイッタイナニヲシタノダロウカ
アア、アア、アア、アア、アア、ア、アァアアアアァァァアア
どうして
話は数年前まで遡る。
その日、私はいつものように買い物に行っていた。
ちなみに、その時の私は人より少々太り気味だったが、美味しいものが悪いんだ!!という謎の開き直りによってダイエットを諦めていた。
…お母さんによって痩せろと言われていたが。
そんな平和だった生活。とてもとても、幸せだった。
そんな時に、私は召喚された。光を湛えたそれに。いきなり。
そして目が覚めたら、この国にいた。
サンクラウド国、と言う名のこの国に。
光が消えて見えたのは、人。
どう見ても日本人ではありえない色彩を持っていた。
そして言われた。
勇者になれ
は?と思った。いきなり人のことを拉致しといてそれ?
ふざけるな、家に返せ。
喚いて、暴れた。
だけど無理だった。所詮か弱い少女で平和ボケした世界から来ただった私は、打たれ、すぐそばの騎士のような格好をした人に剣を向けられるだけで、暴れることが出来なくなった。
怖かった。すぐそばにあった《死》が。
おとなしくなった私に、いやらしく口を歪めた人が言った。
お前に拒否出来ると思っているのか?この奴隷ごときが
そして私の抵抗もかなわず、私には剣が渡された。
持った瞬間に、それは輝いて私の手に収まった。
それを床に叩き付けようとした瞬間、激痛が走った。
ぼやける視界の中。
私は確かに、嘲りの声を聞いた。
それからは地獄だった。勇者だからという事で剣の修行。というよりはリンチに近いこと。知らない、という事で逃げることは許されず、腕がおれ、足がおれ、肋骨がおれ、腱がめちゃくちゃになり、肉がはみ出、骨が露出し、ご飯の量だって少なくて、いつも胃液ばかり吐いていた。
それでも続行された。不思議な光で癒されても、精神的なものが癒されない。苦しい、辛いと言う言葉は、無視された。
それでも、続けるしかなかった。帰れる方法を知っていたのはこの国だけ。1ヶ月もすれば、誰にも負けないくらいになった。
魔法も、習わされた。何回かは実験体としてされた。
地獄、地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄地獄、地獄
最後は、もう助けてと言う言葉すら出なかった。
3ヶ月して、魔王討伐が言い渡された。
その時には、私はもう壊れていたのだろう。笑顔でわかりましたと答え、すぐにしろを出たそうだ。
…そして、魔王を倒す旅に出かけた。
続く