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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
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閑話 森神の海神観察日記 ―①

四話以前のお話でござい。

 やっス諸君。

 私の名前はルンヴィっていうっス。

 森を司る神様なんスけど、最近その業務が疎かになりつつあるっス。

 なんでかっていうと……最近ちょっと、謹慎中の同僚が面白いんっスよ。

 折角だからみんなも一緒に、覗いてみようっス。




「ぶー」


 何もない空間で一人頬を膨らましてる、水色ショートカットの超絶美人が体育座りをしてるのが見えるでしょうかっス。


 彼女は他の神々(みんな)よりもやや煽情的な格好でそのけしからんナイスバディを強調しながら、なのになんか子供のように不貞腐れるっていうギャップで方々(私とか)のハートを掴んで止まない海神――ミルイニっス。


 ただ私の知ってる――みんなの知ってるミルイニってのは、どこか落ち着いた儚くもエロい美人って感じだったんス。

 けど、最近だとこんな調子で子供っぽいようになることが多々あるっス。

 それを知ってるのは多分、謹慎中の彼女の様子を見に来る私だけだと思うと、ちょっと優越感っス。


 とりあえずいつも通りに、私はミルイニに話しかけるっス。


「ミルイニー?」


「! あ、あれ、ルンヴィ? 何の用?」


 あらら。もう口調が砕けてるっス。

 前までならしばらくは『あら、ルンヴィ? どうしたの?』みたいなお姉さんっぽい話し方なんっスけど。

 今はこう、大体こんな素がすぐに出てくるようになったっス。


「また、あの子のこと考えてたんっスか?」


「ち!? 違うよ!?」


 カッと、彼女の白い頬が赤く上気して、その否定が嘘だってのがもう丸分かりっス。


「これが真っ赤なウソってやつっスかね?」


「だから違うって!」


 私が言うほどにミルイニは顔を赤くしていくっス。怒ってるからか照れてるからか、全く判別がつかないいっス。


「素直になるっスよもー」


「……ふんっ!」


 あらら、一層不貞腐れちゃったっス。

 その体育座り、おっぱいの強調具合がヤバくエロいから止めた方が良いと思うっスけど。

 まー私以外見てないっスから、放置でいっスね。




 不貞腐れモードのミルイニの機嫌が直るまで、ちょっと説明しておくっス。


 つい最近、謹慎中にも関わらずにミルイニは最高神様から一つの魂の案内役を頼まれたっス。

 その魂が件の男の子ベル――今は転生して、ベルフェルミナ――って名前の子なんっスけど、ミルイニはその子と会ってから、こんな調子になったっス。

 ……神様の、それもかなり上位の女神がどうしてこう骨抜きっぽくなってるかはちと分からないっスけど、まあ面白いからいいっスよね!


 って感じで、私はいつもミルイニの所まで、からかいに来てるっス。

 ただ、最近は拗ねっぱなしで面白くないっス。

 ちょっと聞いてみることにしまっス。


「最近機嫌悪いっスよねー。どうしたんっスか?」


「……貴方のせいでもあるのだけど?」


「もーお堅い口調は手遅れっスから、無理しなくていいっスよ」


「……ふーんだ」


 おっとついうっかりからかっちまったっス!

 これじゃあなんも聞けねえっス!


「……ベルが」


「ん?」


「ベルが、来てくれないの」


「???」


 何っスか?

 ここにいる可愛い神様なんっスか?


「来てって、どこにッスか?」


「教会」


「……来ても会えはしないッスよね?」


 謹慎なんだから、話しかけすらできないっスよね?


「でも、一回くらい来てくれもいいじゃない」


「うーん。まあ」


「信仰してくれるって言ったんだし!」


「そ、そっスね」


 涙目で迫らないでほしいっス。

 ちょっとこれは可愛いなんてレベルじゃなく愛おしいっス。

 そっちの気はないつもりなんっスけどねえ、こりゃやばいっスよ。


 でも、なんとなく彼を気に掛ける理由分かったっス。

 確認を込めてちょいと尋ねてみるっス。


「なんて言ってくれたんっスか?」


「え? ……っと……しょ、『生涯で神様は信仰したことないけど、これから私だけは信仰してくれる』って……」


 あー。やっぱりっす。

 ここだけの話、ミルイニってあまり信仰がないんっスよね。


 ああ、ちょっと言い方に語弊があったっス。

 信仰自体は広くされてるんッスよ?

 全体数で言えば、かなり上の位置にいるっス。

 でも、個人の信仰量で見るとガクッと下がるっス。

 つまり、色んな人に信仰されてるけど、それほど深くされてはいない。

 他の神と一緒に、二番手三番手ぐらいに信仰されるっス。

 だから、ミルイニだけ、ってなるとかなり珍しい部類に入るっス。


 そうなっちゃった理由は色々と事情ってのがあるんっスけど、それは今は置いておくっスね。


 神様ってのは、信仰ありきの存在っスから、それで力の強さが決まるっス。

 なくたってバカみたいに強い神様もいるっスけど、ほとんどは信仰が大事っス。

 多くの人から信仰される、もしくは魂の強い人から信仰されるのが神様には重要なんっスよね。


 ベルって子は、どうも相当魂が強い子らしいっスから、そんな子から『君だけを~』なんて言われたら喜びも一入のはずっス。

 なるほどそーかそーかっス。


「……に……いい、って……」


「ん? なんて?」


 ちょっとぼそぼそし過ぎて聞こえなかったっス。


「……可愛い、って……」


 単純に落ちてんじゃねーか。

 そっちかよマイフレンド。

 可愛いとか思う前に、私唖然っスわ。

 この可愛い海神、チョロ過ぎるっスよ。


 ――それ私だって落とせるじゃねーか!


 なんで『可愛い』なんて言われてコロっと落ちてんだって問い詰めたいっス。

 小一時間問い詰めたいっス。

 でも惚れてんじゃねーかなんて言ったところで、ミルイニが納得するはずもないっス。

 だからそれは私の中だけの結論ってことにしてどうにかこうにか心の中に押し込めて、話を進めようっス。


「つまりミルイニは、なんかこう、ちょっとでもアクション欲しいなーって思ってるッスか?」


「う、うん。折角、海が綺麗な所にしたのに、全然家から出ないし……」


 チョー張り切ったッスねこの子。

 ならどうせ、綺麗どころか、最高峰にするっスよね。

 ってことはオーシアンっスね。

 ……私もギリギリ管轄っス。

 ふへへ……面白いこと聞いたっス。

 あっといけないポーカーフェイスっス。


「洗礼になったら流石に来るんじゃないっスか?」


「そうだけどさ……」


 それにミルイニは謹慎中だから、洗礼でもないと話しかけられないっスから。

 来たところで、私がちょっかいかけるぐらいしかできねっス。


「まあどうしてもっていうなら、洗礼前に夢枕にでも立ったらどうっスか?」


「……」


 ぽかんと、口を開いたミルイニ。

 うわあ、思いつかなかったって顔してるっスコイツ。


「でも、許し出るかな?」


「寵愛与えるって名目ならいいんじゃないっスか」


「え!?」


 え!? って。

 いやいやそんな驚くことっスか?

 そんなべた惚れしてんなら問題ないっスよね?


「でも、寵愛なんてあげたことない……」


「あー、ミルイニは寵愛はやったことないんっスか?」


「うん」


「やり方は加護とさして変わらないッスよ。ただ、加護より強いとか、一人にしか与えられないとか、他にも色々神様と被愛者の間の繋がりが強くなるとか」


「……つ、繋がりが……」


 反応すると思ったっスわ。


「まあ、その分寵愛は加護以上に慎重にやるっス。だからその前に一度、与える人とお話するのは必要っス。……多分、謹慎中でも許可降りると思うっスよ」


「ホント?」


「そこら辺は話してみないと分かんないっスけど、やる気あるならやってみるっス」


「……分かった。ありがと、ルンヴィ」


 恥ずかしそうに小さくお礼を言ったルンヴィ。

 私の心の琴線にジャストヒットして鼻血でかけたっス。


「よーし。会ったらまず、文句言ってやるんだから!」


 絶対そんなの無理だろうなーって思いながら、私は「がんばー」とだけ伝えてその日はお暇したっス。




 後日。


「えへへぇ……」


 お花が咲きそうなぐらいに顔を綻ばせた海神がいたとさ。


明日で閑話は終わりです。

20150127_訂正

絶対数→全体数

絶対量→信仰量

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