五話「装備購入」
Eランクになり二週間が経過した。
今日も晴れている。いい朝だ。
こっちに来て朝の鐘で起きる習慣もすっかり身に付いた。
あれから何度かカイナのおっさんと冒険者ギルドで顔を合わせたが何も起こらなかった。
俺の不安は杞憂に終わった。
良かった。超良かった。
そもそもカイナのおっさんは妻も子供も居るって言っていた。
ヤゲヌクさんとも話したが同様に妻が居るとの事。
昇格試験が終わってからは討伐依頼……でなく今まで通り雑用の依頼をこなした。
何故かって?
残念ながら未だに装備を買ってないからだ。
あ、服は買ったよ。
雨に濡れてどうしようもなくなった日もあったしな。
見た目はどっかの村人みたいになってるけど。
装備一式、後必須の消耗品となると当時の手持ちじゃ足りないとカイナのおっさんに言われ断念したが、毎日毎日せっせと働いた事により目標金額だった三万ペルにジャストで到達した。
内訳としては、
装備に一万五千ペル
消耗品に五千ペル
生活費に一万ペル
としている。
おおざっぱに決めたものだがこんな感じでよしとする。
生活費はもうちょっと削ってもいいかと思ったが、これからは討伐以来を受けていいく訳だし怪我をして療養……なんて事になった時の為にも余裕を持っておこうという考えだ。
お、美味そうな焼き鳥の露天がある。
「すいません。一本下さい」
「あいよ。二百ペルね」
続きだが……むしゃ……内訳としては、
装備に一万五千ペル
消耗品に五千ペル
生活費に九千八百ペル
と……むしゃ……している。
うむ、美味い。
ごちそうさん。
武具屋の手前の教会へと差し掛かると、見覚えのある後姿が見えた。
「やぁ、おはよう。コゼット」
「おはようござ……あっ!」
振り向きながら挨拶をしていたコゼットがこっちを見た途端停止した。
とてとてと歩いてくる。
「コゼットと会うのはいつ振りだっけ? 久しぶりだなぁ」
「何で来てくれなかったんですか?」
ふむ。
どういう事だ?
何か約束したか? いや、してない……と思う。
頭を傾げながら悩んでいるとコゼットから追加の言葉が飛んでくる。
「時間が取れたら来てくれるって言ってたじゃないですか」
あ、あぁあれね!
そうだね。
してたね。
約束してたね。
「あぁ、そう……だな。言ってたな」
社交辞令的な意味で。
だがコゼットにとってはれっきとした約束だったのだろう。
「わたしずっと待ってたんですよ?」
拗ねたように唇を尖らせて喋るコゼット。
「悪かった。ちょっと忙しくてな。忘れてたんだ。ごめんな」
謝りながら頭を撫でてやる。
うむ。ふわふわしてていい撫で心地だ。
「ま、まぁ忙しかったのなら仕方ないですよね。えへへ。あ、じゃあじゃあ今日は時間ありますか?」
お、ちょっと笑顔になった。
しかし今日か。
武具屋に行った後は依頼を受けようと思ってたくらいだな。
「時間はあるけど昼からでいいか? ちょっとそこの武具屋で買い物したいんだ」
「武具屋ですか? ならなら、わたしも付いて行っていいですか?」
「来てもつまらないと思うけど、好きにしなよ」
「はいっ! 神父様にお出掛けの報告してくるのでちょっとだけ待ってて下さいね」
「分かった。ここで待ってるよ」
コゼットが教会へ入っていく。
しかしこんな近くへ行く時にでもちゃんと報告するんだな。
この町は馬車だと専用の道があるから子供が歩くような道は事故の心配もない。
まぁ魔物が溢れてるような世界だと普段から徹底させるのも納得か。
「お待たせしましたー」
「よし、じゃあ行くか」
コゼットと二人並んで武具屋に入る。
「ゾランさんバネッサさんおはよーございます」
「お? コゼットちゃんか。店に来るなんて珍しいな」
「コゼットちゃんおはよう。お使いかい?」
武具屋はドワーフの夫婦が経営してると聞いてたが、ゾランにバネッサと呼ばれた人物がそうなのだろう。
なるほど。
見た目は小さいが、男の方は肌が褐色で筋肉もりもりのヒゲもじゃ。
女の方は肌が褐色で背はコゼットよりも少し低い。
ゲームの設定通り……だと思う。
「いえ、今日はこちらのユウイチさんの付き添いなんです。武器と防具を買いに来たそうですよ」
「Eランク冒険者の優一です。戦闘は素人なんで初心者用の装備を買いに来ました」
「おぉそうか。Eランクってーと討伐依頼を受けられるようになったんだな。
お前さんに手頃な武器はあっちの棚、防具は反対側の棚だ」
「どうも。んじゃ適当に見せてもらいます」
挨拶も終わったし棚の方に向かう。
コゼットはバネッサさんと仲良くお喋りしている。
子供同士が仲良くしてるようにしか見えんな。
と、待たせるのもアレだしさっそく見に行くか。
さて、まずは武器だな。
種類がいくつかあるが何にしようか。
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ショートソード 4500ペル
主原料:鉄
特殊効果:無し
一言:一般的な片手剣。扱いやすさは抜群!
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両手剣 5000ペル
主原料:鉄
特殊効果:無し
一言:一般的な両手剣。一撃の威力を求めるならコレ!
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レイピア 4000ペル
主原料:鉄
特殊効果:無し
一言:一般的な細剣。手数で攻めたいアナタに!
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魔導の杖 4000ペル
主原料:ヒノキ
特殊効果:魔法威力上昇
一言:一般的な杖。魔法主体で戦うなら杖は必須!
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ふむ。
ご丁寧に主原料や一言まで添えられている。
ゲームだと確か魔物がドロップする魔晶石というアイテムを主原料として武具を作成したはずだが、そういった装備はないのか?
店内を見回しそれらしき物が置いてある棚へ行く。
あったあった。
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フランベルジュ 175000ペル
主原料:炎狼の魔晶石
特殊効果:炎上
一言:傷口から火が発生し、相手に追加ダメージを与える。
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赤みがかった白い刀身が波を打つように伸びている。
モンスターなんぞほっとんど覚えてないからこの魔晶石の凄さはよく分からん。
よく分からん……が、かっこいいなぁコレ!
特殊効果付いてるし。
しっかしくそ高いなぁ……。
買おうとしたらどんだけ頑張らないといけないのか。
今回は扱い易さに定評のあるショートソードにしておこうかな。
武器は決まったし、一度コゼットの様子を見に戻るとしよう。
皆の所に戻ると相変わらず仲良くお喋りしてたのでゾランさんに話しかける。
「ゾランさん、武器はショートソードにする事にしました」
「ん? おぉそうか。防具は決まったのか? ガッチリ金属鎧で固めるか、防御力は若干劣るが動きやすさを重視した革の鎧にするか、予算も教えてくれたら一緒に選んでやるぞ?」
「そうですね……。動きやすい革の鎧がいいですね。あ、予算は一万で」
「分かった! それならこっちだ」
ゾランさんがオススメの防具を見せてくれる。
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銀の革鎧 7000ペル
主原料:シルバーウルフの魔晶石
特殊効果:無し
一言:同じ主原料を使った革のズボンとセットがオススメ!(別売 3000ペル)
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「これなんかどうだ?」
ふむふむ。
鎧というより服に近いデザインだな。
性能は全然分からんが上下セットで丁度一万か。
「一つ聞きたいんだが、シルバーウルフってどんな魔物なんです?」
「ん? あぁDランクの魔物だな。名の通り銀の体毛を持った狼だ。この装備ならEランクは勿論他のDランクの魔物とも十分にやっていけるぞ」
なるほど。
それならこれでいいとするか。
「ならそれを買います。あと、革のズボンもセットで」
「あいよ! まいどあり」
買う物も決まり先に会計を終わらせるとコゼットがこっちを見ていた。
どうやらお喋りは終了していたようだ。
とてとてと歩いてくる。
「ユウイチさん買う物決まったんですか?」
「決まったぞ。今用意して貰ってるからもう少し待っててくれ」
「武器はどんなのにしたんですか?」
「ショートソードにしたよ。両手剣もちょっと使ってみたかったけど、俺は魔法使うから片手剣がいいかと思って」
そう言った所でコゼットの顔がパッと明るくなる。
「そうですかそうですか。いいですよね。片手剣」
「え? そ、そうだな。使いやすいみたいだし」
武器に食いつくとは思わなんだ。
この店に付いて来るくらいだしコゼットは片手剣が好きなのか?
喜ぶポイントが分からん子だ。
コゼットと話をしていると奥からゾランさんが装備を持ってやってくる。
「お待ちどう! 武器と鎧だ。サイズ調整はきくから問題ないと思うが念の為着てみてくれや」
「分かりました」
革鎧に触れると淡く光を発した後少しサイズが変わって見えた。
サイズ調整って自動なのかよ……。
サイズ変更が上手くできてるのか問題なく着れるな。
だけどこれ剣はベルトか何か買わないといけないのか?
予算オーバーになりそうだが仕方ないな。
「これ剣はどうするものなんです? ベルトとか使う感じ?」
「ベルトも売ってるぞ。あぁ予算オーバーか。よっしゃ! コゼットちゃんの知り合いって事で特別にベルトをサービスしてやるよ」
おぉラッキー。
コゼットが付いてきてくれてよかった。
予算内で収まりそうだ。
「わたしのお陰ですね! 褒めてもいいんですよ?」
ぺったんを精一杯強調しコゼットが得意がる。
悲しいかな。
コゼット、キミには強調するものが未だ足りていないんだ。
慈愛の精神を持って頭をなでてやる。
「えへへ」
しばらくコゼットを撫でているとバネッサさんがベルトを持ってきてくれた。
「二人共仲がいいんだね。はい、これベルト」
「お、どもども」
ベルトを受け取り剣と共に腰に装着する。
これでどっからどう見ても立派な冒険者だな。
ちょっとニヤけてしまいそうになる。
「ゾランさん、バネッサさん、いい買い物が出来ました。ありがとう」
「いいってことよ! そん代わり死ぬんじゃねーぞ!」
「えぇ、気をつけます」
礼を言って武具屋を後にする。
ちょっと早いが昼にするか。
「コゼット、ベルトのお礼に昼奢るから一緒に食べに行かない?」
「えっ! いいんですか? じゃあじゃあ神父様にお昼ご飯要らないって言ってきますね」
嬉しそうな顔で駆けていくコゼット。
孤児院ではあまりいい物が出ないのだろうか。
よし!
ここは腹一杯食わせてやろう。




