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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
17/55

四話 〃 ―③

元旦も通常営業。

元旦なので特別ゲストです!

 その後、魔法のいくつかをお披露目しながら、それ以外は普段と変わらぬ一日となった。


 そして、その日の夜。


 僕が眠りについたら、三年ぶりに、大好きな声が聞こえてきた。


「や、やあ。元気だった?」


「…………」


 み、み、み。


「ミルイニちゃんだぁ!」


「ひゃあ! ちょっと!」


 ふわっと綺麗な水色のショートカット。

 煽情的エッチな服で隠されたおっぱい。

 曝された真っ白な玉の肌。

 エメラルドも霞む翡翠の瞳。


 神様だとはなんとなく分かるのに、どこか神様らしくない。


 正真正銘どこからどう見ても、僕の大好きなミルイニちゃんだった。


 迷わず正面から抱きつきましたよ!


「……ってなんで君、前と同じ姿なの? あと、離れて」


「僕だからじゃないかな」


 僕は再び、ミルイニちゃんのおっぱいに埋もれている。

 五歳児ベルフェルミナの姿ではなく、僕自身の姿のままだからこそできる。


 ……いや、待って!?


「子供の姿だったら、抱きかかえてくれてた!?」


「え、う~ん……どうかなあ。じゃなくって! 離れてって!」


「分かったよ」


 パッと僕は離れる。

 抱きつくチャンスはいくらでもあるしね。

 今は言うことを素直に聞いておこう。


「……あっさり離すんだ」


「離せって言われたもん」


「そうだけど……」


 それにこうやってちょっと残念そうにするのも可愛い。

 やっぱり満更でもないんだなって思う。


「まあそれよりもさ、突然どうしたの? ミルイニちゃん」


 そしてそれをあえて無視して、僕は至極マジメに尋ねる。

 何故かため息を吐かれたけど、それも無視しよっと。


「ちょっと気になることがあったから呼んだの」


「人一人をわざわざ呼び込むような大事?」


「そうでもないかなあ」


「じゃあ僕に会いたかっただけ?」


「そう……じゃないっ」


 わあ、嬉しいなあ。

 思わず笑顔になっちゃう。


「も、もう。話すよ?」


「あ、うん。いいよ?」


「……なんで隠してたの?」


 ……………………。


「何を?」


「分かってて聞いてるでしょ。魔法のことだよ。一応、生まれて間もない子供なんだから、子供らしく自慢すればそれで良かったのに」


 あ、ああそっちか。ビックリした。

 でも、どっちにしろ答えづらいかな。


「おかしいと思ったからだよ。いくら超常系統とは言え、三歳児があそこまで重力を操るのは、ちょっと不自然でしょ?」


「確かに、そうだけど……でも、それだけじゃないよね?」


 ……んー。


「聞き方を変えるね。なんで、そんなに怖がってたの?」


「黙秘したいなあ」


「……」


 ちょっと。

 なんでそんなに悲しそうな目をするんだ。

 僕、その目にはめっぽう弱いのに。


 ……ああ、もう。


「じゃあ、話す代わりにさ、お願い聞いてよ」


「な、なにっ!」


 ぱあっと目尻に涙を溜めたまま、明るい表情になるミルイニちゃん。

 しょうがないなあ。


「座ってミルイニちゃん。楽な姿勢で」


「え? こう?」


 ペタンと正座で座り込むミルイニちゃん。

 僕は、その上にひょいと座った。


「え?」


「このまま話させて?」


「……まあ、これくらいならいいよ」


「やった!」


 後頭部をミルイニちゃんの豊満な胸に預けながら、素晴らしい感触を味わう。

 正面から抱きつくのとは趣が違って、これはこれでありだー。


「……で、話してくれる?」


「あ、うん」


 一瞬、忘れてたのは内緒だ。


 上から覗き込んでくるミルイニちゃんを、下から見上げる。

 僕は薄らと笑いながら、はっきりと女神様に告げる。


「認められないのが、怖かったんだ」


「そんな理由?」


「そんな理由さ」


 “でも”と付け加えてから。


「僕にとっては、大きな理由だ」


 と、再び頭と背を彼女に預ける。


「生みの親から認められない。それが怖かったんだ。……魔法は、どうしようもないぐらい利己的だけど、僕なりに、それなりに頑張ったんだ。その魔法が、その魔法で、僕自身と僕のなけなしの努力を否定されちゃったら、泣きたくなるし遣る瀬無いじゃない?」


 僕にしては珍しく、長ったらしい喋りになってしまった。


「……前世では、認められなかったの?」


「ま、そういうことになるんじゃない?」


 ミルイニちゃんにそう聞かれてふと、僕は一番気がかりだったことを持ち出す。


「そういえば、ミルイニちゃんはまだ僕のことを聞いてないんだね」


「う、うん。今、軽い謹慎処分みたいな、外出禁止令を受けてて、聞きに行けないんだ」


 神様にも謹慎なんてあるの?

 初耳だなあ。


「僕に会うのは問題ないの?」


「お仕事自体は謹慎中でもしてるの。だからこれは、神様のお仕事ってことにしてるから大丈夫。敬虔な、そう、敬虔な信徒の悩みを聞くお仕事ですっ」


 あれ、ちょっと拗ねた。

 のは、多分僕のせいだから今は置いておくとして。


 つまりミルイニちゃんは、神様らしいことをしたかったから、僕の悩みを聞こうとした、のかな?

 それとも、単純に僕を気にかけてなのかな?


 聞き出し方が強引過ぎる気もするけど、いいのかなそれは?


 僕は「ふーん」と鼻を鳴らす。

 僕の細やかな疑問は解けたので、黙り込む。


 しばらく静かになるかと思ったけど、そうはいかなかった。


「怖かったなら、なんであのまま隠しておかなかったの? あの執事さんが、どうにかしてくれそうだったのに」


 どんどん突っ込んでくるねミルイニちゃん。

 もしかして、前世のこともついでに聞こうとしてるのかな?


 まあ、いい。


 聞かれたことにだけ答えるだけだ。


「僕は嘘が嫌いだから、ってだけ」


「嫌い?」


「うん。軽い冗談とかなら別にいいんだけど、嘘で真実を隠したり捻じ曲げるのだけはやりたくないんだ。そうするぐらいなら、潔く話すか絶対に喋らない」


 くつくつと笑いを噛み殺す。


「僕自身の気分でその匙加減が変わるような、たったそれだけの安っぽい矜持だよ」


「……そうなんだ」


 ヘンなの、と。

 ミルイニちゃんはそう言いながら、僕の髪に触れた。


「それこそ、ヘンだよ」


「そうかもね」


「面倒じゃないの?」


「嘘を重ねていく方が、絶対めんどうじゃないか」


「それもそっか」


 二番目くらいの理由だけどね、それ。

 多く語る必要もないから、黙ってるけど。


 それからしばらく、ミルイニちゃんは無言のままとなった。

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