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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
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二話 本が重くてとるのが怠い―①

 ゆるゆると時は流れて、二歳になって迎えた秋の季節。 


 現在、お昼を食べ終えた僕はぱらぱらと絵本をめくって遊んでいる。


 これは最近のマイブームで、この最中に実はこっそり魔法の練習をしているんだ。

 手でめくるフリをして、浮遊魔法でページをめくる。

 簡単だけどやっておいて損はない作業だ。


「ベルは本が好きねー」


 遠くではお腹を少し大きくしたお母さんがニコニコとサヴァさんの淹れた紅茶を飲んで僕を見ている。

 それはもう、じーっと見ている。


 お父さんもお母さんもリアねえも、アウトドアな人間だ。

 だからか、あまり動かない僕は大変珍しいらしい。

 いつだったか三人にじーっとみられながら絵本を魔法でめくっていたこともあった。


 弁明しておくと、別に動いたりできないわけではないよ。

 もう、軽い会話やあんよぐらいなら余裕でできるようになってる。

 できた当初は“ようやく”って感じだったかな?

 まあそこはどうでもいいや。


 あ、そうだ。一つ大事なこと言い忘れてた。


 お母さん、第三子を授かりました。現在五か月らしい。

 お腹が膨らんでるのは、その所為だね。

 余談だけど、五か月前――季節は春の初め頃――というのは僕の誕生月だよ。


 お母さんのお腹ですくすくと育っている子が、妹か弟かは生まれないと分からない。

 まあ男女どちらでもめでたいことだ。

 リアねえと一緒に大いに喜んだよ。


 血の繋がった兄弟が生まれてくるというのは、僕の前世でも経験したことのない出来事だ。

 その子が生まれてきたそのときは、僕なりに精一杯優しくしようと思ってる。

 そしてできれば僕を将来甘やかしてほしい。

 

 ――おっと。そうこうしているうちに、本が終わってしまった。


 こういう時は、彼を呼ぼう。


「サバー!」


「ただいま」


「あたらしーの!」


「こちらに」


 とまあ、こんな感じでサヴァさんに頼めばすぐに新しい本が出てきます。

 相変わらずとっても優秀だね。


 ……優秀過ぎて、何度も彼に魔法がバレそうになってる。


 彼のこの神出鬼没はたぶん、魔法のようで魔法ではないみたいだ。

 ……どうなっているか、非常に気になるところだ。




 絵本を読み終わった後は、リアねえと遊ぶことになった。


「ベルー!」


「リアねー!」


「ベルー!」


「リアねー!」


「ベルー!」


「リアねー!」


 お互いの名前を叫びながら、僕たちはその度に一歩一歩離れていく。


 七歳のリアねえと二歳の僕が興じているのは、リアねえ考案の名前呼びゲームだ。


 とにかく大きい声を出して相手に届かせる。

 届いたら、相手は一歩離れる。

 そして、今度は相手側から呼ばれる。

 聞こえたら、こちらも一歩離れる。


 それだけのゲームであり、特に意味なんてない。

 強いて言うなら声を届かせるゲームだろうね。

 だけど、家の中だから意地悪しない限りは届かないことなんてないんだよね。


 散々呼び合って、お互いが部屋の隅まで辿り着いたら、僕たちは走ってお互いに駆け寄る。

 そして目標達成の喜びを、抱き合うことで表すのだ。

 これは僕が最初にやった。そしたら採用された。


「やったねー! こんどは、ろう下にちょうせんだね!」


「ろーか! がんばろー!」


 ぐんぐん成長しているリアねえは、七歳とは思えないほどに美しい。

 けれどやはりあどけなさは抜けていないので、やっぱり可愛い。

 まだ二次性徴の兆しはないリアねえだけど、抱きついた時に感じる体温はポカポカと温かくて気持ちがいい。

 おっぱいがなくても十分抱きつく魅力はある。


 そんな愛しいお姉ちゃんだけど、少しだけ、勘弁してほしいことはある。


「つぎは、おにごっこしよ!」


「えー!?」


「ベルは本ばっかりだから、たまには走ろうよ!」


 これだ。僕に運動をさせようとするのだ。

 これがちょっとだけ面倒なんだよね。


 僕が駄々をこねたとしてもリアねえは諦めない。

 本の前に座る僕を引っ張って、引きずり回す。

 しまいにはちょっと泣きそうになるんだよね。


 リアねえは可愛いから、そういうことをされると僕は弱い。

 姉弟仲が悪くなるのもイヤだから、結局僕はリアねえの誘いに乗ってしまうのだ。


 でも、こちらもただでは転ばないのである。

 ワガママを一つ言わせてもらう。


「ぼく、リアねーにもじおしぇーてほしぃ……」


「ま、また? でも、うごかないと」


「はしるから、おしぇーて? だめ?」


 僕はギュッとリアねえに抱きついて、上目使いを用いてキュートに見上げる。

 くいっと首を軽く傾げれば、後はもうリアねえが落ちるだけだ。


「……あのハリが六をさすまで! それまでおにごっこ!」


「そのあと?」


「……そのあとは、おしえたげるから!」


「ありあとー!」


 グッと抱きしめ返されて、ちょっと苦しい。

 顔のそばまで近づいたリアねえの白金色の髪は、くすぐったい。


 でも、嫌いじゃない。


「リアねえ、ぎゅー」


「ぎゅー!」


 そしてそのまましばらく、僕たちは『ぎゅー』を繰り返した。

 これによって十分ほどのタイムロスに成功したよ。

 それに気づいたリアねえがおろおろしながら、でもそれを認めてくれて約束を守ってくれたからこその成功だけどね。

 リアねえ、かわいい!


 ……まあ、そんな感じで姉弟仲は今のところ良好なのでした。

20141224_誤字修正及び加筆

静聴→ぐんぐん成長

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