十一話 アキラ・シフトという少年 ―①
閑話を挟んだのはですね~。
十話から続いておっぱい成分足りないからです。
アシの下働きの期間の終わりが、いよいよ翌日という所にまで時間が経った。
「では、手を離します」
「うす」
僕の視線の先にいるアシは、かつて僕がやったのと同じ魔力の制御法をサヴァさんから教わっている最中だ。
って言っても、まだ始めて間もないから凄いヘタクソだけどね。
けど、彼は中々マジメだ。
空いてる時間は欠かさず制御の練習してるし、お父さんに教え込まれたのかは分からないけど、基礎筋力トレーニングまでしてる始末だ。
あんなイタズラをしてたヤツとは到底思えないね。
アーケディア家には更生プログラムが働いてるんだろうか。
それとも彼が元々マジメなのか。
僕がギリギリ人並みに動けてる点を鑑みると、前者かもしれない……なんてね。
どっちだろうと構わないけど、彼はかなり努力してる。
僕が一日に平均して三時間(多いと六時間)は惰眠を貪るのに対し、彼はその間ずーっと動いてるからね。
おかげでVITのAから“-”がとれたみたい。
DEXはまだD--みたいだけど。
まあそんなマジメちゃんな彼を見ながら、僕は考える。
それの原動力は疑問と言うか――細やかな好奇心だ。
アキラ・シフトは何を思ってここまで頑張ってるのか。
人は何かしらの目的のために動くものだ。
めんどくさがりの僕でも、怠惰に浸るために人並みに動いてる。
じゃあ、あんなに頑張ってる彼はなんのために動いてるのか?
今まで他者にそういう興味を抱かなかったのは、単純な話、彼らが普通だからだ。
普通に生まれてきて、普通に育ってきてる。
何かしら普通じゃないところもあるかもしれないけど、それは興味の対象じゃない。
なら何故か。
その理由は、彼が転生者であることにある。
もっと子供らしく、やり直しに近い生を緩やかに謳歌すればいいのに。
いや、もしかしたら、やり直したいから張り切っているのか?
そうさせるような前世でもあったのだろうか。
まあ僕も前世そんなに好きじゃないし、そうだとしたら納得だけどね。
どちらでも構わないけど……彼の行動理念は、果たして僕のしたいことに噛み合うかなあ?
僕の障害になり得ることもあるんじゃないかな?
囲い込みの最終段階に入る前に、彼から直接色々と聞いてみたい。
その前に彼の今までの人となりを他人から聞いておきたい。
僕は重い腰を上げる。
最近お母さんに買ってもらったイルカの抱き枕を抱えてから浮き上がる。
これが意外としっくりくる。
あるのとないとじゃ、安定感が違う。
集中してる二人には何も言わないで、僕は家を出た。
……パジャマのままだけど、別にいいよね。
☆
「……あに~のこと?」
「そ。しりたいんだ」
まず一人目。
彼の義妹のフラワちゃんだ。
彼女とルナは、今の所毎日教会で遊んでる。
神父さんに色んなことを教わりながら、ゆっくりと。
……今日はあやとりみたいだね。
その中に割って入ってしまったのは、ちょっと申し訳ない気もする。
「……あに~も、ルナにベルに~のこときいてたね」
「うん。きかれた」
意外な事実判明。
アシの方が一足早く動いてたのか。
≪テレポート≫なんだろうなあ。
とっても便利だねえ……羨ましいなあ……。
そうだ、折角だしそっちも聞いてみよ。
「ルナ、なんていったの?」
「……」
ルナは顔を伏せて、もじもじとして黙ってしまった。
ああ、これだけでもう満足だあ……。
「ルナね、『いつもねてるけど、まほうのがんばりやさん』っていってた」
僕が悶えていると、代わりにフラワちゃんが教えてくれた。
「あと、いっしょにねるときもちよくて、かみのけあらうときめがいたくなくしてくれて、それと――」
ぺチンと、ルナがフラワの口を叩いた。
「しゃべっちゃ、や」
「……わかった~」
思わぬ収穫に僕は幸せの絶頂だった。
もうアシとかどうでもいいというか。
聞きたいなー!
それと、の先が聞きたいなー!
……まあ落ち着けよ僕。
すっごく気になるけど、目的は果たそう。
ルナのことを撫でまくりながら、フラワちゃんに向き直った。
「じゃあ、フラワちゃんはアシのこと、どうおもう?」
「あに~も、がんばりやさん」
うん、そうだね。
僕も思ってる。
「からだがとってもがんじょ~でね、たたかれてたフラワをいっつもまもってくれたの。あに~がいるからだいじょうぶって、いっつもギュッてしてくれたの」
「……そう」
「あに~はちがうとこからひとりでフラワのとこまできたの。フラワもおうち、はいれなくてひとりだったから、あに~といっしょになったの。だからあに~はあに~で、フラワはいも~となの」
まあ、予想はしていたさ。
もうちょいマシなのだけどね。
アシが一人でぶっ叩かれまくって住処を追われて、フラワちゃんは普通に暮らしてて何かしらの理由で一人生き残っちゃった……みたいな。
でも、実際はもっと酷かった。
なら、彼女の人見知りっていうのは――。
「おにい、どしたの?」
「……かんがえごと」
ルナの声につられて、僕は目の前の二人を見つめた。
そう考えると、彼がこの二年でどれだけフラワちゃんに尽くしたのかが、ありありと分かる。
「だからね、まものがいっぱいきてもね、あに~がここまでまもってくれたの。あに~がいっぱいケガしちゃったら、わたしがまほ~でなおしてあげてね、ここまできたの」
童話の英雄を語る様にしながら、フラワちゃんは最後に笑顔の花を咲かせた。
「あに~はね、ヒーローなんだよ!」
「……とてもいい、おにいちゃんだね」
「うん!」
僕はいつだか見た彼の啓示を思い出す。
“不撓不屈の少年”
あの称号は僕が思う以上に、きっともっと重いものなんだろうね。
――そしてもっと恥ずかしい、身の悶えるような称号があるに違いないね!
「おにいも、いいおにいだよ?」
「……ありがと、ルナ。フラワちゃんも教えてくれて、ありがと」
「……おに~みたいなしゃべりかた~」
おっといけない。
次の人のことを考えたら、うっかり戻っちゃった。
今度は間違えないように、っと。
「じゃ、またね」
「「またね」」
僕はふわふわと浮いて、出口へと向かっていった。
あ、お祈りは抜かりなくしたよ。
ステータスとか色々上がってたとだけ言っておく。
今日の午後八時にもう一度更新です。




