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転生怠惰譚~ゆるゆると生きてたい~  作者: おばあさん
第一章~転生して良くも悪くもめんどうくさい~
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三話 騎士って疲れそう―①

 三歳と一ヶ月になったある日。

 お母さんにルナの子守を頼まれた。


 ……でも。


「あ~~~! あ~~~!」


「え、えっ、とぉ~」


「あ~~~! あ~~~!」


 なんでか知らないけど、ルナに泣かれてる。

 それはもうすごいよく泣いてる。

 もう僕の方が泣いちゃうよこれ?


「どうしよう」


 あやしてあげたいけど、触れようとするとより一層ひどく泣いてしまう。

 というか、近づくだけでも泣き声がひどい。


 じゃあなに?

 離れればいいの?

 子守りなのに?


 実際に実行してみた。


「う~~~……あうー」


 僕がじりじりと後退りしながらルナから離れると、ルナは落ち着きを取り戻した。

 自分の指をちゅぱちゅぱとしゃぶっている。


 ええええぇぇぇぇぇぇ……………?


 泣きそうだ?

 いいえ、もう泣きました。

 前が見えないよ。


「う、ううぅ……っ」


「――ベル様?」


「さぶぁああああ!」


 恐らくルナの泣き声を聞いて駆け付けたのであろうサヴァさんに、あやす側であったはずの僕が泣きついた。

 当のルナは変わらず指をちゅぱちゅぱしてる。


「……ルナ様が泣いていると思って来たのですが、これは?」


 サヴァさんは、彼にしては珍しく狼狽気味となった。

 けど、そんなことに答える余裕が僕にはない。


「るなにぎらわれだああああ!」


「は、はあ……?」


 サヴァさんは困惑したまま、ルナの方へ近づいて彼女を抱きかかえる。


「あぃー」


「……?」


 彼は不思議そうな顔をしたまま、ルナをあやす。

 そして、スーッと僕の方へ近づいてくる。


 すると。


「……あ、あ~~~! あ~~~!」


「む?」


「ほ、ほら゛ぁぁぁ!」


「……ふむ」


 再び泣き出したルナと、事実を再認識したせいで引っ込んでいた涙を目に溜め出した僕。

 それらを一瞥した後、サヴァさんは何かに納得したように一度頷くと。


「ベル様。ルミナス様がお帰りになるまでの間、ルナ様は私が見ておきます。後でお伝えすることがありますので、しばらく部屋か書斎で待っていてください」


 スッと僕から離れて、ルナをあやすことに専念しだしたサヴァさん。


「……わがった」


 とりあえずその場は彼に任せることにして、僕は大人しく書斎に引っ込むことにした。

 僕はどうせ、それ以上のことはできない。

 妹に嫌われる兄が、できることなんてないんだ。


 ……ぐすん。




 どうにかこうにか気持ちを落ち着けて、魔法の練習に入る。


 浮遊魔法――魔法名≪レビテイト≫は一か月前の誕生日に、ようやく完成させることが出来た。

 重力を軽減・消失することで体を浮かせ、前までの二つのイメージで体の移動や制御を行う。

 これが一番ローコストだ。燃費は前と比べ物にならないほどよくなっている。


 要は前の二つのイメージをサブに回して、重力軽減をメインにすることで問題を全て解決したのだ。

 なので≪レビテイト≫は正しくは浮遊魔法ではなく、重力魔法の派生系となっている。


 魔法名も付いたので、これで晴れて完成と呼ぶことができるだろう。


 なのでこれからは、浮きたいがために放っておいた僕の、おそらくもう一つの得意分野を魔法で習得してしまおうと画策している。


 画策、してたんだけど。


「ベル様はしばらくの間、魔法を使わない方がいいでしょう」


 なんて、書斎でサヴァさんに言われてしまった。


「……なんで?」


「どうも魔法の練習によって、ベル様の保有する魔力の量と質が急激に成長しているようでございます。微弱ではありますが、ベル様の魔力が内から外に漏れだしているのが確認できました」


 な、なんだって!?

 そんなこと、聞いたことも見たこともない。

 本で読んだことも、まだない。

 一々辞書引っ張ってくるの面倒で最近読んでないんだよね。


「このまま練習を続ければ、いずれ他の方々にも魔力に気付かれて、魔法のことがバレてしまうかもしれません」


 ……ん? ということはもしかして。


「ルナがないてたのは?」


「ベル様の魔力に反応して、でございますね」


 ……そう聞いて、どこかホッとした自分がいた。


 そっか。嫌われてたわけじゃ、なかったのか……。


 でも、大問題には変わりはないね。

 僕が近づく度にルナが泣いてしまうのか。

 ならもう、仕方ないから魔法はしばらくやめよう。


 それにもうそろそろ頑張るのめんどうになってきたから丁度いいよね。


「その代わりにベル様には自分の魔力を制御していただきます」


 そして僕の意思を無視してサヴァさんが新たなメニューを加えてきた。


 …………誰かに言われて動くのが一番嫌いだよ僕ぅ……。


 多分そんな表情が表に出たのか、サヴァさんは一つ咳払いした後に付け加えて一言。


「それができれば恐らく、ルナ様も泣かないと思いますが」


「おしえてサヴァさん」


 僕はノータイム即決でころりと掌を返した。


 可愛い妹のためだ。

 もうひと頑張りしようか!


「今日はもう時間がないので、明日からにさせていただきますが、よろしいでしょうか?」


「ぜんぜんだいじょうぶ」


 恭しく、けれどちょっとサヴァさんが呆れたように見てる気がする。

 まさか執事の彼が主人側の僕を呆れたように見るはずが、ないよね?

 厳密に言えば主人は僕じゃなくてお父さんだけどさ。


「では明日、昼食の一時間後にこの場で」


「わかった」


 ふと、目を離してもいないのにサヴァさんが目の前から消え去る。

 自分の音や姿などはおろか、扉の開閉の音や様子まで知覚できないのは、ちょっとおかしいと思うの僕。


「……きょーはもうねよっか」


 魔法を使うことはできないのだし、そうしよう。


 遊びから帰ってくるリアねえに起こされるまでの間、僕はいたずらに惰眠を貪った。

20141231_一文追加。物語には全く支障はない類です。


子供って本当にどう扱えばいいのか悩みますよね。

あまり経験もないので、尚更です。

泣き出したら謝りたくなります。

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