八話 〃 ―④
べるくんぴーんち
「――ぶぼっ!」
そして、間抜けな声が後ろから聞こえた。
「ぷ、くくっ……」
「なっ、おもっ……!?」
「あははははは! ひ、引っかかった!」
僕は振り返って、砂の上に這いつくばってるだろう彼を眺める。
想像通り、彼は砂浜でうつぶせになって、苦しそうに顔を上げていた。
僕は煽る様に彼の頭を叩いてやると、彼は辛そうながらも声を上げた。
「これは、魔法っ!?」
「そうだよ……っ。む、無重力、は君も体験したっ、でしょ? そ、その逆の超重力場ぐらい、よゆっ、余裕っ、で作れるよ……っ!」
いやはや、ここまで綺麗に引っかかるとはね。
感動して涙が出てきちゃった。笑い過ぎて。
あ、これ、明日お腹が筋肉痛かも。
「ぐ……≪テレポート≫! う゛ぇぇっ!?」
「は、離れても無理だよっ?」
僕から離れた彼にそう言ってやるけど、彼は諦めてないようで。
「て、≪テレポート≫! ……な、なんでっ……!?」
「さて、なんででしょー?」
人のいる場所まで移った彼は、困惑しながら僕を見ている。
周囲の人に奇異の視線で見られてるけど、気づかないのかな?
「キャッ! ご、ごめんなさい!
「……い、いいえっ!」
……水着の女の子に足蹴にされて、なんで彼嬉しそうなのかな?
気にしたら、負けかな?
僕はふよふよと浮いて行き(それで僕にも視線が集るけど、シカトだ)、彼にニコニコと尋ねた。
「ねえ、どんな気持ち?」
「くっそムカつく!」
「答え知りたい?」
「いらねえよ!」
「じゃあ答え合わせね。はい」
ぎりっと歯を食いしばった彼は、悔しげに口を開いた。
「……最初はフィールドで制圧して、そっから俺自身に魔法掛けたんだろ!?」
「だーいせーいかーい」
中々感が良いじゃないか。
これなら都合が良さそうだね。
褒美に魔法を解除してあげよう。
「くそっ……まさか返り討ちにあうなんてな……」
「そのくらい未熟。何しようとしたかは知らないけど、君の負け」
立ち上がる少年のことをケラケラ笑ってやる。
悔しげな彼は、けれど無駄な抵抗はもうやめて潔く自分の負けを認めた。
「……煮るなり焼くなり、好きにしろ」
おお。
ますます都合がいい?
「そう? じゃあお願いね」
遠慮なく言わせてもらおうか。
「――君、今日から僕の“アシ”ね」
「――――は?」
彼は最っ高に呆けた顔をした。
☆
――――――――――――――――――――
アキラ・シフト
Sex:Man Age:7
Status
STR:C- VIT:A- AGI:C+
INT:B-- MIN:C DEX:E++
Ability
生命魔法:【強化】C
超常魔法:【空間】C-
Gift
空神の加護 戦神の加護
Name
空間魔法使い 不撓不屈の少年
――――――――――――――――――――
教会に戻ってきて、まず彼の啓示を見せてもらった。
見せてもらったんだけど、うん。
殴られてたら僕、死んでたかもね!
サヴァさんはともかく、ミルイニちゃんがこれを知ってたら心配は頷ける。
死ななくても大怪我は必至だね。
見た目以上に体強いんだねアシ君。
殴られたくないや。
「満足かよ? それじゃ、神父が来る前に早く――」
「まあまあ。僕のも見てってよ。ほら」
「お前ぇー!」
僕は彼の言葉を無視して、啓示を曝してあげた。
――――――――――――――――――――
ベルフェルミナ・ゴルドス・アーケディア
Sex:Man Age:5
Status
STR:G- VIT:F AGI:F++
INT:A+ MIN:A++ DEX:B+
Ability
自然魔法:【水】D+
生命魔法:【治癒】D--【強化】E
超常魔法:【重力】A--
Gift
海神の寵愛
≪越界する魂≫
≪メモリーホルダー≫
≪???≫
Name
海神の寵愛者 アーケディアの奇才
重力魔法使い ナマケモノ
やる気ない努力者 ファミコン
おっぱい魔人 女の子大好き
海神一筋 ≪???≫
※≪ ≫内部は
特殊条件下を除き他者に認識されません。
適性限界値は
特殊条件下を除き啓示に表示されません。
――――――――――――――――――――
ん? なんか称号が増えてるな。
さっきはなかったのに……ルンヴィちゃんか?
「……おい、なんだこのぶっ壊れステは」
逃げればいいのに、彼――アキラ・シフト(愛称はやっぱり“アシ”)はしっかりと見てた。
まあ、魔法に関してはぶっ壊れてるとかそう言うレベルじゃないのは自覚してる。
けど、君も君で全体的に成人男性レベル越えてるから。
VITはいかれてるから。
十分におかしいね彼も。
「見た通りだよ」
「いやいや。お前、いつから魔法使ってたんだよ」
「一歳からかなあ」
「……あり得ねえ」
聞けば彼は、空間魔法の練習を始めたのは二年前。
つまり五歳の時で、洗礼の後かららしい。
「元々必要に駆られて【強化】は使ってたからあるのは知ってたけど、【空間】なんて使えること知んなかったからなあ」
「ふうん。でもまあ、二年頑張ったわりにDEXはクソだね」
「ほっとけ!」
まあ【強化】の魔法って出力――INT任せでもなんとかなっちゃうところあるからなあ。
アシの魔法のステータス値は、当然と言えば当然なのかな。
正直僕のDEXの伸びも、サヴァさんに依る所も大きい。
それでも放出の無駄の無さに関しては完全独学だから、半々だと思ってるけど。
僕でも半々だから、彼へのこれ以上のお咎めはナシにしておこう。
「……なあ、一つ聞いていいか」
「なに突然真面目な顔して」
真面目というか、神妙というか、迷っているというか。
なんか告白する女の子みたいでキモイ。
いったい何さ?
「お前って――」
ん? あー、待った。
「神父さん来るよ」
「おぉぉえぇぇぇっ!?」
叫ぶ。
でも、小声。
なんて器用なことするんだろう。
「くっそ! 今日はもう帰るからな!」
「おっけー。近いうちにこっちから行くよん」
と言うか多分、連行されるよ。
「聞きたかったことはその時に聞く! ――じゃあな! ≪テレポート≫」
「またねーん」
そう僕が手を振った直後には、彼の姿は消えていた。
うーん……いいなあ。
便利そうだなあ≪テレポート≫。
「――おや、ベル君。海はもういいのですか?」
「うん、まあ」
丁度入れ違いになる形で、神父さんが入ってきた。
彼はいつも通りの笑みを浮かべながら僕の所まで来ると、尋ねた。
「お話は楽しかったですか?」
「そこそこ、かな」
「そうですか。ところで――」
神父さんは、そこに少しだけ怒気をに孕ませながら、言った。
「ここにいた、悪戯小僧がどのようにこの場から立ち去ったか、教えていただけませんか?」
「もうしわけありません。ほんにんにきいてください。まほうです」
僕は黙秘権を行使した(はず)。
頑張れ、僕の足。
STRとVITが一切伸びてない紙装甲。
まだ五歳ですし(震え声)




