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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
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十二話 〃 ―④

エピローグ

 そして三日後。


 アシはサヴァさんの後継として、週に数回ほどアーケディア家に通うようになった。

 神父さんたちにもしっかり話は通り、アシはもう将来僕の足になることが確定した。


 やったぜ。


 それとルナとフラワちゃんも、しっかり友達を増やすことができた。

 まあ、まだフラワちゃんと一部の接触には注意していないといけないけど。

 昨日見た分には、そのままいけば大丈夫だと思う。


 なので今、教会には人っ子一人いなかった。

 多分いるんだろうけど、シスターさんは奥の方に引っ込んでるはずだ。

 だから、この礼拝堂には僕しかいない。


『――やっス、ベル坊』


『やあ。いつ振り?』


『二週間? 三週間? 忘れちゃったっス』


 そんなもんか。

 長かったような、短かったような。


『そうそう朗報っス。ミルイニの謹慎、ベル坊の六歳の誕生日に解けるっス』


『へえ……それは楽しみだ』


 とてもとても――。


 彼女の声を聞かなくなって久しい。

 ……いや、半年も経ってないような気もする。

 これが一日千秋の思いってやつなのかな?


 ――会うのが怖いなあ。


『そういえばさあ』


『何っスか?』


『――僕のことはどこまで知ってるの? 神様ってやつらはさあ』


 息を呑むような音がした。

 存在は確かに感じるけど、ルンヴィちゃんはずっと無言だった。


『おいおい黙らないでくれよ。確信しちゃったじゃないか』


『……』


『同じ転生者をけしかけて見張らせようとするほど、僕が恐ろしかったのかい?』


『……どうしてそう思うっスか?』


『まず僕にどうして接触を計るのかなって考えたら、ずるずるーっとね。やけに僕の前世を気にかけてきたしさあ』


 アキラ・シフトは、やや過大気味に言えば義妹至上主義だ。

 何もかも義妹のために動いていたし、あのイタズラも義妹のことが発端だった。

 だと、するならば。


 僕にちょっかいを出す理由が、全くないのだ。


 あんなリスキーな真似をする理由が、皆目見当たらないのである。

 ……説明不足でフラワちゃんが床に落っこちたのを恨まれてたら、その限りじゃないけどね。


『本当はあの……≪セポスセロウ≫? も判断材料の一つだったんだけど、そっちはちょっと違うらしいし』


『……“超魔法”じゃないっスか。セポーセなんちゅうもん教えてるんっスかぁ』


 ああ、アレそんな名前しちゃうほどのヤバさなのか。

 それはどうでもいい。


『まあそっちはいいよ。ミルイニちゃんに聞けばいいのさそんな物騒なもの。僕が君に聞きたいのは僕が彼女に教えたくないことだけだ』


『……そっスか』


 話を逸らそうとしてたみたいだ。

 残念ながら大事でないこと以外はどうでもいい。

 基本、その時に知ることは無駄でしかない。


『……どこまで知ってるか、っスね』


 観念したのか、ルンヴィちゃんは細々と話し出した。


『ベル坊の魂が常人よりも圧倒的に大きく、危険視に値するってことぐらいっス』


 ……その言葉に、嘘はなさそうだ。


『ついでに、私がそのことを知ったのは少し前っス。転生者を受け持った――ミルイニ以外の神様だけが最初から知ってたみたいっスけど。そっから、徐々に伝えられる形で、ミルイニ以外に知れ渡ったっス』


『……なんでミルイニちゃんは知らないのさ』


 不自然すぎるだろ、それは。

 そんな重要事項、伝わってないとおかしいだろ。


『ミルイニの謹慎は、ちょいと特殊なんっスよ。その延長で、謹慎の最中に彼女に会えるのは基本私だけなんっス。……だから、私が伝えなければ、ミルイニは君の誕生日まで知ることはないっス』


『……なんで伝えてないの?』


『最近知ったばっかって言ったっスよ。……どう言えばいいか分からなかっただけっス』


 嘘だと分かる。

 分かるけど。

 ……悪意があるような、ないような。


『ついでだし私も聞いちゃうっスけど、これ話して良いっスか? 黙っててほしいっスか?』


『好きにしなよ。その結果起こる色々を、僕は甘んじて受けとめてただダラダラと人生を謳歌するだけさ』


 神様なんて居てもいなくても変わらない、あの頃に戻るだけさ。


『……一つだけ、言っておくことがあるっス』


『なんだい』


 微かな怒気を滲ませながら、ルンヴィちゃんは強く言った。


『ミルイニを舐めない方が良いっス』


『そりゃあ怖いね』


『怖いっスよそりゃあもう。自分を強く慕ってくれる子のために、色々滅茶苦茶したんっスからね』


 ……はあ?

 なに、それ?


『まあ、色々あったんっスよ。つか、やったんっスよ。会った時に聞いてみるといいっス』


『……はあ』


『それはともかく。ミルイニは君に、他の神たちが感じた恐怖とは別に、暗い何かを見出して気にかけてるっス』


 いや、どっちかっつーと“ホ”の字の割合の方が大きいような……なんてぼやいてから、一つ咳払いをして再び真剣に続けた。


『母なる海神を舐めない方が良いっス。そんな彼女が授けたその“寵愛”の重さを、軽んじちゃいけないっス』


 真剣味は帯びたままに、彼女は少し笑うようにキッパリと言った。


『――君は黙って、ミルイニを信じて待ってりゃいいんっス』


『……』


『それに危ないって思われてるだけで、大人しくしてればなんの問題もないっス。家族に囲まれて、あの子を足にして、おっぱいに釣られて、そしてミルイニに怒られて、受け止めてもらえばいいっス。分かったっスか?』


『……そう、だね』


 正直な話。

 信じるよ、と言いたかった。

 続けたかった。


 でも臆病で、嘘つきに中々なれない自分は。

 そこまで言葉に出来なかった。


『そこは嘘でも「信じ続けるよ」とか言えたらカッコいいんっスけど』


『それは無理な相談だ』


 それに。


『僕は今世も可愛い路線でいくからね。カッコいいとは、無縁でいいのさ』


 そういう役目は……そうだなあ。

 アシにでも回してやればいいんじゃないかな。


『そうっスか』


 ルンヴィちゃんは、呆れたようにそう言った。




 そしていつものちょっとしたやり取りをした後、ルンヴィちゃんは帰った。


 礼拝堂で一人立ち尽くしながら、僕は偶像を見上げた。


 僕が見たことのある彼女の色々な顔とはほど遠い、母の慈愛を体現したような笑みを浮かべたその偶像。


 ――いや、一度だけ見たことがあるじゃないか。


 あの、石でできた無機質な慈愛の眼差しだけが、あの時の翡翠色の瞳と瓜二つだった。




 寵愛を受けた理由は、分からない。


 そして僕が、あの時彼女を信じようと思った理由もまた、分からない。


 分からない。


「……めんどうだ」


 彼女に会わない限り。

 もしかしたら会っても、その理由は分からないだろう。

 だから一旦、思考を放棄した。


「……そろそろ魔法の練習の時間か」


 イルちゃんを抱きしめて、僕はふわりと宙に浮く。


 今日のその後の予定はなんだったか。

 カナリアちゃんには褒められるか。

 ロザリーちゃんには抱きしめてもらえるか。

 孤児院で遊んでいる妹たちは無事に仲良くできてるだろうか。

 リアねえとお父さんは、帰りの足に無茶を強いてないだろうか。

 お母さんとサヴァさんは家でなにしてるだろうか。


 ミルイニちゃんは、僕を見ているのだろうか。

 僕は彼女を、信じて待っていられるのだろうか。


 再び似たような思考をし始めていて、僕は苦笑した。


「めんどうくさいなあ」


 良くも悪くも、面倒事が増えてしまった。

 けど、それを苦とまで思わない限り、やはり生まれ変わったのは大きいんだろうね。

 前世きおくがあるからこそ、それを強く実感する。


「はぁ」


 軽く溜め息を吐いて、僕は教会を後にした。

 ゆるゆると緩慢に、僕は行く。


「……まあでも、しばらくあまり動きたくはないね」


 やっぱり動くのは結構めんどうくさいことに変わりないから。

 せめて六歳の誕生日までは何もないように、と強く強く何かに願ったのだった。

閑話書こうかなあ……どうするべきかなあ……


次回更新しばらく待って!


20150207_一部変更

神技→超魔法

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