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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
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八話 〃 ―②

 あの後改めて注意した後、無重力体験はおやつの時間まで続いた。


 終わる時は、未だ無重力にてんやわんやのシスターさんに頼んで他の人を呼んでもらって、数人ずつ外に出す形で終わらせた。

 いきなり魔法を止めたら、危ないどころじゃないからね。

 シスターズパワーで、並ばせればよかったのかもしれないけど。


「今日のおやつはプリンでーす!」


『わー!』


 食堂で集まってのおやつの時間に、僕は同伴させてもらう。

 僕の分までしっかりあるということは、なるほど、しっかり計画されてたらしいね。


 けどまあ、プリン。

 大きい、プリンか。

 プリンはいいよね。

 食べるの楽で。

 その観点でいえば一番好きなのはヨーグルトだけど。

 ああ後、プルプルしてるから好き。


 いただきますの合図の後に、みんなはこぞってプリンを食べ始める。

 そんながっついてもしょうがないから、僕はゆっくり食べようか。


 スプーンで掬って、ぱくり。

 んー、あまい。

 カラメルが掛かってないのは残念だけど、これでも十分だね。


 もう一口食べようとして――気づいた。


「……へってる?」


 一口か二口分ぐらい、明らかに余計に減ってる。

 僕が横から掬った分と違う、身に覚えのないスプーン跡が奥の側に。

 もちろんだけど、食べた覚えはない。


 左右を見るけど、多分この子たちじゃない。

 向かいにいる子でもないだろうね。

 自分の分になんだか必死だし。


 一体、誰が――。


「……え?」


 なんとなく見渡していたら、ふわふわちゃんのプリンが僕と同じように掬い取られていた。


 ポッと宙に現れたスプーンの先によって。


「ふわぁ……」


 ふわふわちゃんはそれに気付かずに蕩けている。

 一大事が起きているのに気付かないとは。


 今一度みんなを見回すと、どうも彼らはそのスプーンへの危機感からがっついているようにも見える。

 自分のプリンがとられないよう、プリンを凝視している感じだ。

 これはどうも、よく起こる事態みたいだね。

 あまり和気藹々としてないおやつタイムだなあ。

 つまらなさそうだ。


 まあそんなわけだから、犯人は狙い易い的に絞っていくしかないよね。

 例えばふわふわちゃんのような鈍感なタイプとか。

 そして例えば。


「始めてここに来た人、とか」


 ガチンッ!

 食堂に難い音が響く。

 バットみんながこちらを向けば、殆どの人が目を丸くした。


「……つかまえた」


 僕のスプーンで、向かいに突然現れたスプーンの先を押さえつけた。

 もうちょっと遅かったら皿ごとプリンがひっくり返りそうだったから、内心冷や汗だけど。


「す、すげー!」


 誰かが声を上げる。

 自惚れを過剰にプラスして言わせてもらえば、多分僕はヒーローのように映って見えてるだろう。

 実際、男の子の何人かは立ち上がって興奮気味だ。


「ベルが妖怪おやつ齧りスプーンを捕まえたぞ!」


 ……妖怪なのこのスプーン。

 まあ、その気持ちは分からなくもないけど。

 タネが分からなければ、妖怪みたいなものだし。

 この場でそれに気づける人は、僕と犯人を除けばいないみたいだから猶の事だ。


「……あら」


「き、消えた!」


「妖怪スプーンがこつぜんとすがたを消した!」


 ざわざわしだして、シスターさんたちがようやくこちらに注意を向ける。


 遅いなあ。

 常習犯がいるのに、見張らないとダメじゃない。

 折角、犯人が分かり易かったのをみすみす逃しちゃって。


 とりあえず事の顛末だけ話した後、幾分か明るいムードでおやつタイムは再開した。

 スプーンを抑えただけだから、犯人は依然として分からないままだけど。


 ――なんて、ね。


 僕はプリンを口にしながら、にっこりと笑って見せた。

 僕の笑顔の先にいるその少年は、顔をやや青冷めさせたまま、僕に笑顔を返して大人しくプリンを食べ続けていたのでした。




 ☆




 おやつタイムが終わった後。

 今日の所はそれぐらいで僕は帰ることにした。


 また来てね、と子供たちからはおろか、シスターさんにも念を押して言われた。

 多分、近いうちにまた赴くことになりそうだね。




 帰路の最中、海を見ていくかどうか悩んだ。

 けど、優先するべきこともあったし、なにより家を通り過ぎる形になるから、今日は止めておいた。

 曇り空だから、めんどうを押して行くほど

でもないだろうし。


 大人しく家に帰って、僕は調べものをすることにする。

 無論、サヴァさんを使ってね。


「サヴァさん。かみかくしみたいなまほう、しらない?」


「はて……神隠し、ですかな?」


 サヴァさんは珍しく答えに詰まってた。

 困惑した表情で、逆に問いを返してきた。


「それは……神をお隠しになる、ということですかな?」


「……あー、ちがう」


 そう言う意味で取られちゃってたのか。

 そりゃあ答えに詰まるよね。

 神をころす魔法なんてものを、僕がいきなり聞き出したら。


 そんなもの、全く興味がない。

 言い方を変えないと。


「……ひとやものが、パッときえたりでてきたりするまほう」


「――成程。神を隠すのではなく、神がお隠しになる、という意味でしたか。言い得て妙でございます」


 なんて僕を褒めた後に、一言。


「確かにございます」


「……そっか」


「そのような魔法が、どうしたので?」


「うん。まあ、ちょっとね」


 僕はサヴァさんに起こったことと自分の見解を、言葉少なに述べた。


 それを聞いてサヴァさんは納得したようで、快くその魔法のことについて教えてくれた。


「――それ以上のことは分かりません。恐らく、詳細に載っている文献も少ないでしょう。……可能性があるとしたら、教会の書庫でしょう」


「やっぱ、うちにはない?」


「ええ。お分かりかと思いますが、この家には魔法の文献は少ないのでございます」


「……ま。さいあく、ほんにんにきけばいいね」


「それが一番手っ取り早いかと」


 けれどサヴァさんは、『ですが』と続けて。


「その方は、ベル様よりも年上の方でしょう? 大丈夫なのですかな?」


「……ぼーりょくとか?」


「ええ。聞く限りでは、そのような暴挙に出られる方ではなさそうですが」


 平然とした顔でサヴァさんは言うけど、彼は目を伏せていた。

 けど、これは普通に心配している証拠だ。


 まあでも、大丈夫。


「カナリアちゃんに、うけみはならった!」


「……大丈夫、なのですかな?」


「おすみつき!」


 自信満々に言い張った僕に、サヴァさんはとても困った顔をしたのだった。


全部妖怪の所為だ。

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