十一話 〃 ―③
「アキラ君のこと?」
「うん」
「そうねえ……大体の子とは話せてたわよ。自分のため、というよりフラワちゃんのためにね」
でも、フラワちゃんは怖がってね……とシスターさんが苦笑した。
「今でもルナちゃんとしっかりお喋りできてるか、不安なくらいだもの」
「そっちはおいといて」
「ああ、ごめんなさい。……アキラ君も話はするけど、特定の誰かと仲良くってことはなかったわね。自分から積極的に動いてたのは、フラワちゃんのことだけだったわ」
あとは適当なことをぼちぼちと聞いて、僕はその場を後にする。
まあシスターさんから聞いたことは大して驚くことでもなかった。
強いてあげるなら、当番事が結構おざなりだったってことかな。
今のアシでは考えられないことだと思う。
帰り際に『子供たちにも聞いてみますか?』なんて言われたけど、丁重にお断りさせていただいた。
そんな一歩間違えば爆発必至なことしたくないよ。
誰がどうとかまでは全く分かんないんだからさあ。
聞くことも、ついでにアテもなくなったから、ふらふらと帰る。
久しぶりに会った人たちにちょろっと声を掛けられながら。
最近はテレポートでパシりまくってたからねえ。
「ベル!」
どん! と聞き慣れた声の主が後ろから飛び込んできた。
「……リアねえ」
「めずらしいね! ベルが一人で外にいるの!」
抱きつかれたままなのでちゃんと確認できないけど、間違いなくリアねえだった。
彼女の綺麗なプラチナブロンドが垂れて見える。
――つまり圧し掛かられてるんだけど、リアねえは軽いから苦でもない。
ごめん見栄張った。
圧し掛かられるのは大分キツイ。
でも小さいおっぱいを押し付けられる感覚を踏まえるとどっこいどっこい。
「なにしてたの?」
「アシのことで、いろいろきいてた」
「アキのこと? どうして?」
「もーすぐにしゅうかん」
「? ……あ、そうだね!」
何を言ってるんだろう?
みたいな顔されたから僕が間違ってたかと思った。
かなーり溶け込んでた(上に振り回してた)から、期間限定だって忘れてたな。
「そっかあ。もういなくなっちゃうのかあ……そうだ!」
残念そうにするリアねえが、何か思いついたご様子。
「明日パーティーにしようよ! ごちそう!」
下働きってより、あれだよね。
ホームステイ。
そう、ホームステイだ。
「いいんじゃない? きいてみないとわからないけど」
「よーし! そうだ。ルナのお友達も誘えないかな?」
「それはむずかしとおもう」
「そっかー」
ぴょんと僕から降りたリアねえが僕の手を取った。
んー。
滅多にないねこのシチュ。
二人で歩くことあんまない。
……っつーか僕が外に出ないからか!
「ベルとこうやって歩くの、あんまりないねー」
リアねえも同じことを思われたようで。
「ベル、外出ないからなあー」
……思われたようで。
「私、ベルと一杯遊びたいのになー」
「……うごくのはちょっと」
その愚痴に応えることはできそうにない。
めんどうというか、多分無理だ。
「魔法でもいーいからさー」
「ねえ。あそぶってなに?」
「見てるでしょ? いつもアキとやってるのとか」
「まって」
多分じゃなくて絶対無理だ。
というか、嫌だ。
それにそんなのやってもお話にならない。
僕がリアねえを叩き潰すのが先か、リアねえが僕を殴るのが先か。
いや、叩き潰すなんてしたくないから殴られて終わりかな。
まあ先ず、そもそもアレが遊びなのかが疑問だけどね。
「たたかいにならない」
「そう? 私が【強化】使わないで、ベルが【重力】使わなかったらいい勝負じゃないかな?」
それでもボコられるよ僕。
ボコられたくないから、ヤダ。
「おーねーがーいー」
そんなわけだから可愛く駄々捏ねないで。
思わず頷いちゃいそうになる。
「やーろーおーよー」
「いーやーだー」
掴まれた腕を、僕ごと振り回されながらどうにかこうにか家まで向かうことになった。
☆
どうにか家まで辿り着いた。
リアねえの猛攻は、恐ろしかった。
あの駄々の捏ね方は、しっかりものの姉からギャップを生んで凄まじい破壊力だった。
お姉ちゃん力はマイナス値だったけど、それもまた強力なのか……。
けれど僕は耐え抜いた。
そりゃーもう弟の意地ってやつを見せたよ。
申し訳ないけどね!
だからリアねえはプンすかしながら、結局アシを引きずって中庭に行った。
多分、アシはまたボコボコにされてるんだろうなー。
「――ベル様。いかがでした?」
後ろから気配もなく急に声が。
ちょっとビビったけど、僕は努めて冷静に返した。
「問題ないと思う。ちょっと不真面目なとこもあるみたいだけど、そこはなんとかなるでしょ」
「では、予定通りでよろしいでしょうか?」
「うん」
あ、そうだ。
ついでに話しておいてあげよう。
「リアねえが、アシのためにパーティーしたいって」
「左様でございますか」
「場を設けるには、丁度いいんじゃない?」
「確かに。では……それも含めて少し準備を致します」
「ヨロシク」
気配が元々ないから去ったか分かんないけど、返事がなくなったから多分いなくなったんだろう。
さて、多分これで滞りなく囲い込みは終わると思う。
でもなんだかそれじゃあ味気ないから……保険でもかけておこうかな。
服だけボロボロにしてリアねえとともに戻ってくるアシを見据えて、僕は薄らと笑った。
神父さんオンリーじゃないから今日は二話目ないです。
訂正
リアねえのアシの呼称を変更
アシ→アキ




