表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅月の彼方へ  作者: 大木モカ
2/2

第2章『愛と交わり』


「はぁ〜〜…」


ベッドに横になった途端、つぐみは大きなため息をついた。


あの不気味な森や城があった変な世界から一瞬で戻ってきた時には、すでに日がとっぷり沈んでいた。


夕日で辺りがオレンジに染まる中、送ってくれたミネルバはつぐみの唇に軽くキスしてきた。


『また来るよ。つぐみの全部僕のだからね。じっくり味わってあげる』


「何がじっくり味わってあげる、よ」


つぐみは今度は深くため息を吐き出した。


今日は訳が分からない出来事ばかりだった。


ヴァンパイアなんて真面目に言ってたが、どこからどう見ても普通の人間にしか見えなかった。


映画などで知るそれらは牙があって、黒いマントを翻して夜しか行動しないってのがヴァンパイアだったはずだ。


「そうだ!」


ヴァンパイアといえばアレで撃退すればいいんだ。


いくらなんでも精気を吸われるなんてもっての他だった。



『つぐみが欲しい』



「っ……」


あの真紅の瞳を思い出して、身体の芯まで焦がすような深く熱い口付けをも思い出してしまった。


だが、ヴァンパイアなんて絶対無理だ。


何故なら、精気を吸われたらこっちまでヴァンパイアになっちゃうか死んでしまうかのどちらかだってさっき調べた。


それに、ミネルバは精気を吸う為に今までたくさんの女性をこうして誘ってきたに違いない。


いくら甘い言葉を紡がれても、つぐみはその中のその他大勢の中の1人に過ぎないんだと自覚していたが、同時にアレスの言葉も思い出した。



『テメェに何か考えがあって連れてきたんだろ?そうじゃなかったら、ココに人間連れてくるなんて考えられねぇし』



アレスの口振りからすれば、あのお城に人間…女性を連れて行ったのは初めてらしかった。


どうして私が初めてなの……?


女性に慣れてるんだよね……?


そんな事を思いながら、疲れもあってかつぐみはすぐに眠ってしまった。




*****




昨日つぐみがネットで調べて作った≪ヴァンパイアを撃退するアイテム≫を見て、神出鬼没に現れたミネルバは目をぱちくりさせた。


「な、何か言ったら?苦手なモノばかりでしょ?」


「苦手ねぇ〜」


ミネルバは自分の顎に手を添えながら、つぐみが揃えたアイテムを見ていた。


「苦手じゃないの?ほら、ニンニクに十字架!」


つぐみは右手にニンニク、左手に割り箸を十字架に見立てて輪ゴムで縛った物をミネルバに突き出した。


「つぐみは可愛いんだから」


「え?」


ミネルバはつぐみの腕をぐいっと引き寄せると、胸元に抱き止めた。


「ちょ、ちょっと!ニンニク〜!」


「はいはい、分かったから」


ミネルバはつぐみの手にあったニンニクを奪うと、カウンターに置いた。


「ちょっと!ヴァンパイアって言ったらニンニクと十字架が苦手じゃないの?」


「十字架ねぇ〜」


ミネルバはもう片方で握っていた十字架…もとい、をただくっつけただけの割り箸を受け取り、ふるふると振った。


「わ、割り箸だけど、十字架になってるでしょ?十字架なら苦手なはずでしょ?」


「何それ、つぐみは僕から離れたい訳?」


「え……」


いつもは綺麗な真紅の瞳なのに今はすごく淋しそうに見え、つぐみは目が離せなくなった。


「僕はつぐみを初めて見掛けた時から、僕にはこの人しかいないって思ったんだよ」


「ミネルバ…」


「僕のこの冷え切った心を温められるのは、つぐみしかだけだって」


抱き寄せられたまま、ミネルバはつぐみの頬を優しく撫でた。


「さぁ、僕と一緒に森の城で子孫を残そう。ね?」


ミネルバは優しく見つめると、つぐみへと段々顔を近付けた。


「ちょっと待って!」


触れる寸前だったが、つぐみはミネルバの胸を押して離れた。


「あ〜、ベットでの方が…」


「違うし!」


ふざけた事ばかり言うミネルバに、間髪入れずに答えた。


「子孫て何よ!子孫て!」


「子孫て分からない?子供の子って言う字に、孫って漢字で子孫だけ…」


「違う違う!字を聞いてるんじゃなくて、なんで私がミネルバと子孫を残さなくちゃいけないのよ!」


「自然の摂理?」


「ハァ!?」


勝手で口が巧い人だと思っていたが、ここでミネルバのペースに飲み込まれる訳にはいかなかった。


「絶対無理!だいたい付き合ってもいないし、ヴァンパイアとなんて無理!」


ミネルバは余裕そうな表情で、つぐみを目を細めて見つめた。


「な、何よ」


少し睨んで言ったつぐみに、ミネルバは小さく笑った。


「そんな事言って、本当は僕の事気になる存在になってるんじゃない?」


「なっ!」


そんな事ない、って言ってやりたかった。


どれだけ自意識過剰なの、って文句の一つも言いたかった。


でも、どうしてだろうか。


ニンニクを準備しながら、割り箸で十字架を作りながら、もう二度と逢えないなんて考えなかった。


ミネルバならニンニクだろうが十字架だろうが、そんなのお構い無しに平気な顔して胸の中を遠慮無しに掻き乱していくだろうと。


「……つぐみ?」


腰を抱かれたまま俯いたつぐみを心配してか、ミネルバは顔を覗き込んだ。


「……帰って」


「え…?どうして?僕はつぐみの温もりを常に感じていたいな」


「……ズルい……だから帰ってよ」


「どういう…意味?」


不思議そうに聞いてくるミネルバの緩んだ腕から、つぐみはそっと離れた。


「今日は帰って……」


つぐみは背を向けた。


背後から抱き締めようとして、躊躇したミネルバの腕がそっと下がった。


「………また来るよ」


優しくて甘い声を背中に受けて、振り返った時にはもうミネルバは居なかった。


「ミネルバ…」


この胸の痛みの名前を、つぐみは知っていた。


苦くて切なくて、少しだけ甘い。


初めて逢ったあの紅月の夜から、つぐみは真紅の瞳に心奪われてしまった。


「ズルいよ、私ばっかりこんな気持ち」


ミネルバは女性に慣れてるって言ってた。


だから、こんな気持ちになるはずはない。


ただ、逢いたいのは精気が欲しいからだ。


私じゃなくても、他にたくさんいる。


「…はぁ……」


何とも言えないため息は、ティーポットの湯気と共に消えた。




*****




「……やっぱりこの味と違うな」


ミネルバは城に戻り、元々あった珈琲豆を自分で挽いて飲んでみた。


つぐみの店で勝手に拝借して飲んだ珈琲と、同じ産地同じ種類の豆のはずなのに、どこと無くあの味じゃなかった。


「いい匂いすんじゃねぇか」


向かいのソファーに、アレスがふんぞり返って座った。


いつもだったら軽口の1つも言うミネルバだったが、今日はそんな気分じゃなかった。


「まだ残ってるから飲めば?」


「お…おぉ…」


アレスは首を傾げながら珈琲を注ぎに行った。


そんな後ろ姿を見届けたミネルバは、やはりこの味に納得出来ないでいた。


「女にでもひっぱたかれたか?」


「え…?」


茶褐色の水面を見つめていたミネルバは、アレスの声に顔を上げた。


「それともあれか、相手の男と鉢合わせでもしたか」


「言うねえ、アレス。生憎そこらへんはきちんとしてるから心配ご無用」


「それはきちんとしてるとは言わねーんだよ」


アレスは口元を上げて笑った。


ミネルバとアレスに今までこんな緩やかな時間は無いに等しかった。


数えるのを止めたくらい長い間生きてきて、顔を合わせれば憎まれ口ばかりで、こうやってまともに話した事などあっただろうか。


ミネルバがいつもと違う様子だったせいか、そんな風に言ってからかうのはアレスなりの気遣いかもしれなかった。


「ねぇ、アレス」


「なんだよ」


アレスがカップに珈琲を注ぎ、再び目の前に座るのを待って声を掛けた。


フーと冷ましてカップを傾けた後、アレスはミネルバをチラリと見た。


「その珈琲、どんな味?」


「どんなって、別に普通だろ」


アレスは怪訝な顔をした。


「美味しいとか美味しくないとか、いつもより濃いとか薄いとか無い訳?」


「旨いけどよ、何か入ってんのか?」


一気に疑いの眼差しになったアレスに、ミネルバは失敗したと思った。


アレスに珈琲の繊細な味を聞いたのが間違ってたと気付いた。


「別に変なモノは入ってないよ」


「ホントだろうな?」


「僕も同じの飲んでるからね」


ミネルバは、ほらと言わんばかりにカップを傾ければ、冷めて少し酸味が増した味をゆっくり飲み干した。


「何かあったのか?」


「何かあったように見える?」


にっこり笑ったミネルバに、アレスは少し困ったような顔をした。


「……昨日今日知り合った奴じゃねぇしな、何となくだけどよ」


ミネルバは正直驚いていた。


鈍感というか、そういうちょっとした変化には一番気付かないと思っていたアレスに、そんな事言われるなんて思ってもいなかったせいだ。


「……恋煩いだよ」


「こ、こいわずらい?」


「恋が思い通りにならないから悩んで、病気のような状態になる事だよ、アレス」


目を見開くアレスが可笑しくて、ミネルバは少し笑った。


「……あの人間の女か?」


アレスはカップを傾けながら、上目遣いでミネルバを見た。


「不思議なんだよね」


「何がだよ」


「今までの女の子とは違うんだよね。上手く言葉に出来ないけど、初めて見つけた時から心奪われてたんだ」


「ぐぇ!気色わりぃ事言ってんじゃねぇ!寒気した」


アレスはドン引きで身体を掻きまくった。


「何か可笑しな事言った?」


「お前は言い方がクセぇんだよ!」


「そう?」


「意識してねぇのかよ!」


「特には」


「あぁ、そうかよ!」


アレスは呆れたように、ソファーにふんぞり返った。


「女の子の気持ちなら、分かってるつもりだったのにな」


『……ズルいよ……』


頭で再生されたか細い声がまたミネルバの胸を突いた。


ミネルバにとってこんな経験は初めてで、こんなに胸の痛みを感じている事に少し驚いていた。


「先輩も本気で好きになったら、僕の気持ち分かると思うよ」


「ハァ!?お前が本気で好きになった事なんてあんのかよ!」


「あるよ、今…まさにだからね」


ミネルバは、言葉にして更に重みが増した気がした。

ただの人間の女に、何故ここまで執着してしまうのかも全然分からなかった。




*****




「………ん、………ちゃん、つぐみちゃん?」


「え?」


ハッとしたつぐみは、梨華がまじまじと見つめていた事に気付いた。


「どうかしたの?何だかボーとしてたみたいだったけど……考え事?」


「あ…ううん!梨華さんの珈琲、今日もいい仕事してますね」


「よかった。ありがと、つぐみちゃん」


にっこりと微笑む梨華に、つぐみも微笑み返した。


今日は定休日でブラブラと買い物をしていたつぐみは、偶然梨華に会って珈琲をご馳走になっていた。


………あれから数日経つが、ミネルバは現れなかった。


少し酷い事を言ってしまった事を謝りたいと思っていたが、何をどう謝ったらいいのかも分からないでいた。


それに謝るにしてもいつも向こうから予定無しに突然現れていたから、会うのもどうしたらいいか心がぐちゃぐちゃだった。


「……つぐみちゃん」


「はい」


つぐみが梨華を見れば、梨華は穏やかな表情をしていた。


「若い時はたくさん悩んだ方がいいわ。悩んで悩んで悩んで、それがもし間違っていたとしても後悔しないで反省すればいい」


「後悔しないで反省」



つぐみは梨華の言葉をゆっくり噛み締めた。


そんなつぐみの目の前に、梨華は桜柄の真っ白なお皿にガトーショコラを乗せて差し出した。


「甘い物でも食べて、一度リセットしてみたらどう?何も考えないで、今だけはスイーツタイム。ご馳走するわ」


「あ…はい!ありがとうございます、梨華さん」


梨華は微笑んだまま優しく頷いた。


「つぐみちゃんは絶対幸せになれるわよ。ううん、なりなさい」


「はい」


つぐみも梨華に微笑み返した。


顔には出さなくても悩んでいる事気付いてくれた梨華につぐみは胸がいっぱいになった。


悩みの種が少しだけ軽くなった気がして、つぐみはガトーショコラを美味しくご馳走になった。



*****



「うわ〜星スゴい…」


『アルテミス』から帰宅したつぐみは、2階のベランダから星を見上げた。


夕方のニュースでなんとか流星群が見えるでしょうと聞いて、この小さな小さな店舗兼自宅の申し訳程度に付いてるベランダからでも、それはそれは綺麗な星空だった。


「キレー……」


こんな都会でも、ちゃんとたくさんの瞬く星がキラキラ輝いて見えた。


不気味な森を抜けたあのお城も、この星空は繋がっているのだろうか。


「……ミネルバ」


本当にズルい人だと思った。


たった数回しか逢ってないのに

お互いの事そんなに知らないのに

軽い男なのに

女の子に手慣れてるのに


こんなにも、毎日毎日気になってしまっていた。


つぐみの胸にちゃっかりと、しっかりとあの真紅の瞳を刻んでいった……ズルい人。


「逢いたい、よ……」


帰って…なんて言ったのに、自分勝手だ。


星空が一気に潤んで、見ていられないし見たくなくて顔を歪めて俯いた。


「っ……」


突然温もりに包まれた。


もう…驚かなかった。


振り向かないでも分かる、優しく包んでくれた腕の持ち主。


さっきとは違う涙が溢れ、その腕が強くなった。


「ひくっ、逢いたいって…聞こえた、の…?」


「僕はつぐみの騎士だからね」


クサい台詞も妙に似合っていた。


「ズルい……」


「何がズルい…?」


つぐみの耳元でミネルバは優しい声色で囁いた。


「だって、私ばっかりなんだもん」


「何が私ばっかり…?」


優しく優しく囁いて、つぐみの髪にキスをした。


「こんなに、ミネルバに逢いたいなんて」


ふいにミネルバは腕を緩め、身体の向きを変えてつぐみと見つめ合った。


そして優しい笑みのミネルバは、つぐみの涙を親指の腹で拭った。


「僕だって逢いたかったよ」


「精気が欲しいからでしょ…?」


「そうじゃないよ」


ミネルバは胸元に顔を埋めるようにつぐみを抱き締めた。


ミネルバの温もり、匂いにつぐみは胸が苦しくなった。


甘くて少し切ない痛みでいっぱいに……。


「初めてなんだ。信じてもらえないかもしれないけど。こんなにつぐみを想うとね、苦しくなる」


トクン…トクン…と、ミネルバの鼓動とつぐみの鼓動が重なった。


「こんなに人が愛しいと思えるなんてね。可笑しいでしょ?ヴァンパイアは人間を犠牲にして存在してるのにね」


そっと緩んだ腕につぐみは胸元から顔を上げて、ミネルバを見つめた。


最初は怖かったはずの真紅の瞳が、こんなに温かく自分を見つめてくれていた。


「つぐみを愛してるんだ」


「ミネルバ……」


そっと近付けてくる顔に、つぐみは自然と瞼を閉じて受け入れた。


触れるだけだったそれは段々激しくなり、口内を温度の違う舌が暴れた。


それに追い付くように、つぐみも必死に舌を絡ませてゆっくりと離れた。


「その顔、堪らないね」


「ミネ、ルバ……」


「つぐみ……」


低く甘い声で呼ばれ、つぐみが返事をする前にミネルバは再び深く深く口付けた。


そして、苦しくなって崩れそうになったつぐみを抱き上げたミネルバは、ベットに寝かせて何度も何度も息も絶え絶えになるキスを交わしていく。


「つぐみ……」


キスの合間にミネルバは切ない声でつぐみを呼んだ。


だが、瞳はまるで紅い炎が灯ったようにつぐみを求めた。


「愛してる。つぐみは僕のだからね」


「……うん」


2人は何度目か分からない深く激しいキスをして、次の快感を求め合った。


身体の芯まで熱く滾る交わりを。


何も考えられなくなる程、会えなかった時間を埋めるように愛し合った。




***




ベッドサイドのアンティーク調の間接照明が優しく辺りを照らす中、ミネルバはつぐみの髪を優しく撫でた。


規則正しい呼吸を繰り返すつぐみの寝顔の可愛さに、ミネルバはフッと笑みが溢れた。


「…ねぇ、気付かれちゃってた?少しだけ緊張してた事」


ミネルバの声につぐみはぐっすり眠っていて無反応だった。


だからこそ呟いたクセに、どこかで知って欲しいと思っていた。


「可笑しいよね。初めてじゃないのに、いざとなったら緊張なんて」


だが、それと同時に自分がヴァンパイアだと忘れるはずが無かった。


今まで何十年何百年と人間の精気を吸い、人間を犠牲にする事で渇きを潤してきた。


それを分かってたはずなのに、精気を吸わない事前提で女性を抱いたのは初めてだった。


人間を愛するなんて、たった数十年しか生きれないちっぽけな存在に、こんなにも奪われるなんて考えられなかった。


こんなにも人間を愛しいと思うなんて、今までだったら絶対有り得なかった。


大体、気を失ってしまったつぐみの身体を丁寧に拭いて、ベッドに抱き締めて寝るなんて甲斐甲斐しくお世話してあげた事に自分自身で驚いていた。


いつも自分の欲さえ満たされればよかったから。


そう考えると、興味が無い事にはとことんどうでもいいと思うタイプなんだと認識した。


「…ミネ、ルバ…」


「え…?」


自己分析なんてしてたら呼ばれた少し擦れた声に、ミネルバはギョッとしてつぐみを見つめた。


しっかり閉じられた瞼にゆっくり息を吐き出していき、その掌は強く腕に触れて力が抜けていった。


「フッ……」


ミネルバは愛しい存在の耳元に顔を近付けた。


「僕は、つぐみのすぐ傍にいるよ」


優しく微笑んだつぐみは、再び深い眠りに落ちていった。


こんなに穏やかな時間はいつぶりだったか。


100年前か、200年前か、はたまたそれ以上前か。


つぐみと居ると色々な自分を発見してしまい、何だか変な感じがして苦笑した。


そしてつぐみを優しく抱き締めたまま、久し振りに人の温もりを感じながら眠りに就いた。




*****




「……ん…」


スズメの煩いぐらいの朝の挨拶に、つぐみはゆっくり瞼を開いた。


「う〜…なんかダルいな。あ…」


のびをしようとしたつぐみは、ハタと止まった。


「そ、そうだ昨日」


昨夜の熱くて甘い時間を断片的に思い出し、自然と頬が熱くなった。


「帰った、のかな」


なんせ最後に大きい快感に溺れて、それからが思い出せなかった。


ベッドの隣に手を伸ばしても温もりは無く、淋しさでいっぱいになり布団を首元まで上げた。


いつの間に、こんなにこんなに好きになってしまった。


今まで、夜が長くて淋しいなんて思った事なんてなかった。


だが、これからの夜は逢えない時間を長くて淋しいと思ってしまう。


ミネルバも同じ気持ちでいてくれたら嬉しい……なんて考えて頭を振った。


少しの甘い気だるさと少しの淋しさを残して、部屋に広がる朝日を浴びるようにゆっくり起き上がった。

「起きた?寝ぼすけさん」


「え?」


開かれた扉を背に、ミネルバは軽く手を振った。


「帰ったんじゃ、なかったの…?」


「帰ったと思った?」


悪戯っぽく笑ったミネルバは、試すような言い方をした。


「起きて隣に居なかったら、帰ったと思うよ」


「淋しくなった?」


また試すような言い方で、つぐみがどう返すのか愉しそうに見えた。


自分からは決して本音を言わないような、そんないい性格だとつぐみは思っていた。


「……どうしたの?何考えてるの?」


ミネルバは口元に笑みを浮かべたまま、つぐみが身体を起こしたままのベッドへと腰掛けた。


「……別に、何も考えてない」


つぐみは子供のようにそっぽを向いた。



…淋しいよ、淋しかったよ。


自分だけ?



何かが邪魔をして、思った事を口に出来なかった。


「……つぐみは素直じゃないね」


「どうしてそう思うの?」



振り向いたつぐみの視界には、優しい瞳のミネルバが柔らかく微笑んでいた。


「さぁね。つぐみのそういう所も可愛いなって思うよ」


「可愛くない」


頬を優しく撫でてくれるその手のひらも愛しいのに、こうなるとなかなか素直になれなくなってしまう。


「……怒ってる?つぐみ」


「怒ってない」


「怒ってるでしょ?」


「怒ってないって」


こういう素直になれないところが一番嫌い。


嫌われてしまうかも、呆れられてしまうかも、そう思うのにどうしたらいいか分からなくなる。


「素直じゃない所も可愛いね〜?身体は素直なのに」


「なっ!」


つぐみは言葉に詰まって、顔から火が出そうなほど熱くなった。


「真っ赤だよ、耳まで」


クスクス笑うミネルバは、つぐみの頬を掌で包み込んだ。


「ミネルバが変な事言うから!」


「ん〜?変な事?」


「そう!」


ミネルバを睨めば、瞳が妖しく光ったような気がして嫌な予感が走った。


「僕はただ、つぐみの身体は素直なのにって言っただけなのにな〜。実際に確かめてみよっか」


「え?た、確かめ…っ!」


軽い衝撃の後、天井を背中にしてミネルバはつぐみを覗き込んだ。


もしかしなくても、ベッドに押し倒されていた。


「ちょ、ちょっと!ミネルバ!」


「大丈夫。まだお店開けるまでには時間あるし、僕が作った朝御飯はまた温めればいいしね」


ミネルバはつぐみの手を取ると、指先にキスをした。


「え?帰ったんじゃなくて、朝御飯作ってたの…?」


優しく微笑んだミネルバは、何も言わずにつぐみの額に唇を落とした。





***




「もう!結局こんな時間になっちゃったし」


つぐみは店内を慌ただしく歩いた。


「つぐみが可愛い顔で3回目のおねだりするからでしょ?」


「なっ!」


カウンターの一番端……初めて逢った時と同じ場所、足を組んだ同じ格好で珈琲を飲むミネルバを睨んだ。


「そんな顔も可愛いね?」


「はいはい、もうその手には乗りません」


軽く受け流したつぐみは、配達用の珈琲豆をテーブルに乗せた。


いつもより身体がダルく重く感じたが仕事を休む訳にはいかなかった。


なんせこの身体の痛みは風邪のせいなどでは無いと分かっていたから。


ミネルバが作ってくれた朝御飯はとっても美味しかったが、ヴァンパイアも普通に人間と同じ物を食べる事に感心してたら、ちょっと笑われた。


人間と何ら変わらない。


血を吸ってそれで生きていて、吸われた人間はヴァンパイアになってしまうか、死んでしまうなんて記述があった。


でも、朝食のお礼はつぐみでいいよ?なんて、本当に頭ん中そういう事だけでいっぱいなの?って言いたくなった。


………そんな性格のミネルバだけど、何故か憎めなかった。


惚れたら負け、なんてよく出来た言葉だとつぐみは身を持って実感した。


「ねぇ、つぐみ」


「ん?」


カウンター内で、注文書をペラペラ捲りながらミネルバを見た。


「一生、僕につぐみの珈琲を飲ませて欲しいな」


「え……」


少し悲しげに、呟くように言ったミネルバから目が離せなくなった。


「………もちろん、つぐみの事も毎日食べるけどね」

「もう!そればっかりなんだから!」


一瞬のうちに妖しい笑みに変わったミネルバは、眼鏡の鼻当てを上げた。


「今日のブレンドも最高だよ」


「ありがとうございます!」


つぐみは皮肉たっぷりにお礼を言った。


だが、さっきの一瞬だけ見せた表情はなんだったんだろうか気になった。


悲しげな、だけど何か思い詰めてるような……。


分からないが、ミネルバのあんな顔初めて見た。


「つぐみ、そろそろ出る?」


「あ、う、うん」


なんだか聞きそびれたつぐみは、鞄に確認しておいた配達の珈琲豆と注文伝票を入れた。


「今晩、また部屋に行くね」


「えっと、うん」


つぐみはうまく笑えなくて、ぎこちない顔で答えた。


「……っ」


つぐみは一瞬のうちに抱き寄せられ、唇を奪われた。


ゆっくり離れてく唇に淋しさを感じていたら、男なのに妙に艶めかしい瞳に心を奪われた。


「お望みならば、夜這いしますよ?」


「なんで敬語!?」


「執事みたいでなんか燃えない?」


「燃えません!」


「それより、夜這いするって所に興味は無いのかな?」


「っ……」


口が巧いミネルバに翻弄されっぱなしで、返す言葉が無くなった。


「赤くなって……夜這いところか、昼這いしたいな」


ミネルバはつぐみの唇を指でなぞった。


「や、止めてよ。それに昼這いなんて言葉無い」


奪われた心の鼓動が、ミネルバに聞こえちゃうんじゃないかってぐらい激しく鳴っていた。


「まぁ、夜這いなんて意味無いよね?用が無くても逢いたいな」


顎をクイッと上げられ、今日何度目か分からない口付けを交わした。


ミネルバはキスが好きなのかもしれない。


熱い交わりを予感させるような荒々しいキスも、わざとリップ音を鳴らす軽いキスも。


「……そんなに見つめられたら、家から出したくなくなっちゃうな。というより、服を着せたくないって感じかな」


「へ、変態!」


つぐみが顔を真っ赤にして言えば、ミネルバは愉しそうに優しく微笑んだ。


何が冗談で、何が本気か分からない程ミネルバは恥ずかしい事ばかり言う。


「そろそろ時間、大丈夫?」


「あ!もうこんな時間!鍵、閉めてくから」


つぐみは鍵を掴んで、ドアに手を掛けた。


「いってらっしゃい、マイハニー」


投げキスをしたミネルバに不意に胸が跳ねた。


「い、行ってきます!」


少しどもりながら言ったつぐみは、ドアを開いて出て鍵を掛けた。


自転車の鍵を外せば、ドアの向こうでミネルバが手を振っていた。


「行ってきます!」


つぐみはミネルバに微笑みながら言った。


いってらっしゃいって言われるのも、行ってきますって言うのも、本当に久し振りで何だか独りでに笑顔になったつぐみは自転車に乗ってペダルを思い切り踏み込んだ。






「さてと……」


つぐみの笑顔を見送ったミネルバは、くるっと振り返って数歩歩き出せば城の前の森に出た。


決して太陽なんか昇る事が無い、暗い世界をゆっくり城に向かって歩き出した。


しばらく歩いた先にある城に入れば、いつもの様に壁に掛かってる絵画達が口々に話し出した。


『人間臭いと思ったら、遊び人か』


『ククッ、眼鏡は人間の女を喰ってから血を戴くのが好きなんだもんな』


『喰うってどういう喰うだ〜?』


『そりゃあな〜。なぁ?眼鏡』


『ケケケッ…』


『クヘヘッ』


下品な笑いの奴等をチラリと見渡したミネルバは、額縁と額縁のすぐ脇の壁へと足蹴りした。


鈍い音の後に、ヒッ!と息を飲む声がして一瞬にして静寂に包まれた。


壁にヒビが入り、ゆっくりと足を離すとポロポロと壁の破片が床へと零れた。


自分の額縁のすぐ脇を蹴られた絵画の男は驚愕の表情を浮かべていた。


「今度は外さないようにしなきゃね」


にっこりと微笑むミネルバに絵画の男は口をパクパクさせ何も言えずにいた。


「今度全部裸婦に変えてもらうように頼んでもいいんだけど。絵画なら絵画らしく……しなよ」


“しなよ”の部分は力が籠もっていて、有無を言わさない雰囲気を醸し出していた。


ミネルバは迫力に圧倒されている絵画達を横目で見やると、みんなが揃っているだろう部屋へと歩き出した。


「ただいま」


リビングへと続く大きな扉を開けば、そこにはソファーにアレスだけが居た。


無言でチラリとだけ見たアレスは、ずいぶん深刻な顔をしていた。


「僕がただいまって言ってるんだから、おかえりぐらい言ったらどう?」


「…何で昨日帰って来なかったんだよ」


一段低い声でアレスが言った。


たったそれだけで怒りが伝わってきて、どれだけ頭にきてるかミネルバは容易に気付いた。


「全員揃っての話があるつったの忘れた訳じゃねぇよな」


「僕はアレスの顔より、つぐみの気持ち良さそうな顔見てたいからね」


もちろん冗談で言ったから軽く返してくると思ったミネルバだったが、アレスは表情を変えなかった。


「……約束ぐらい守れ」


怒ってるというよりは、どこか苦しそうに見えたアレスはいつもとどこか違っていて、ミネルバは何故か妙な胸騒ぎがした。


「……アレス、話って?」


ため息をついて頭をガシガシ掻いたアレスは、ゆっくりとミネルバを見た。


「あの女……」


「あの女?つぐみの事?ダメだよ。つぐみは僕のすべてなんだから狙わないでよ」


ミネルバは分かっていた。


そんな類いの話じゃない事なんて。


「ケッ、誰が人間なんか」


「それは分かったから、つぐみがどうしたの?気になるんだけど」


ミネルバは少し苛立ち早口になった。


こんな自分、自分じゃなかった。


こんな風に焦るなんて、なんてらしくないと思っていた。


パーティー(隊)の中で自分だけは常に冷静沈着、クールでなきゃいけない。


アレスやアポロが無鉄砲だから、特に自分だけは感情に流されてはいけないと意識していた。


常にそれを心掛けてきて、僕達にとって難しい何かが起きている時も“頭”を使って最善の道をみんなに伝えてきた。


それがどうだろう、この醜態に半ば呆れてきた。


どれだけつぐみを想っているかをミネルバは自覚してしまった。


それはミネルバ自身だけではなく、目の前のアレスも少し驚いたような顔をしていた。


「なっ、なんだよ、そんなに焦ってんじゃねぇよ」


「………アレス」


「うっ…、なんだよ、分かったよ!あの女つぐみだっけか?アイツよ」


少し凄みを利かせて睨んだミネルバに、アレスは早速話し始めた。


「ミネ〜ルバくんっ!」


独特の言い方で呼ばれ、次の言葉を出そうとしていたアレスと、呼ばれたミネルバは視線を向けた。


「お久し振りですね〜?」


棒付きキャンディーを頬を膨らませてくわえて少々片眉を上げたのは、この城の実質的な家主の男だった。


燕尾服にシルクハットの中年の男は、ステッキをクルリと回してみせた。


「お、オッサン!今どっから入ってきた!ここ扉他にもあんのかよ!?」


家主を『オッサン』呼ばわりしたアレスは1つしかない扉と、扉から一番奥に立っている男を交互に見た。


「アレスくん、これしき、ちょっとの苦労で出来るようになりますよ」


「へぇ!さすがはオッサンだな」


「伯爵と呼びなさい、伯爵と」


「……伯爵」


呼んだのは、アレスでは無くミネルバだった。


「……先程、僕を呼びましたよね。何か用でも?」


伯爵がミネルバ達の前に姿を見せるなんて珍しい事だった。


いつも何かあってもフラフラと行方不明になり、とらえどころが無い男だった。


それだけ何か大きな事が起こりそうで、嫌な予感が広がっていった。


「意外とせっかちなんですね。いつもの余裕が感じられませんね〜?」


笑みを浮かべながら言った伯爵に、ミネルバは少し苛立った。


「ま、冗談はさておき」


表情には出してないはずのミネルバだったが、伯爵はチラリとミネルバを見た。


「ミネルバくんが入れ込んでる女性、いらっしゃるでしょう?人間の女性がね」


「どうしてそれを?」


伯爵はニヤリとするだけで答えずに、棒付きキャンディーを口から外した。


「……あの女性にもう関わらない方がいいですよ」


「え……」


ミネルバは思わず絶句してしまった。


人間だから?


ヴァンパイアじゃないから?


「……人間だからとか、ヴァンパイアではないからとか言う意味ではありませんよ」


心を読まれた気がしたミネルバはドキリとした。


「オッサン、じゃあ何でだよ。別に俺は眼鏡がどんな女とどんな仲になろうが知ったことねぇから構わねぇけどよ。なんかその言い方だとあの女だけがダメみてぇな言い方じゃね?」


ミネルバが聞きたい事を珍しくアレスが代弁した形になった。


確かに今まで城に連れてきた人間は居なかったが、付き合った人間は星の数程居たのにそんな事初めて言われた。


「ん〜このキャンディー、ストロベリーが強いですね」


「おい!聞いてんのかオッサン!」


「聞いてましたよ」


伯爵は棒付きキャンディーを再び口に含んだ。


「とにかく、忠告はしましたよ?」


真剣に見つめてきた伯爵に、ミネルバは強い瞳で見返した。


「伯爵に言われようが何だろうが、僕は彼女を愛し続けますよ。もしかして、妬いてるんですか?」


ミネルバは余裕たっぷりの笑みで投げ返した。


「……愛とは深い物ですねぇ。故にお互いしか見えなくなる危険な道」


伯爵はどこか遠くを見るように呟いた。


「オッサン!訳分かんねぇ事言ってねぇで何であの女限定か教えろよ!」


テーブルをバンッと叩いてアレスは伯爵に詰め寄った。


「教える訳にはいきません。ダメな物はダメ、ですからね」


伯爵はアレスを見て、そしてミネルバを見つめた。


「チッ、頭かてぇな。ケチくせぇ」


「私、頭固いですし、ケチですから」


ボソッと呟いたアレスに、伯爵少し声を張り上げて言った。


「あ、ミネルバ。朝帰りとか不潔なんですけど〜」


扉からアポロがフーセンガムを膨らませながら入ってきても、ミネルバは伯爵が言った事がずっと頭を回っていた。





*****





「……どうかした?」


「え?」


約束通り夜にミネルバはつぐみの家にやってきた。


食後の珈琲カップを置いたつぐみは、どこか心ここにあらずのミネルバに心配そうに聞いた。


キスも手を絡めるのも何もかもどれも堪らなくて、何もかも考えたくなかったはずだった。


「……なんか難しい顔してたよ?」


隣に座ったつぐみは、ミネルバの顔を覗き込んだ。


「………更に惚れた?」


「なっ!」


つぐみは顔を真っ赤にさせた。


「……可愛いね、つぐみは」


ミネルバはつぐみを抱き寄せて、こめかみにキスをした。


「ふふっ」


「どうしたの?」


ミネルバはこめかみから頬に何度もキスをしながら聞いた。


「…嬉しいなって…」


「…うん。僕も嬉しいよ」


ミネルバはつぐみの顎に指を掛けて唇にキスをした。


そのキスは段々深くなり、ゆっくり離して額を合わせて幸せな余韻をお互いに感じていた。


「……こういうのを幸せっていうのかな」


つぐみはポツリと呟いた。


「つぐみが思う幸せって、こういう時間なの?」


「私ね、祖母が亡くなった後天涯孤独でずっと1人で生きてきたから、誰かとこんな風に一緒に過ごす時間がこんなに大切なんだって改めて思って…」


「つぐみ…」


少し目を潤ませたつぐみにミネルバは胸のどこかを強く締め付けられ、つぐみを抱き寄せて腕の中に閉じ込めた。


「ミネルバ…?」


急に強く抱き締められたつぐみは、少し苦し気にミネルバを呼んだ。


「キス、もっとしていい?」


「う、うん」


恥ずかしがりながらつぐみは頷き、ミネルバは優しく唇を塞いだ。


何度もキスをして、それから止められずにミネルバはつぐみを優しくソファーに押し倒した。


甘い声で聴覚を

染まる頬で視覚を

甘美な匂いで嗅覚を

口付けて味覚を

触れてる全てで触覚を


ミネルバは五感全部を刺激されていた。


それはもちろんつぐみにとっても同じだった。


ただのちっぽけな人間なのに、どうしてここまで惹かれてしまうのか。


簡単に人間を亡くせるヴァンパイアに、どうしてここまで惹かれてしまうのか。


ミネルバは伯爵に言われた言葉をかなぐり捨てるように、つぐみを強く強く抱き締めた。


離れまいと、強く、強く。



  ≪愛と交わり≫完了



NEXT→→

第3章へ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ