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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
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五話 洗礼とサプライズ ―①

 魔法もうバレちゃったし、特に問題もないらしいから、別にいいよね。


 って考えに至ってから、それはもう僕は憚らなくなった。


 歩かないのを。


「あー! ベル君だ!」


「おうおうまた浮いてらあ」


「たまには歩けよー」


 道行く人にそう声を掛けられる。

 それに僕はふらふらと手を振って応えながら、一人でふわふわと道を往く。


 三歳のあの日から、家で魔法を隠さなくなって、四歳過ぎてからは人前でも躊躇しなくなった。

 それはもうあっちでふわふわ、こっちでふわふわと。

 さっきも言われたけど、たまに歩けと言われる始末だ。


 そしてそのおかげで、僕はこのオーシアンの町では大層な有名人となった。

 当初はただの“総部隊長の長男くん”レベルだったけど、“奇才児”なんて呼ばれ始めました。

 まあ、貶されてるわけではないからいいけど。


 でも、同い年の子とは全然仲良くできてない。

 なんかこう、不思議なモノを見る目で遠くから眺められるばかりで、一向に近寄ってきてくれない。

 あれだよ。ぼっちってやつだよ僕。


 群がられたらめんどうだから、都合がとってもいいので、現状維持でいこうと思う。




 最近の僕はリアねえに振り回されたり、ルナを魔法であやしたり、お母さんから魔法を教わったり、お父さんの所でも教わったり……と。


 なんでか知らないけどやたらと毎日頑張ってる気がしてならないんだけど。


 とってもおかしいと思います。


「もうそろそろがんばらなくてもいいとおもう」


「それ、私もよく思います~」


 遠い目をしてた僕に同調したのは、紫ポニテとダブルメロンの長身女性、ロザリアちゃんだ。

 僕の【水】魔法の先生()()役として、一緒にあの屋外練習場にいるんだけど。


「あったかいですね~」


「ぽかぽかー」


 ロザリアちゃんは木を背にして胡坐をかき、その中に僕が入り込む形が定着している。

 頭上にあるメロンを頭突いて遊んだり、一緒に寝たりと一番グータラな時間だ。


「お昼寝しましょうか~」


「そーしたーい」


 根っこが同じ僕らは、大体こんな感じだ。

 お父さんや先生がいなければ、その隙にだらだらとしている。


「ロザリーちゃんがせんせーでよかった~」


 本当、もう一人の先生はちょっと厳しいからね。

 ロザリーちゃんと比べてだ。

 別に、嫌いなわけじゃないんだよね。


「ベル君優秀だから教えるの楽でいいよ~」


 そんな風に言いながら、既に眠りに落ちそうになってるロザリーちゃん。

 ずっと彼女がいいなあ、なんて思うけど。

 まあ、それは叶うはずもないことだ。


「あ、くる」


 魔力の反応を確認して僕がそう呟けば、ロザリーちゃんはピーン! と背筋を伸ばして微睡から帰ってきた。


「え、もう!? 誰!?」


「カナリアさん」


「やややや、やばい! ベル君立って!」


「ほーい」


 そそくさと移動して、練習しているフリを始める僕たち。

 これで誤魔化せると思ってないのか、ロザリーちゃんはだらだら冷や汗ながしてる。


 そして間もなく、扉が開け放たれた。


「……やってる?」


 りんと響く静かな声は、耳に届くだけで僕らの背中を真っ直ぐに伸ばす。

 つかつかとこっちにやってくるその人に、ロザリーちゃんは敬礼で応える。


「は、ハイッ! 初級レベルの魔法は順調に仕上がっております!」


 敬礼する彼女の視線には――その人の姿は小さな三角帽子しか映らない。


「そう……?」


 首をこてんと傾げるその人は、確かにあのラフな格好をした騎士の一人だ。

 でも、その背丈はロザリーちゃんの腰元ぐらい――およそ一四○センチほどしかない。

 『騎士と呼ぶには』どころか、一般的に見ても相当小柄な女性だった。


 彼女がロザリーちゃんの上司に当たる、カナリア部隊長だ。

 青紫のウェーブの掛かったロングヘアと、ちょこんと乗った三角帽。

 これにローブのようなものを羽織っていれば、見た目は完全に魔法使いだ。

 そして、その認識は決して間違いじゃない。

 彼女は、ここでは右に出る者のいない【水】の魔法の達人であり。


「音……聞こえてなかったけど……」


 ――超常系統である音魔法の使い手でもある。

 詳しいことは分からないけど、遠く離れた場所の小さな音を拾うぐらいなら雑作もないみたいだ。


 ここまで言えば分かるかもしれないけど、この人が僕の本当の魔法の先生だ。

 教え方で見ればカナリアさんの方が上手ではあるけど、少し苦手なんだよね。


「ししし、静かに練習してましたから! ね!?」


 ……うん。

 丁度いいからなんで苦手なのかお見せしてあげよう。


「しずかにねてました」


「べ、ベル君!?」


 チッチッチ。

 ロザリーちゃん、嘘はいけないよ。

 そこが僕と君との違いだ。

 “静かにしてた”だけなら、僕も頷いたのになあ。


「……正直でよろしい。ロザリアには罰ね」


「え、えー! ちょっとソレは――」


 ヒュオッっと空気が唸る。

 それと同時に、見上げた先にいたロザリーちゃんは消えた。


「問答無用。お前には罰」


「す、すいませんでしたぁ……」


 見下ろせば、ロザリーちゃんはカナリアちゃ……さんに組み伏せられていた。


 騎士だからかは分からないけど、近接格闘にも長けてるんだよね。

 度々これを目の当たりにするから、なんとなく苦手なんだ。


 ガッチリ極められたロザリーちゃんは、カナリアちゃ……さんに冷ややかに見下ろされ、泣く泣く罰を受け入れることに。


 え? 僕? あはは。

 子供の可愛さって、罪だよね!


「とりあえずお前は良いと言うまでスクワットしてろ。……じゃあ、ベル。前に教えた魔法……やってみて」


 カナリアちゃ……さんは僕とロザリーちゃんで口調とか声音とか全然違う。

 苦手だけどちょっと面白い。

 でも多分、出来なかったら僕もああなるね!

 真面目にやろうっと。


「≪ウォーター≫」


 計三つ、球状の水の塊が僕の目の前に現れる。


「≪シュート≫」


 その内の一つを、そのまま人のいない場所へ放つ。


「≪スピア≫」


 もう一つは槍へと形を変え、同じ場所へ放つ。


「≪ウィップ≫」


 そして最後に細長い鞭をしならせながら……僕はスクワットをするロザリーちゃんのおっぱいとおしりを引っ叩いた。


「ひぃん!?」


「ごめん」


 やれって言われたんだ。

 誰に? それはもちろん。


「うん……ベルは優秀」


 満足気に頷くカナリアちゃんさんに、だ。


 彼女は僕に、大人と思えないあどけない笑顔を浮かべた後、その容姿から想像もできない冷たい無表情になり。


「お前は後で海浜で耐久走だ。そんな温いスクワット続けるならもっと増やすから」


「イエス・マム!」


「……ベルは、今日はここまで。……お父さんのとこ、行こっか」


 そしてまた笑顔に戻って僕に向き直る。

 子供で良かった、僕。


 女性にしてはかなり硬さのあるカナリアちゃんの手を握って、僕は彼女に連れられて浮いて行く。


()()()()から。サボったら組手」


「イエスマム!!!」


 カナリアちゃんはロザリーちゃんにしっかりと釘を刺して、そして訓練場を後にした。


 ドンマイロザリーちゃん。

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