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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
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四話 魔法がバレて憂鬱でした―①

 ロザリアちゃんが伸びちゃったので、僕たちはそのままの流れで帰ることになった。

 リアねえとお母さんに手を取られて帰る僕は、なんというかこう、たぶん今にも死にそうな顔をしていたんじゃないかな。


 どう帰ったとかあんまり覚えてないんだよね。




顕珠ゲンジュに触れてしまったのですね」


 部屋で一人で引き籠ってたら、サヴァさんがご丁寧に教えてくれた。


「顕珠は、本来使われないうちに滞ってしまった魔力を吸い取ることで、魔力の再循環と適正系統の確認を同時に行うものでございます。知らずに触れてしまえば制御は不可能でしょう」


「みをもってしった……もーやだ……」


 ぐるんぐるん体内を巡るから、あの後五分ほど制御は困難だった。

 そのせいでルナは泣きっ放しになっちゃうし。

 あの泣き声は心の傷に染みた……。


「ていうか、サヴァさんなんでいるの? カギかけてたよ?」


「長く執事をやっていますと、このぐらいなら雑作もありません」


 ああこれ、サヴァさんが盗人とかやったら絶対捕まえらんないよ。

 ピッキングされたことすら気づかないとか本当に謎技術だ。


「それよりもベル様。皆様が心配なさっていますので、そろそろ部屋から出てはいかかでしょう?」


 やだよ。

 どんな顔して出ればいいのさ。


「その事態は、ベル様の魔力が予想以上に多かった故の事故でございます。誰も咎めたりはしません。それに、今回発覚したのは多すぎる魔力と超常の系統だけでございます。魔法が扱えること自体は、まだバレていないでしょう」


 …………あ。


「そっか。そうだよね」


 あれはたまたま起こってしまっただけだから、僕が使えると決まったわけではないはずなのか。


 ……あ、魔力制御。


「魔力制御ができていたことに関しては、ルナ様のために私が教えたと言えば大丈夫でしょう」


「だからなんでかんがえてることわかるの」


「どうでしょうベル様。まだ出るのが怖いですかな?」


 ああうん。

 声に出してもスルーするのね。

 もういいよまったく。


 でも、そうか。

 魔法はまだバレてないのか。


 ……何か忘れてる気もするけど、大丈夫なのかな?


「サヴァさん」


「はい」


「いいわけはおねがいします」


「かしこまりました」


 憂鬱を少し軽くしながら、僕は引きこもりを脱した。




 ☆




「ベルはもう、魔法が使えるのか?」


 居間に出てみんなに心配された後、お父さんがいきなり爆弾発言をしてくれた。


 ビックリ仰天だよもう。

 お父さんの後ろで控えてるサヴァさんも微かに目を見開いてる。

 彼にとっても想定外だったのだろう。


「なんで?」


 黙って首を振れば良かったのかもしれない。

 でも、否定する、という嘘がどうしても僕にはできない。

 それは僕の、昔っからの矜持のようなものだ。

 問い返すことで先延ばしにするくらいの悪足掻きしかできない。


 お父さんは瞑目しながら、丁寧に言葉にして状況を思い出させてくれた。


「ベルが落ちてきてお父さんが受け止めた時、重さを全く感じなかったんだ。落ちてくるのも、遅かったような気もするしな」


 ああ、そうか。

 僕、あの時無詠唱で≪グラビティ・ゼロ≫を使ってたのか。

 ……うん、使った。

 しくじったなあ。

 練習期間で無詠唱が長かったせいで、慣れちゃってたんだなあ。


「顕珠はとっくに地面に捨てられてたのに、ベルは下ろす寸前までそうだった。……それが気になってな」


 お父さんが、お母さんが、リアねえが僕を見つめてくる。

 心なしかルナも見ているような気がしてならない。

 サヴァさんだけが、静かに目を閉じていた。


「どうだろうベル。あれが何か分かるなら、お父さんたちに話してみてくれないか?」


 お父さんが言い終えると、しばらく居間は静かだった。

 みんなが僕の答えを、何も言わないで待っている。

 けれど黙する僕は、虚空を見つめながら考えるので手一杯だ。


 ……いや、答えは決まっている。

 決まっている、けど……。


「失礼ですがクロード様、私から一つ見解を述べさせてもらってもよろしいでしょうか」


 え?

 サヴァさん?


「なんだ? サーヴァ」


「事件の最中、私は現場にはいなかったので正確なところは分かりません。なのでこれは予想なのですが、ベル様の魔力が多すぎる故に起きた魔法の偶発なのではないでしょうか」


「ふむ」


「落下の恐怖と、顕珠による大量の魔力の活性化で、イメージに適した魔法が発動したのではないかと」


「……一理あるな。そうなのかベル?」


 ああ、彼はこれを考えてたのか。

 すごいなあ。流石、執事の鑑だ。




 でも、ごめんなさい。




「ちがう」


 また、サヴァさんが驚いている。

 今日は珍しいなあ。

 そうさせてるのは僕だけど。


 僕は首を横に振る。

 そして、僕のエゴで彼の嘘を肯定できないことを、どうにか態度だけで謝る。


 ……キッパリと否定してしまったのだ。


 腹を括ろうか。


「ぼく、まほう、つかえます」


 ≪レビテイト≫――僕はふわりと宙に浮く。


 無重力とは違うけど、これが一番目に見えて分かり易い。


「ずっとかくしてた」


 皆が目を丸くする中、僕はそのまま頭を下げた。


「ごめんなさい」


 僕の謝罪は、空虚に響いた。

ばれちゃあ仕方がねえなあ!(悪役ばりの開き直り)


20141231_サヴァさんの呼び方で一部訂正。

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