九話 〃 ―②
町景色が一転して蒼海煌めく景色へと変わったのに、僕は感嘆と呆れの息を吐いた。
「超便利……でも魔力のムダが多過ぎ」
「うるっせ。てか、酔わねえのな」
酔う? 何に?
まあいいか。
そんなもの知ーらない。
「魔力の半分以上がムダ。僕ならソレを削って、さらに五分の一までできる」
「へーへー。下手くそでサーセン」
サヴァさんなら十分の一ぐらいにならできるんじゃないだろうか。
サヴァさんのDEXがどの程度なのかは知らないけど。
「だから、さっさとCぐらいにはしてね」
「……それは無茶だろ」
アシが顔を顰める。
できるできるやればできる。
死に物狂いでやればできるよ。
ため息深く、頭を掻きまわしまシフト。
たんこぶに触れて固まったあと、彼は頭を振って、『そんなことより』なんてのたまって僕に尋ねた。
「なんでここに来たんだよ?」
「海と水着の女の子が見たいから」
「はっ!? なんか話あるとかじゃなく!?」
素っ頓狂な声を上げる彼をスルーして、僕は座り込んで海の方を眺める。
うん、今日も綺麗だ。
……あ。
あそこにいる子、可愛いな。
「おい聞いてんのか?」
「黙って。あの女の子が躍動してあのたわわなおっぱいを揺らす瞬間を見逃したくないんだ」
「うわあここ一番の饒舌っぷり」
「う~ん。僕がもう少し幼ければ迷子のフリして泣きついて抱かれにいったのになあ」
「やんないだろうけど、やめろよ?」
「いや、まだまだいけるかな? どう思う?」
「……やめてくれ」
アシにがっしりと肩を掴まれた。
僕を行かせまいとして、中々強く掴まれてる。
やだなあ、冗談に決まってるのに。
五パーセントほど。
「称号通りのおっぱい魔人かよ」
「そうだよ。今更だね」
呆れ口調のアシに、僕は胸を張る。
それはミルイニちゃんから賜った栄誉ある称号だ。
三番目か四番目に誇らしいね!
ただそろそろ表示オンオフの自由が欲しいね!
「そういえば、アシは称号少ないよね」
彼の啓示を思い返してみる。
あったのは“空間魔法使い”と、“不撓不屈の少年”の二つだけだっけ。
なんかこれだけ見るとカッコいいよなあ。
僕なんてこう、おっぱい大好き! としか分かんないし。
「……他にもあるっちゃあるけど、人に見せるのはどうかって感じだから隠してるよ。寧ろお前はなんであんなにオープンなんだよ」
「二つほど非表示にできないから、もう全部そのまま」
「……アレね。つか、そんなことあんのか」
「愛されてるよね僕」
「は? あ、え、お、おう。そ、そうだな?」
困惑するアシ。
なんで困惑するのかな?
こんなに愛されてる証拠なのに。
解せぬ。
そこからしばらく無言タイム。
話すこともなく二人で海を眺める。
ボーっと前方の楽園を見続けていると……。
「なあ」
「何」
「あの黒とフリルの水着の人」
アシが指を差す方を見る。
中々綺麗な人だった。
そして。
「……スッゴイね」
「凄いな」
「おっぱい大きい」
「足スラーッとしてる」
意見が違ったような気がしたけど、僕たちは気に留めやしなかった。
「腰周りの細さが大きさを際立たせてる」
「細くとも分かるあの太ももの柔らかさ」
「動きに付き添ってよく弾んでる」
「脹脛から足首にかけてのあのキュッとした感じ」
「それでいて形もまたよく変わる」
「そして砂を踏みしめる爪先まで綺麗な足」
「「たまんねーなあの人!」」
なんて女の人だ。
素晴らしいおっぱいだ。
見た中で最高クラスなのは間違いない。
ああ、埋もれたいなぁ~。
「……あの人になら足蹴にされてもいいな」
「いきなり何言いだすの?」
ビックリして煩悩が吹っ飛んだ。
え、なんなの?
足蹴にされてもいい?
昨日といいなんなんだ、アシは。
もしやマゾヒストっていうやつなの?
「何君ドM? 重力いる?」
「ちげえから!」
彼には全力で否定された。
「殴られたりとかするのは好きじゃない。足蹴にされるなら、ちょっと心が躍るってだけだ」
「一体何が違うんだよ」
「手と足の違いだよ!」
ああ、うん。
そうだね。
その通りだね。
言われなくても分かるわそんぐらい。
僕はとても困惑してるよ。
返す言葉を失っていると、アシはハッとした。
と思えば、戦慄した面持ちになって、信じられないものを見る目つきで僕に問うた。
「……まさかお前、あの脚の美しさが分からないのか……? アレになら踏まれてもいいって思わないのか……?」
「綺麗だと思うけどそこまで思わないなあ」
「踏みつけられて足の感触楽しみたいだろ!」
「ヤダよ」
僕は優しくしてほしいよ。
膝枕をしてほしいよ。
そして下からおっぱいを弄ぶ。
「そ、そうだ! あのおっぱいになら叩かれてもいいって思うだろ!?」
「いや……う~ん……興味はある、けど……普通に揉みたいし埋もれたいよ」
「それは俺も思う。特にふとももだな。あと、足の甲とか舐めてみたい」
聞いてねーよ。
というか、なに?
こいつ結構やばくない?
「何? 君は脚……フェチ? アシ、脚フェチなの?」
「軽くな」
胸を張って言う足。
じゃなかった、アシ。
どこがだ。
どこが軽いんだ。
大分君重症だよ。
「フェチっていうのはな、それだけで欲情したりとかする奴のことなんだよ。そうじゃないんだよ。女の子だ! って思って真っ先に見るのが脚で、真っ先に触りたいと思うのが脚なんだよ顔の代わりに」
「誰も聞いてないからそんなこと」
というか、大分欲情してないかなそれ。
欲情してなくても興奮はしてるよね。
「お前だって真っ先に見るだろ?」
「最後のお楽しみだよ」
「……そう言う考えもあるのか」
それに僕は女の子のことは全体的に評価したいんだ。
おっぱいだけじゃなく、トータルで判断するんだから。
おっぱいの比は確かに多めだけどね。
「ううん……つまり、だ。君は『脚にやたらと重きを置いた女の子好き』ってことか。変態なんだね。もしかして脚魔人?」
「釈然としないし変態じゃないが大体あってるし似た称号はある」
あ、そうなんだ。
でも称号があって変態を認めないのはどうかしてると思う。
「……僕の足だから、仇名がアシだから、脚が好きなのかな?」
なんて因果だ。
僕は悲しいよ。
頭抱えたくなるぐらいには。
「ちげえよ! これは前世っからだよ!」
前世からかあ。
それは業が深い……。
……ん?
前世?
今、彼は前世とか言った?
「前世だって?」
「ああ……ああ! そうだよ忘れてた。この前、それについて聞きたかったんだよ!」
大声を上げて僕の方に寄ってきた彼は、小さな声で話し始めた。
脚フェチ野郎で今日は終わっちまいましたよ!
もうしわけねえ!




