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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
4/55

一話 〃 ―②

帰りの電車やバスを待つそのほんのちょっとの間にどうぞ。

 ☆




 昔々のその昔。三人の魔法使いが、山の中で暮らしていました。


 一人目は、火や、水や、風や土など、自然の力を生み出して、自由に使える魔法使い。

 二人目は、傷や病を癒し、力持ちになったり足が速くなったりできる魔法使い。

 三人目は、物を浮かせたり、空を飛んだり、その場から姿を消したりできる魔法使い。


 その三人の魔法使いは、それぞれの魔法を自慢しながら、楽しく暮らしていました。

 そんなある日の出来事のお話です――――。




 ☆




 ――――まってまって。話の始まりだけどちょっとまって。


 なんかすごいいいこと聞いちゃったよ僕。




 物を浮かせたり、空を飛んだり、姿を消したり……そんな魔法使いがいたの?




 めちゃめちゃ知りたい!

 それメッチャ知りたいよ僕!


 絵本を食い入るように見るフリをしながら、僕の小さな脳みそは興奮のあまり妄想でフル回転。


 もしも。もしも僕がふわふわと空を漂える魔法使いになれたら?


 ――将来歩く必要ないじゃないか!!!


 もー大発見だよこれ。

 この魔法絶対僕のためにあるよこれ。

 今、すごい運命感じてるよ僕。

 そして巡り巡ってミルイニちゃんありがとう。愛してる。


 ……いや、ちょっと落ち着けよ僕。


 この魔法使いたちは三人いたね。

 もしかしたらこの“三人”の区分けって、さっきのお母さんたちの会話と関連性がある?


 ……ありそうだなあ。ちょっと考えてみようか。


 お母さんは、火や雷が使える一人目の魔法使いにあこがれたんだろうね。

 読み聞かせの中で喧嘩中の三人が、競い合いで一人目が火や雷とか色々ぶっ放している。

 だから、一人目はそういう自然を扱う系統の魔法使いなんだろう。

 適当にこれ“第一”とでもしておこう。


 でも、お母さんはその才能がなくて、二人目の方の才能――素手で鋼を砕けるくらい強くなれるような魔法を使える――があったのだろう。

 他の二人の怪我をなんだかんだ言いながら治してあげてる絵本の中の魔法使い。

 リアねえが帰ってくるたびにできてる擦り傷がいつの間にか治ってたのは、お母さんがそういう魔法で治してたのかな?

 二人目の魔法は肉体に関する魔法かな? 分からないので、前に倣って“第二”としておこう。


 そして最後。僕が憧れる三人目の素敵な魔法使い。

 ドラゴンを落とす勝負(どうしてそうなった)でよく分からない魔法を使って一瞬で空から地面に叩き落とした。

 他にも、一瞬で別の場所にワープしたり、遠くの場所に声を届かせたりと、なんか色々と芸が広いなあ。

 彼の魔法は……よく分かんないなこれ。括り不明の“第三”ということにしておこう。


 色々情報過多になっちゃったからザックリ纏めると。


 魔法は大きく三つの系統(第一、第二、第三と仮称)に分かれてる。

 で、人にはこれらの適性みたいなのがあるらしい。


 お母さんはその中で第二にあたるのだろう。そして恐らくお父さんも同じ。


 はい、ここで一つ疑問。


 僕、浮ける?


「――三人は再び話し合って『ぼくたちは、それぞれ違うことが得意なのだから、争うことに意味はない。だから三人で行けばいい』と三人で納得し、見事、三人で魔王を倒しましたとさ。めでたしめでたし」


 物語の結末はどうでもいいよもう。

 とりあえず拍手だけしとく。


 僕は今、現実を前にして悩んでいる。

 適性がないとどうなんだろう。使えないのかなあ。


「ベル、どうだった?」


「まほー!」


「あら、気に入ったのね」


 ……今勢いだけで返事したけど、大丈夫だったかな?

 変なことは口走ってはないと思うけど。 


 考えるのは一旦止めて、お母さんを見上げる。


「ベルはどの魔法が好きかしら?」


「さーん!」


「三人目……超常の魔法ね。不思議な魔法って魅力的よねぇ。……でも」


 僕が勢いよく答えると、よく分からない三つ目が“超常”だと判明した。

 どの魔法も超常的だと思うけどねぇ。


 それはそうと母さん。皆まで言わないでいいからね。


「私もクロードも、生命系統なのよねえ……私の祖父でも、自然だしねえ。というか、超常系統ってそもそも……」


 言わないでって言ったのに!

 ……とりあえず情報修正。


 魔法の系統は大分して三つ。


 第一に“自然系統”。

 第二に“生命系統”。

 第三に“超常系統”。


 らしい。


 両親は生命系統だけど、お母さんのおじいちゃんは自然系統だった、と。


 うん。


 超常系統は?


「……うん。ベルが頑張れば、きっと使えるわ」


「あーい?」


「さ、お昼寝をしましょう。子守唄を歌ってあげるわ」


 半ばムリヤリ話題を切り上げられて、僕は抱き上げられて僕の部屋へと移される。これ完全にダメなパターンじゃない? やだなあ。


 僕は赤ちゃん用ベッドの中で、超常魔法に憧憬と諦念を抱きながら、お母さんの子守唄で眠りについた……。




 …………。




 ――――なーんて、うっそだよー! 僕、起床っ!


「だーう!」


 ベッドの中で両手足を突き上げる。

 これぞ秘技・寝たふりである。


 憧憬? 諦め?

 そんなこと思うわけないでしょ。

 僕をなんだと思っているのさ。

 ……いや、確かにちょっとできそうもないならめんどうだしやらないでいいかなって思ったけどね。


 その怠惰を押し退ければ僕ならできる(と信じてる)。

 系統が遺伝だろうがそうでなかろうが、関係ない(と信じてる)。


 やってみせるよ。そしてやるからには成功させるよ!


 なあに。普段はぐーたらだけど、ちょっと真面目にやれば自分一人浮かせるぐらいお茶の子さいさい……。


 お茶の子さいさい……だけど……。


 ……いや待って。

 流石にどうやって魔法が使われてるのかが分かんないね僕。


 どういう原理なの?


 燃料は必要なの?


 頭を使う感じ?


 それとも体力勝負?



 ……………………。



「あーまーし!(後回し!)もーねう!(もう寝る!)」


 突き上げた手足を投げ出して僕は寝た。


 どうするかは起きてから考えよっと。

三部は翌日の朝8:00に更新いたします。

多分、第三話が終わるまでは毎日更新です。確率としては四割五分。

私自身が怠け者なので……ふへへ。


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