六話 〃 ―③
「ねーサヴァ。ひとぞくとか、まものとか、いきものおおいんだね」
「そうですね。魔物は限られた数だけですが、最近では色々な種族や魔物が 我々の生活に溶け込み、我々もまた彼らの生活に溶け込んでいます」
遅くなったお昼ご飯の後、お茶を淹れてくれたサヴァにそんなことを言った。
このことにはあまり意味はないけれど、覚えたことを伝えるのは良い会話になっていい。
ルナのお手本にって思いながらやってるだけだけど、なんか習慣づいちゃった。
「近しい人でしたら確か、カナリア様がエルフとドワーフのハーフだったと記憶しております」
「……ほんとに?」
サヴァさんに言うと、たまーにこういう思いがけない情報が貰えるから、話すのはなおいいよ。
「そうよー。お父さんに聞けばちゃんと教えてくれるから、聞いてみたらいいわ」
「そーする」
お母さんに言われた通り、夕飯前にお父さんをとっ捕まえよう。
「……えるふ? どわーふ?」
今は可愛く首を傾げる妹に、僕が知ったことを教えてあげよう。
「……それって、どんなのなの?」
「わかんない」
「わかんないの……?」
しゅーんと残念そうな顔をするルナ。
ああ、ごめん!
ちゃんと調べてなくてごめん!
くっそ! ちゃんとあの先も見ておけば良かった!
面倒くさがった僕に言ってやりたい。
ちゃんと読めって言ってやりたい!
……その前にさっさと帰れって言う方が先かな。
「種族のことなら、お母さんが教えてあげられるわよ~」
ニコーッと両人差し指で自分を差すお母さんが、頼ってオーラを出してくる。
お母さん、魔法のこと以外は大分サヴァさんとかに役目取られちゃうから、そういうのに飢えているらしい。
リアねえはお父さんっ子だし、僕は(成り行きで)サヴァさんっ子だったし、ルナには頼ってもらいたいんだろうなあ。
「おかさん、おしぇーて?」
「もっちろんよ! ベルも聞いてね!」
「わかった」
お母さんが嬉しそうで何よりです。
ルナには僕の代わりに、精一杯お母さんに甘えて欲しい。
僕も隙あらば(おっぱいに)甘えるから!
「いい、よく聞いてね――」
お母さんが話してくれたのは、それぞれの身体的な特徴といくつかの長所だった。
エルフは、長く尖った耳と華奢で線の細い体だそうだ。
人の三倍は長命で、身体的に晩熟だから見た目と年齢が全く噛み合わない。
体は弱いけど、【炎】【雷】以外の自然魔法の扱いに長けているらしい。
ビーストは、名前の通り獣の特徴を体に残しているらしい。
彼らは長所が更に種によって異なるから、一概にこうであるとは言い切れない。
ただ、多くは身体能力が高く、魔法が苦手であるそうだ。
ドワーフは小柄で、見た目にそぐわず腕っぷしが強い。
手先も器用だそうで、鍛冶や宝石細工なんかが得意だと言う。
そしてお酒にとっても強く、三度の飯より飲むのが大好きらしい。
マーマンには魚としての特徴が残っているらしい。
彼らは魔法で自由に姿を人や魚、半漁人になったりできるから陸地でも過ごせるそうだ。
ただ、長い間水に浸からないと死んでしまうらしい。
ドラゴニアは竜の眷属と言われている種族だそうだ。
硬質な竜の鱗、右に出る者がない強靭な肉体、エルフ顔負けの魔法の才能。
それ故に、中々プライドが高い種族みたいだ。
デモーナは悪魔の僕と呼ばれていた種族だと言う。
悪魔のような角と尻尾に、圧倒的なまでの魔法の才能。
そして一番の特徴は、他の種族と違って主に夜に活動しているらしい。
――とまあ、ここまで聞いたはいいんだけど。
「おかあさん」
「――なあに?」
「ルナ、寝ちゃった」
「……あらあら~」
僕が聞きたかったからここまで止めなかったけど、ドワーフ辺りからもう寝てたよ。
膝の上ですぴすぴよく寝てたのに、気づかなかったのか。
「おきたら、ぼくがおしえてあげよう」
「あっ、ずるい! お母さんも一緒に教える!」
「えー」
お母さんの話し方だと、眠くなっちゃうと思うんだけどなあ。
「……サヴァさん」
「はい」
「おかあさんに、おしえかた、おしえてあげて」
「……そうですね。その方が良いかも知れません」
「え? どういうこと?」
子供らしくないことを言ってしまったけど、これはルナとお母さんのためだと思う。
お母さんの説明は長ったらし過ぎて、僕が簡略化したものよりも詰まんないから……。
☆
「……私は確かに、エルフとドワーフのハーフ。……お父さん、言ってなかった?」
「いってなかった」
ついでに昨日聞き忘れもした。
思い出したのは、今カナリアちゃんに会ってからだ。
忘れっぽいなあ僕。
「そう……まあ、あの人、忘れっぽい……し」
なんだ遺伝か。
「それに……もう、あまり、気にされないから」
「ふーん」
昨今壁が薄れてきた、ってやつかな。
いいことなんじゃないかな。
「ねえ、カナリアちゃんはそのハーフだから、まほうもたたかいもつよいの?」
「……そう、ね。魔法はエルフ、腕力はドワーフ……体が細いのはエルフ、小っちゃいのはドワーフ」
で、超常魔法はポッと出か。なるほどねー。
「……私、ロザリアや、隊長よりも、ずっと年上」
「……ほんと?」
「ふふ……どっちだろう、ね?」
くすっとあどけなさを残して微笑む姿を見ると、彼女の実年齢は想像もつかない。
……これで五十歳とかも、あるのかもしれない。
「さ……魔法の練習。今日は、もっと面白いの、教えてあげる」
結局、真実は彼女の中にしまいこまれたまま、練習開始となってしまったのだった。
そして更に説明っぽくなってしまいました。
まあ没案はもっと酷かったです。
没案も今話終了後、載せちゃおうなんて思ってます。




