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二十八話「初めての国へ」

 翌朝、コンラッド達と合流して北の国へ向かって出発した。


 コンラッドは以前と装備が変わっているが、使い込まれているのが分かる。

 体も以前より筋肉がついているのではないだろうか。

 見た目がちょっとした戦闘民族みたいになっている。

 髪の色は明るめの茶色とこちらではよく見る色だが、怒ったら金色にならないだろうか。


 気絶無効の男カーティスは装備こそ変われど身体的には変化はなさそうだ。

 あ、髪が少し伸びたか? 濃い茶色の髪が肩にかかりそうになっている。

 以前はもうちょっと短かった……と思う。

 男の裸なんぞ気にした事はないが、大剣を振り回せるくらいには力があるのだからソフトマッチョなのだろう。

 きっと腹筋とかも六分割されているに違いない。


 シンディとエドナは相変わらず元気一杯かつマイペースだ。

 二人共紫色の髪をしているが、シンディは右に、エドナは左に束ねてくくっている。

 相変わらず耳と尻尾が揺れ動いているが、未だに一度も触った事がない。

 コゼットは仲良さそうだが、俺は特別仲が良いわけでもないからな。

 頼むのを躊躇してしまっている。


 北の国の首都までは中央都市から九日かかる。

 前回こいつ等と一緒に旅をした時は酷い目にあった。


 今回は平和な旅でありますように。



------



 ドワーフが統治する北の国ノス。

 その首都であるノレスト。

 そこに俺達は無事到着した。


 国の特色というべきか。

 その町はあまりにも整っていた。


 同じ大きさの土地

 同じ形の家。

 同じ色の壁、屋根。


 道路を挟めば違う色の家。

 そして隣にはその違う色と同じ色をした家。


 目の前には黄色の家がズラっと並んでいる。

 後ろを振り返ると緑色の家が。

 味気のない灰色や目が痛くなるようなピンクまである。


「なんだこりゃ」

「凄いですね。迷子になっちゃいそうです」


 思わずそんな言葉が口から出た。

 隣に居るコゼットも目を丸くしている。


 不気味。

 とは思わない。

 あちこちに居るドワーフのお陰だ。

 ガッハッハ、と豪快に笑っているのが町中に響いている。

 そしてその半分以上が酒瓶を手にしている。

 昼前から酒を飲んでいるとは、仕事とかいいのか?。

 寒い地域だとウォッカをガバガバ飲む、そんな感じなのかもしれない。


 しかしこの建物は違和感が半端ないな。

 落ち着かん。

 この国の人達は家に興味がないのだろうか。

 それとも全員が似た思考をしているのだろうか。


 それでも以前の俺ならスルーしていただろう。

 こっちの世界に慣れてフレンドリーになったのだろうか。

 ついつい「何で同じ建物ばかりなの?」と近くに居たドワーフに聞いてしまった。


「あん? 同じだったらこう、ピシッと綺麗に見えるだろう?」 


 そんな言葉が返ってきた。

 本棚に本を綺麗に並べていく感覚だろうか。

 それを国でやるなんてクレイジーすぎるだろ。



 俺達は首都ノレストで一泊する事にした。

 俺とコゼットは教会へ行くのでコンラッド達とは別行動中だ。


「うわぁ、ここも凄いですねぇ」


 コゼットはお上りさんの如く相変わらずキョロキョロと辺りを見回している。

 宿の人によると、教会は青の区画の中心にあるらしい。

 今歩いている場所がきっと青の区画なのだろう。


 理由は簡単。

 周りには青い建物が並びまくっているからだ。

 道案内の看板まで青く塗られている。


 ブルーブルー。

 そんな声が聞こえる気がする。

 世界をけがれないものにする為に強引な寄付を求められはしないだろうか。


「あっ、教会ですよ」

「ブルー……ではないな。なんか安心した」


 青の中に白がポツンと存在している。

 どうやら教会は周りの色に染められていないらしい。


 さっそく書庫に案内してもらい、片っ端から調べていく。

 今回は白い本を見つけるだけだからすぐ終わるだろう。

 そう思いながらしばらく探していると、ふとコゼットが口を開いた。


「あの、ユウイチさん。神父様に神書があるか聞いたらいいんじゃないですか?」


 ……。

 ほんとやね。

 早く言ってくれよ。

 でもグッジョブ。


 書庫を出て神父を探す。

 そんなに大きくはない建物なのですぐに見つけることが出来た。


「神書ですか? 中央都市に移してありますよ」


 はい、これにて探し物は終了。

 中央都市にあった神書が元々この国にあったのか。

 せっかくなのでもう一つ質問をする。


「神書って全部で何冊あるんですか?」

「えぇと……確か、二冊だったと思いますよ」


 どうせ読めないので記憶も曖昧ですが、と自信なさげだったが答えてくれた。


 ふむ。

 となると全部見つけた事になるのか。


 しかしそれだとおかしいな。

 二冊共に『続く』と書いてあったはずだ。


 探していないのはエルフの国と獣人族の国。

 そのどちらかにまだある可能性もある。

 機会があれば行く事にしよう。


 これ以上はやる事もないので教会を後にする。


「はぁ……寒いですねぇ」


 コゼットが白い息を吐く。


 馬車でこの国に来る途中、いきなり気温が変わった。

 何の変哲も無い平坦な道だったのに不自然極まりない。


 恐らく国に入った瞬間に切り替わったのだろう。

 ゲームらしかったりそうでなかったり、変な世界だ。


 俺自身も順応したのか最近では驚きも少なくなっている。

 気温が変化した時だって、「おや、もしかして……」と思っただけだった。


 しかしコゼットは寒そうだな。

 俺はまだ平気だが。


「じゃあ、防寒具でも見に行くか」


 今の所はやる事ないし。


 しばらくは適当に歩く。

 町のどこに何があるのかほとんど知らない。

 十五分程ウロウロしてようやく目当ての店を見つけた。


 コゼットはいかにもって感じの可愛らしい物を好む。

 やれこれは色がいいだの、やれこれはこの部分が可愛いなどと楽しそうに選んでいる。


「あのあのっ、コレとコレどっちが似合いますか?」

「え? あぁ、そうだな。えっと右――」

「あっ! あっちにも可愛いのがありますよ! 行きましょう!」

「……」


 そんな会話をしつつ、買うまでに一時間はかかったように思える。

 とりあえずマフラーと手袋、それと帽子を購入。

 帽子は耳まですっぽり隠れるものを買った。


 宿まで戻った俺達はゴロゴロと過ごす。

 コンラッド達が帰ってきたら、だいたい男性陣と女性陣に分かれて話す事が多い。


「あーっ! アレ欲しかったぜー」

「金額的に無理だろう」


 コンラッド達は武具屋で時間潰しをしていたらしい。

 Aランクの魔物素材で出来た大剣について熱く語っている。


「あのフォルム! 切れ味! そして特殊効果! 素晴らしかった!」

「そしてお値段も素晴らしくて買えなかったと」

「高すぎるぜ! とてもじゃないが買えねぇ」

「こいつはいつも試し斬りをさせてもらって我慢してるんだ」


 試し斬り。

 そんなサービスもあったのか。

 覚えておこう。


 武器の次は防具の話しとなった。

 再びコンラッドの演説を聞いていると女性陣が入ってきた。


「そろそろ寝ようよーふわぁぁ」

「眠いー」

「ユウイチさん。わたし達は部屋に戻りましょう」


 どうやらあちらはおねむのようだ。

 いい時間だしな。

 俺も若干眠い。


「んじゃ寝るか。それじゃ部屋に戻るからまた明日な」

「おう! また明日!」

「ゆっくり休むといい」



------



 翌日、俺達は首都ノレストを発った。

 北へしばらく進むと真っ直ぐ北へ続く道と北東へ進む道へと分かれる。

 俺達は北東へと進路を取る。

 そして計二日程の道のりを馬車で進み、ウノースの町へ到着した。

 迷宮が出現してお祭りムードなのか入り口に『ようこそ迷宮の町ウノースへ』って垂れ幕がかかっている。


 そして入り口からでも見える大きな扉。

 建物よりも断然大きい。

 高さ十メートルくらいあるんじゃなかろうか。

 あれこそが迷宮の入り口らしい。


「うぉっ! でっけぇぇぇぇ!」


 コンラッドがすっげぇ興奮してる。

 他のメンツも声こそあげないものの、テンションが上がっているのが分かるくらいには態度に出ている。


 かくいう俺も流石に驚いた。

 バカでかい扉っていうのは何というか、威圧感があるな。

 あれ裏どうなってんだろう。


「ひとまず宿を取るぞ」


 一番早く冷静になったカーティスがそう提案する。


 他の冒険者も多いのだろう。

 片っ端から宿をあたったが、残念ながらほとんどが満室だった。

 というか宿の数自体が少なかった。


 唯一空いていたのが素泊まりの宿。

 厨房はあり、そこは宿泊客なら使っていいそうだ。

 安宿には珍しく風呂もついてるそうだ。


「ここしか空いてなかったねー」

「しょうがないねー」


 さして残念でもなさそうな獣人族の姉妹。

 コゼットの料理が食べられるよ、なんて言っているのが聞こえる。


「よっし、そんじゃ町の中を見て回るか!」

「そうだな。掘り出し物があるかもしれん」


 掘り出し物?

 今まではそんな事言ってなかったが、迷宮効果で商人でも集まってきているんだろうか。


「迷宮からの帰還者がもういるだろうしな」


 質問をするとそんな返事が返ってきた。


 どうやら最深部まで進まなくてもお宝はあるらしい。

 それを売りに出している冒険者が居るとの事。

 女性陣と荷物を置いて男三人で町へと出る。


 ちなみに女性陣は後で食料を買いに行くと言っていた。

 大通りまで行くと露天を開いている冒険者達の声が飛び交っていた。


「コーカサーベル! 一万ペルぽっきりだ!」

「こっちは天罰の杖だ! 中級以上を使う魔法使いなら買って損はないぜ!」

「炎の盾に水の盾! どっちも安くしとくわよー!」

「ねんがんの アイスソードをてにいれたぞ!」


 声が混じってよく分からないが、見ている冒険者も多い。

 やっぱ売れるんだろうな。

 しかしどうして武器や防具の名前が分かるんだろうか。


 カーティスに聞くと「知りたければドワーフが居るだろう」と返ってきた。

 詳しく聞くと、どうにも鑑定スキルっぽいものを持っているらしい。

 なんという便利種族。


 パーティーに一人は欲しい人材だね。

 と言うと「あいつら戦闘センスが絶望的だぞ」とコンラッド。

 どうやら種族的に戦闘には向いていないらしい。


 俺達が話している間にも取引が成立している所がちらほら。


「まいどありぃ」

「こっちも見てってくれよ-!」

「しょうがねぇな、特別に二千ペルまけてやるよ!」

「な なにをする きさまらー!」


 一通り見て回ったが、二人の気に入る物は無かったようだ。

 俺も何も買わなかった。

 説明がないとよく分からないし。


 宿に戻り、買い物から帰ってきた女性陣を交えて話す。

 迷宮に行くのは明日からという事になった。

 前の町から移動してきたばかりだしな。

 二日程度であまり疲れていないとはいえ万全を期すのは賛成だ。


 飯と風呂も全員済ませ、さて寝るかとそれぞれの部屋に戻る。


「ユウイチさん。明日は気をつけて下さいね」


 迷宮へ持って行く道具の最終確認をしているとコゼットが心配そうな目をしていた。


「分かってるよ、死にたくないし」

「約束ですよ? 無茶しちゃダメですからね?」

「約束するって。何なら指きりでもするか?」

「ゆびきり?」


 あ、通じなかった。

 このたまに通じないのはなんなんだよ……。


「おまじないみたいなもんだよ」

「へぇー。じゃあそれやりましょう!」

「んじゃこっちきて小指立てて」

「えっとえっと、こう、ですか?」

「そうそう、それじゃ――」


 何年振りか分からない指きりをする。


「――ゆーびきった。はい終わり」

「こ、怖い約束ですね。ユウイチさんの故郷ではこんな約束が飛び交ってるんですか?」


 針千本は誰も飲んだ事ないと思うよ、多分。


「比喩だよ比喩。そのくらいの覚悟をもって約束を守るって事さ」

「そ、そうですか……」


 まだ若干怯えているコゼット。

 今回はコゼットに何のリスクもないが、唄の内容が怖かったのだろう。


「さ、とっとと寝るぞ」


 コゼットを捕まえてベッドへと潜る。

 う、布団が冷たい。



 それでもコゼットの体温で次第に温かくなり、気付けば眠りに落ちていた。

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