六話 〃 ―④
【水】の魔法の扱い方が、カナリアちゃんの教えが良いのか上手くなっていくのが分かる。
流石に重力魔法ほどじゃないけど、かなり水の操作がしやすくなってきてる。
それに、【水】魔法を上手く使えるようにば、もしかしたらお風呂で髪や体を洗うのが楽になるんじゃないかなって。
そう思い始めてお風呂でも練習してるし。
なので最近の僕は、結構真面目に教えてもらっていたりする。
「今日は、これで終わり」
「カナリアちゃん、ありがとーございました」
今日の分のノルマと、一つ先の所まで終えて練習は終わった。
カナリアちゃんに手を引かれながら訓練場を後にする。
「……そういえば、啓示のこと……考えて、くれた?」
「……あー」
その帰りの途中、再び尋ねられた。
またしてもちょっと忘れかけていたことだった。
どうしようか。
『女の子好き』が増えた今、まだちょっと見せられる状態じゃないよね。
「きょうはだめ」
「……じゃあ、今度?」
「こんど」
「……期待しておく」
ひらひらと手を振って、カナリアちゃんは訓練場を後にした。
うん、今度だ、今度。
できるだけ早いうちに、いつか見せたい。
……まあ、最悪見せちゃってもいいよね。
カナリアちゃんやロザリーちゃんとかなら、たぶん大丈夫だ。
「――今日は、いつもみたいにシスターたちとは遊ばないのですか?」
ごろごろと教会で本を読みながら、僕は神父さんにゆっくると首を振る。
「しばらく、やらない。おこられた」
「それは、何方に?」
「すきなひと」
「それは仕方ないですね」
にこやかに笑いながら、神父さんは本棚の整理をしている。
僕はそれを眺めながら、ただ黙ってぐだぐだとしていた。
「そういえば」
ふと神父さんは手を止めて、僕にこう問いかけた。
「ベル君は、この街の海を見たことはありますか?」
海かあ。
暑いんだよねえ、日差しが強くて。
「……ない」
「それは勿体ない。この街の海は世界で一番美しいと言われてます」
『だから海神の教会があるのですよ』と、彼は少し誇らしげにしながら僕に言った。
そう聞くと、確かにもったいないと思う。
ミルイニちゃんの寵愛もあるし、赴いた方がいいのかな。
――って、ちょっと待って。
海、海と言えば。
水着――女の子の肌やおっぱいが、とても眩しく見える、素晴らしい装い。
あの、魔性の薄着姿がそこかしこにあふれるのが、海なんじゃないか……っ!
なんてことだ。
僕は五年間今まで、こんなに素晴らしい機会を逃し続けてきたのか!
大馬鹿野郎だ。
僕は、大馬鹿野郎だ!
「……うちの孤児院では、七と八の月は月に二、三回ほど、海で遊ぶ機会があります」
僕が心の中で果てしない後悔に苛まれていると、神父さんが突然そんなことを言い出した。
「その時は、修道女全員が海に出るんです。――水着姿で」
僕は跳ね起きて、彼に詰め寄る。
それはいつだと、目で問い質す。
「次は、五日後に行う予定です。ご家族の皆さんも誘って、ウチの修道女や孤児院の子たちと一緒に海で遊びませんか?」
「そうする」
即断即決。
僕は大きく頷くと、彼は満足そうに踵を返した。
そして、最後に一言。
「ウチの修道女は、脱ぐと凄いですよ」
是が非でも行こう。
僕一人でも行こう。
僕はミルイニちゃんの機嫌のことをすっかり忘れ去って、そう決意した。
☆
「――海?」
「うみ。しんぷさんに、さそわれた」
大事な部分だけ言わないで、僕は神父さんに言われたことを夕食の席でみんなに話した。
心の中の情熱が迸るのをなんとか制して、だ。
言ってしまえば最後、リアねえやルナから“おっぱい魔人”コールを喰らってしまう。
それだけは、当日までは避けたい。
「五日後は、丁度非番だな。折角だし、行くか」
「そうね。ベルが生まれてからは一度も言ってないから、それもいいかもしれないわね」
「じゃあわたし、友達もさそう!」
特に反対意見もなく、海に行く流れになっている。
お母さんたちは僕たちの水着のことだとか、色々と準備について話し始めた。
「ねーおにい。うみってなーに?」
そんな中、まだ海が分からないルナが僕に尋ねてきた。
そう言えばそうだった。
ルナもまた、まだ海を知らないのだ。
「しんぷさんがね、しょっぱいみずがいっぱいにひろがったとこ、っていってた」
「しょっぱいの?」
「しょっぱい」
「しょっぱいんだー」
へー、と頷きながら、楽しみなのか目をキラキラと輝かせている。
見てるだけで癒される天使だ。
……惜しむらくは、ルナがまだ二歳で水着にあまり魅力がないことか。
また今度(十五年後ぐらい)にでも一緒に行こうね!
「ねーおかーさん。うみってしょっぱくておっきいんだって」
「あら! よく知ってるわね。その通りよ、すごいわねえ」
「えへへ……おにいがおしぇーてくれた」
天使じゃん。
超笑顔でお母さんに撫でられるルナ。
超天使じゃん。
「ベルもよく知ってたな」
「しんぷさんがいってた」
僕にはお父さんが代わりに褒めてくれたので、近寄ってきたお父さんに小声で告げた。
「あと、シスターはぬぐとスゴイって」
「…………それは由々しき事態だな」
今まで見たことないほど真剣な顔つきで、お父さんは呟いた。
その気持ちは分からなくもない。
確かに由々しき事態だからね。
「よし! じゃあ五日後だな。ルミ、悪いけどベルたちの水着は頼めるか?」
「ええ、モチロンよ」
「後はそうだなあ。ロザリアとカナリアでも誘ってみるかな。確か非番が被っていたはずだし」
うひょう、本当?
願ってもないことだね!
「カナリアがどうなるか分からないが、ロザリアはまあ来るだろう」
「なら、リアの友達がいてもまとめて面倒見れそうね」
「巡回の騎士もいるし、安全面では大丈夫だろう」
――そうして、五日後の海の予定はしっかりと詰められて決定した。
水着の女の子……楽しみだね。
…………三日後ぐらいにルンヴィちゃんに。
『ミルイニが「水着の女の子想像して鼻伸ばしてる」ってカンカンっス』
なんて言われて物凄い焦った。
でも、僕の決意は揺るがなかった。
ベルに海神の寵愛を授けたのは、水着回を増やすため。
つまり、次話以降も水着回は度々出てくるのです。
次回! 冬なのに水着回~南半球は夏だから無問題!~
まだまだキャラが少ないから、そんなに濃い回じゃあないよ!
今日の夜八時に没部分投稿します。
興味がある方はどうぞ。なければ明日の朝まで待っていてください。
読まないでもいつか作中で出てきますので気にしなくても結構です。




