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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
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八話 孤児院に住む魔法使い(足) ―①

 ある日のこと。

 いつも通りに教会に寄ったら孤児院に連行されちゃった。

 と言っても海の日から一週間後の出来事だから、別にそこまで驚いてはないけどね。

 約束はしてたし。

 バックレようとはしてたけど。


 でも、できなかった。

 シスターさんに誘われちゃったら、断れなかった。

 隠れ豊満ボディさん達に誘われたら、バックレなんて無理だよ。

 ズルい。ズルいよ。


「皆、ベルくんに会えるの楽しみにしてるわ」


「そっかー」


 シスターさんはそんなこと言うけど、アレだよ。

 みんな、僕の魔法が目当てなんだよ。どうせそんなもんだよ。

 ああ、分かった。

 僕が魔法を使う代わりに、友達になろうか。

 ギブ&テイクの友情だ。もろそう。


「さ、ここよ」


 連れられた場所は、なんというか幼稚園みたいな雰囲気のある場所だった。

 “コ”の字の建物の中央に、遊具のある運動場。

 引き受けている子たちの数の割には、建物が大きいように感じる。


「おおきいね」


「そうね。でも、これでも昔は手狭だったのよ」


 へえ……じゃあ、今は良い傾向にあるのかな?

 まああまり関心はないから「ふーん」と答えるだけにしておく。


「あ、ベルだ」


『ベルだ―!』


「ふわふわだ~」


 門を抜けて運動場に踏み入ると、シスターさんが声を掛けるまでもなくその場にいた子供たちが群がってきた。

 最後の子がすごい直球なこと言ってきたけど、可愛いから許してあげる。


「はいはい。皆落ち着いて」


 わいのわいのと集まる子供たちを制すシスターさん。

 みんな口答えせずにビタって静かになるあたり、躾けられてるなあって思う。


「みんな海でもう会ったと思うけど、また改めて挨拶をしたいと思うの。だから一旦、大広間へ行きましょう」


『はーい!』


 しかし、やっぱり子供だ。

 返事をしたら、ズドドドドと地面を鳴らしながら中に走って行った。

 そして中にいたシスターさんに『手を洗え』と怒られて、手洗いレースを始めていた。


 ……あそこで洗うのは億劫だな、ここで洗ってしまおうか。


「あら? ベルくん、それは?」


「おてあらいまほう」


 ≪ウォーター≫に手を突っ込んで、中で水流を生むだけのお手軽魔法だ。

 決してトイレット魔法じゃないから、勘違いしないでね。

 ……うん、そうだよ。

 お風呂も最近こんな感じだよ。

 ただ、垢とかはまだ落としきれないから、泡を落とすときだけに使ってる。


「ベルくんは偉いわねー」


「! ……それほどでも」


 もっと褒めていいよ?

 抱きしめてもいいよ?

 けれどそこまではされず、頭を撫でられただけだった。

 まあ、不満はないけどね。




 ☆




「ベルフェルミナ・ゴルドス・アーケディア。ごさい。よろしく」


 パチパチと拍手が鳴る中、僕はお辞儀をしてから浮き上がる。

 おおっ、とみんなが湧き上がるけど、シスターさんの声で再び沈黙した。


「はい。自己紹介はこれでおしまいですが、一つ注意があります。ベルくんが魔法を使うのは、一人三回までです」


『えー!』


 高らかなブーイング。

 ごめんね。それ以上は僕が怠い。

 むしろ三回もやってくれる僕に感謝しなよ?

 ……この傲慢な感じは僕の性には合わないな。


 あ、そうだ。

 周りを見回して気づいた。

 良いことを思いついた。


「シスターさん」


「はい?」


 僕は自分が楽をするために、もう一つ別の選択肢を提示する。

 やや分かっていない顔をしたシスターさんが、僕の言葉をそのまま伝える。


「えっと……ベル君が、この部屋の中だったら、別の魔法になるけどずっと使ってられるそうです」


『えー!』


「なにそれー?」


「どんなのー!?」


「ふわふわー」


 よし、そこの薄緑の髪の君。

 これから“ふわふわちゃん”な。


 それはさておき、予想通りにみんなは喰い付いてきた。

 あとは……そうだなあ。

 実際に、シスターさんにやってみてもらおうか。


「シスターさん」


「はい」


「≪グラビティ・ゼロ≫」


「へ?」


 ふよんとお尻をタッチして、家族に大好評だった無重力魔法を掛ける。


「ひゃん!」


 そしてもう一度お尻を、今度は両手で突き上げるようにして押して、シスターさんを宙に浮かせた。


「わ、わ! なにこれ!?」


 あっはは。素が出てる。可愛いなあ。

 でも、テンパり過ぎててどういう魔法かとか説明は無理そうだなあ。

 まあ、話してないから当然だけど。


 しょうがない。

 目を輝かせる子供たちよ。

 よーく聞いておくがいい。


「むじゅうりょく。跳んでも下に落ちない」


『おおおー!!』


「ふわー!」


「えっ、ど、どうすればいいの!?」


 慌てるシスターさんを放っておくのも可哀そうだ。

 とりあえず連れ戻してあげる。

 その後軽く説明して、僕の代わりにちょっと手本をやってもらう。


「こ、こうで――いたっ!」


 ぴょーんと跳ねすぎたシスターさん。

 ヒューンと天井までいって、頭をゴチン!

 頭を抑えながら反作用でこっちにゆっくり戻ってくるシスターさんを、みんなが『あはは』と笑う。


 ……ウチのみんなが運動神経いいのか。

 それとも彼女が運動音痴なのか。

 どっちだろう。

 こうなるならリアねえ連れて来れば良かったかな。


 まあでも。


「……やる?」


『やるー!』


「ふわふわ~」


 こんなに目を輝かせて、やって欲しそうに見てる子供たちなら、体当たりで覚えるよね?


 高そうなものや、怪我をしそうなものは一切ないみたいだから、もう魔法をかけてしまおうか。


「≪グラビティフィールド・ゼロ≫」


「わ!」


「軽くなった!」


「ふわふわー?」


 子供たちは起こったことを直ちに察したようだ。

 すぐにピョンピョンと跳ね回り始めて、ふわふわちゃんはふわふわしてた。

 う~ん。シスターさん運動音痴説濃厚だなあ。


 それは一旦置いておいて。

 僕はあっちこっちにいる子たちに注意する。


「このなかだけだから、でるとききをつけ――あ」


「……ふわふわ……しない゛っ」


 そのまま外に出ようとしたふわふわちゃんが、べしゃっと床に落ちた。

 慌てて近くにいた黒髪の少年が近寄るのを見ながら、僕は額を叩いた。


 あちゃー、遅かった。


無重力場かあ……。

20150115_誤字訂正

部屋の赤→部屋の中

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